佐藤
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P4 chapter1:奇々怪々

3月頃の話。DRRR!!からトリップ(全9話)


05.アカシックレコードの切れ端

昨晩意識を手放す前から握りしめたままの携帯を三琴はぼうっと見つめ続けていた。瞼は薄く開けど、頭は未だ眠りから覚めきらない。不意に枕に埋めた鼻から息を吸い込むと、数時間程度ではやはり消えない、新品の匂いがする。少し重い体をどうにか動かし仰向けになってみると、昨晩見たものと同じ天井が当然のように広がっている。

結局、夢じゃなかったのか。

三琴はぼんやりと頭の中で唱えた。夢じゃない。受け入れ難いがこれが現実。
異世界トリップなんて漫画や小説・アニメの中じゃ珍しくもなくやり尽くされたくらいの話だろうけれども、実際に経験するのは初めてだ。というかこんな経験何度もあってたまるか。悪態を吐いてから重い身体をのっそりと起こす。
ボタンを押して携帯の画面を確認すると、今日は3月23日の水曜日。現在時刻は11:36。
随分とよく眠ってしまったが、新生活が始まるまでにはまだ時間があった。

…………取り敢えず、」

片付けでもしながら考えよ。
誰にともなくそう言って、三琴は瞼をこすりつつ寝間着に手を掛けた。



(なんだ、これ)

手早く着替えを済ませ、昨日買っておいたロールパンをひとつ口に詰め込んだ後、荷解きをしていた三琴は自身の鞄の中に見知らぬものが入っていることに気づいた。
初め青緑色をした長方形の冊子と思ったのだが、取り出して開いてみれば幾重ものじゃばらが連なっている。
まるで経本のようだ。
開いたところの中身は文字通り白紙だったが、おそらく和紙の、独特の質感がその経本の存在を確かに知らしめている。

(何のアイテムだこんなのあったっけ)

ゲーム上で経本が出てくるところなんて、シナリオにも装備品にも消耗品にも覚えがない。もしかするとそれと言及がなかっただけで実際は経本の形をしているものがあるのかもしれないが、そもそもゲームが開始するのは4月から。現時点ではおそらく手に入れられるものは消耗品、それもきっとスーパーや自販機で売っているようなもののみなのではないだろうか。
とすれば、これは一体なんだろう。

ぱらぱらとページを丁寧に捲っていってみても相変わらず白紙で何もない。
紙と言えばあぶり出しが定番だが、万一これが重要なものでうっかり手を滑らせて燃えてしまったら困るし、本当に経本だったりしたらそれこそ罰当たりだし、流石にこれをあぶってしまう訳にもいかないだろう。
さてどうしたものかと頭を悩ませながら、引き続き手を動かしていったところ、間もなくちりめんで装飾された固い表紙に辿りつくという手前で、三琴はそこに墨色の一筋を見つけた。
読みやすい楷書体。
ぴたりと手を止めて注視する。

3月24日 川にて幸有り、注視せよ。

…………………………川?」


<了>