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hiro_kitaumi
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FF14二次創作
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旅と夢の狭間にて
FF14の二次創作です。
暁月のフィナーレ(6.0)までのネタバレを含みます。
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瞼を上げると、周囲の様相は一変していた。
星は見えない。しかし辺りは暗くない。
黎から紺青、藍から瑠璃、次は紫。その次は
――
。いくつもの色彩が交ざり合い、星空だったものをキャンバスにして新しい空を描いている。それはまるで夜明けへと至る色彩の海のよう。
それを掴み取りたくなって、右手を上に伸ばした。日に焼けて少々節くれだった手が見える。この馴染みのある大きさは、間違いなく自分のものだ。確かめるように拳を強く握りしめた。
そしてアゼルは再び足を踏み出し、前に向かって歩き出した。
足取りは軽い。あんなに重かったのが嘘のようだ。彼を縫い留めていた昏いものは、いつの間にか消え失せていた。
変化は他にもあった。足元には道がある。道は光の粒子が寄り集まって出来ていて、遠く地平の彼方まで続いている。歩いた足跡からは光の粒が舞い上がり、背中の向こうで夜明けの色彩に溶けていった。
道はゆるやかに弧を描き、途中で何度か枝分かれしていた。その分岐点に立つ度に、右に左に、アゼルは心のままに進んで行く。
旅の道連れは茜色の小さな温もり。傍らでくるりひらりと、踊るように虹色の軌跡を描いている。
しばらく進むと、彼らの行く先に光球が現れた。ひとつ、またひとつ。色とりどりの光球が数を増やしていく。その中のひとつに向かって、アゼルは躊躇いがちに手を伸ばした。
指先が触れても、その輝きは失われない。
さあ、一緒に進もうか。そう言っているかのように、アゼルの周囲をひと回りして隣に並ぶ。他の光球達もその背を追った。
茜色とたくさんの色の光が、彼と共に歩いていく。
光の旅路は、アゼルに天の果ての道行きを思い出させていた。
独りだったあの時とは違う。なのにどうしてだろう、今また同じ言葉が胸の内に響いてくる。
お前は独りではないのだ、と。
お前の旅には意味があるのだ、と。
あの時、先ゆく星々の嘆きと絶望を前にして己を奮い立たせてくれた彼らの声は、この足に暗闇の先へ進む勇気を与えてくれた。この胸にあたたかな光を灯してくれた。だから、行かないでくれと言う代わりに前を向いた。
お前は独りではないのだ、と。
お前の旅には意味があるのだ、と。
今ふたたび、おだやかに隣に寄り添う彼らの声は、この足にどこまでも進んで行ける軽やかさを与えてくれる。この胸に焦がれるような熱情と、泣きたくなるような切なさと、交わした約束のあたたかさを教えてくれる。だから、どこまでも一緒に行こうと手を伸ばして前を向く。
歩いて、歩いて、永遠のように続くと思われた道の果てに、それは唐突に現れた。
青白い光の奔流。天にも昇るそれは光の柱のようにも見えた。あの流れに身を任せればこの世界から出られるのだろう。直感的に頭に浮かんだそのイメージは、すっと胸に落ちてきた。
そこを目指して一歩、また一歩。とうとう触れられそうな距離まで辿り着いた。人一人を簡単に飲み込んでしまいそうなほどの光が天に向かって立ち上っている。その流れていく先を仰ぎ見たが、どこに続いているのかは分からなかった。
意を決して、アゼルは光の柱に足を踏み入れようとした。
待って、後ろを見て!
くるくると、訴えるように隣の茜色が慌ただしく円を描いている。
アゼルは振り返った。
刃金の色も、麦穂の色も、アゼルを追ってきた光球たちが、その輝きを強くしていた。次第に光は膨張していって、一つに混ざりあった彼らは空間に像を結び何かを映し出していた。
それは、いつかどこかであったかもしれない光景
――
。
暁の盟主は微笑む。
薄金色の、まだ磨かれる前の小さな石をその手に持って。嬉しそうに未来のことを語る彼女の様子を、向かいの席のフ・ラミンが穏やかな目で見つめていた。二人の間には家族の時間が流れている。
月の花嫁は唄う。
朗らかな歌声はまるで愛を語るよう。彼女の光は辺りを照らす。隣の家の窓辺ではウリエンジェが本を読む手を止めて、心地よさそうに耳を傾けていた。
銀の騎士は笑う。
剣を振るう。眼前の木人相手に、幾度も幾度も剣を振るう。それは民と友を守るため。汗の玉が流れて雪を濡らした。誰かが雪を踏む音。その持ち主の姿を見つけ、彼はとっておきの笑顔を見せた。
氷の巫女は微睡む。
白い竜と、寄り添うように彼女は眠っている。穏やかな寝顔を何者からも守るように竜はじっと動かない。二つの頭上に数多の翼が影を落として、空の向こうへ飛んで行く。
小さな賢人は見守る。
視線の先ではリセが赤い衣をはためかせ見事な演舞を見せている。彼の目元が綻んだ。己の成すべきことを成せ。師から彼へ、彼から彼女へ。その思いは受け継がれていく。
戦士は往く。
黒き翼の相棒と、その背に乗って蒼穹の空を駆けていく。まだ見ぬものを見つけに行こう。それに続けと仲間たちも加わって、彼らの冒険が始まっていく。
大切な誰かの名を唇に乗せ、彼らは笑う顔を見せていた。
いつかどこかの光景が浮かんでは消え、また浮かび、重なり合って周囲をいっそう明るくしていく。眩しさに包まれて視界は白く染まっていった。
アゼルは思い出していた。
天の果てを往く道で受け取った声と想い。それは彼を独りにしなかった。
今はもう会うことも、その声を聞くこともできないが、彼らと過ごした時間は決して消えない。魂は星海を隔て遠く離れても、思い出は風となり光となって、いつだってこの胸の中に共に在る。
でも、叶うことならばもう一度。夢でもいい。もう一度、自分は彼らが笑っているところを見たかったのだ。
彼らの笑顔をもう一度この胸に抱きしめて、旅の先へと連れて行きたいのだ。
ああ、そうだった。これがあの場所で胸に思い描いたこと。これさえあればどこにだって行くことができる、大切なねがいごと。
アゼルは広げた腕で白い光を抱き止めた。光は彼の中へと溶けていく。自らをかき抱くようにして、アゼルは己の内に全てをしまって蓋をした。
一緒に行こう。
再び前へ。胸を張って足を踏み出す。
背中の向こうで、白い世界が淡い音をたてて弾けていった。
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