enoki181
2023-06-23 20:12:02
49319文字
Public リプレイ
 

【モノトーンミュージアム】とあるありふれた異形の話~秘めた心と水の国~【リプレイ】

シナリオクラフトのログ。紡ぎ手の中からボスが決まるテンプレート。
PL:成海さん、守部さん、柳さん、エノキ


▼シーンプレイヤー:ウィリアム・シャムロック&みづち

みづち:あの後、無事だった村のみんなと一緒におっちゃんのお墓を作ってお葬式をした。
……村のみんなは嫌な顔してたけど、ジュリエットのおねーさんの分も作って埋めてもらった。村の端っこの方になっちゃったけど。

おっちゃんがいなくなってから、近所のみんながアタシにいろいろやってくれてる。
今日は隣のおばばからおにぎりを貰ってた。

修行は朝からサボってる。
ていうかここ数日ずっと何もしてない。
でも、誰もアタシを怒らなかったし、げんこつもしてこなかった。

「おっちゃんおはよー! 新しいおうちの住み心地はどーよ?」

「おっちゃんはビビりだからな、一番神社に近いとこに作ってもらったんだぞ。しかも石は川辺に合ったピッカピカのおっきいやつ! アタシに感謝してほしいなー!」

話しかけても返事はない。
当たり前だけれど。

みづち:「ちょっと村の方ごちゃごちゃーってしてたけどさ、落ち着いてきたよ。白狐のおねーさんがだいぶ頑張ってたんだってー。これで当面静かになりそうって言ってた」

「おっちゃん良かったな、騒がしいのは頭痛くなるから勘弁してくれーっていっつも言ってたしな!」

返事はない。

……おっちゃん、アタシね。この村出ようと思うんだ。だから今日はお別れを言いに来たの」

みづち:「別に村のみんなが嫌いになったとかじゃないよ? まあ色々あったけど……。それでも皆優しいのは知ってるから。アタシが山から降りてきたとき、角生えてるしでへんてこなのに、村に置いといてくれて、今もこうして世話焼いてくれてるもん」

「アタシね、やっぱり何があってもこの村のみんなが大好きなんだ」

おにぎりをほうばりながらしゃべり続ける。
おばばってば、塩入れすぎてるんじゃないかな。このおにぎりしょっぱいよ。

みづち:「……でもね。この村にいるだけじゃ、多分アタシはしゅぎょーしてても強くなれないと思うの」

「白狐のおねーさんみたいに力が強いわけじゃないし、巫女さんのことしかできないのも違うなって思ってて」

おにぎりを食べ終わって立ち上がる。
おともだちのひぃちゃん、お気に入りのお菓子、大事に持ってた音便りと巫女さんのしゅぎょー道具。
これだけ持ってたら大丈夫だよね。

「だからそれまでお別れね! これからもっと強くなって、白狐のおねーさんとは違う形で村のみんなを守れるようになりたいから。こういうのなんていうんだっけ、可愛い子には旅をさせよ、で合ってる?」

……いつか絶対帰ってくるよ。その時は、おっちゃんのおうちもまたピッカピカにしてやるんだから!」

そう言って駆けていく。
行先はまだ分からないけど。

ウィル:ジュリアのお墓は結局故郷に作られることになった。
俺はというと、しばらくはカマルの家にお世話になっていた。
次の国に向かうための準備もする必要があるからね。

「それじゃあ、今度こそお別れだね」

村の隅にぽつりと置かれた墓石に向けてそう呟く。

きっと君は、自分のせいで俺が立ち止まり続けたら怒るだろうし。
俺も一箇所に留まり続ける性分でもないからね。

「君との日々はとても楽しかった。俺の初めての仲間で、友達だったよ」

「ありがとう」

「じゃあね」

背を向けて歩き出す。

村の外に出ようとしたとき、後ろから小さな足音が聞こえてきた。
おや、と思い振り向くと……

「うわ!?」

振り向きざまに何かにぶつかられて、そのまま尻餅をついた。

みづち:「あーーー間に合ってよかった! カマルに聞いたらもう出てったって聞いてめっちゃ慌てたんだからな!!!」

ウィル:「みづち? どうしたの?」
とりあえず上からどいてもらって立ち上がる。

みづち:「あ、ごめんね。つぶれ饅頭にしちゃうとこだった」

上から退くね。

「アタシ、強くなるための冒険の旅に出ることにしたんだ! おっちゃんにも言ってきたし! だから一緒に連れてって!」

ウィル:「え」
なんて?

みづち:「だーかーらー、アタシも旅に出るから一緒に行くって言ったの!」

「こういうのなんて言うんだっけ、旅はひきずれ?」

ウィル:「旅は道連れだね」
そう言ってからしばらく考える。

……みづち、前も言ったと思うけど」

ウィル:「紡ぎ手であるということは良いことばかりではない。むしろ多くの悲劇を見ることになる。それでもハッピーエンドを諦めてはいけない、走り続けなければならない存在だ」

「君が村の中で生きている分にはきっと悲劇との邂逅は少なくて済むだろう」

「だけど外に出るということは、これと向き合うということなんだ」

「今回みたいなことだって、きっとまた起こる」

「君はそれでも良いのかな?」

みづち:「も~分かってないな。さっき言ったじゃん、アタシは強くなるために冒険の旅に出るんだーって!」

「旅に出て、たくさんのハッピーエンドを掴んでこれるほど強くなったらさ、この村に戻ってきたときにおっちゃんもみんなも安心だと思うんだよねー」

「だからさ、これからよろしくな、ウィル!」

ウィル:「……まあ、人が一人多くいるだけでできることは増える」

「君がその覚悟を決めているのなら良いよ」
そう言って手を差しのばす。

「それなら次の物語の主人公は君だね」
これはこれで良いものが作れそうだ。

みづち:「ふふーん、任せといてよね!」

じゃあ手を取っていこうかな!

「あ、でもこないだはウィルが主人公っぽかった感じもするなー。カマルもだけど!」

ウィル:「カマルは分かるよ。でも俺は主人公ってガラじゃないんだけどなあ」
いつだって誰かの横にいる脇役で十分だ。
だって、語り部とはそういうものだろう?

ウィル:一度、村を振り返る。
二人でやってきて、一人で出ようとしたら、また一人が着いてくる。
なんとも数奇な巡り合わせだろう。

……また戻って来ることになりそうだ。その時は、迎えてくれると嬉しいな」

横にいる新しい友達には聞こえないように、そっと静かに呟いた。