asa_nohi
2023-12-23 23:51:04
20037文字
Public カルジュナ
 

アドカレワーパレまとめ2

お借りしていたワードパレットを使ってのアドベントカレンダーかるじゅ纏めその2
12/7〜12/16までの10編


酔い姿が見るに堪えない、とは口が裂けても言えない
シュトレン「毎日/粉砂糖/薄く」
同棲している二人の話、お家でカクテル

シェイカー、マドラー、メジャーカップ。各種スピリッツ、リキュールに、フレーバードワイン。タンブラーにカクテルグラス。粉砂糖にグレナデンシロップ……などなど。
カルナの職が変わってからというもの、家のキャビネットやキッチンの戸棚の中に、新たな仲間が増えた。どれもこれもカルナの仕事道具で、せっかくこうした新たな仕事に就いたのだから、これまで毎日仕事、仕事、仕事と過ごし、散々心配をかけたアルジュナのためだけに腕を振るうのもよかろう。そんな気持ちで買いそろえてきたものだ。職場で使っているものと全く同じ銘柄……というわけにはいかないが、それなりに質のいいものは選んできた。モリアーティほど美味くはなくとも、それなりの味のものを出すことはできるだろう。
「それでは、最初は何にする」
食事を作ってくれているアルジュナの領分である、キッチンの作業スペースをカウンター代わりにして、リクエストを問う。すると、食卓の定位置に座したアルジュナは、困った顔で微笑った。
「何にする、と言われても……今作れるものもよく分からないし、前にも言ったが、バーで出されるようなものには疎いのだが……
「む。そうか……そうだったな」
アルジュナの答えにカルナは頷いた。そういえば、前に思いがけず職場に現れたときに、そんなことを言っていた。確かあのときは、「オススメを」と頼まれ、ビトウィーン・ザ・シーツを作って出したのだった……帰ってからの誘いも兼ねて。
「ならば、今回も作れるものを作って構わん、ということか?」
そんなことを思い出したカルナが尋ねると、アルジュナは「うん」と頷き、続けた。
「できれば、甘めのものだと嬉しい」
「承知した。おまえの好みそうなものを作ろう」



アルジュナの頬が薄く染まっている。口元こそやんわりと弧を描いているが、目元はとろりと眠たげに蕩けていて、いかにも酔いが回っています、と分かる様相だ。それがどこか、カルナだけが見ることを許された、真夜中の顔に似ている。
アルジュナの好む甘めの酒には、味の割に度数の高いものも多くある。所謂、レディキラーというものだ。家に揃え始めた材料は、元々アルジュナのためにと思って集め始めたゆえに、彼が好みそうなものが大半だ。そのため、作れるものも、そうした度数の高いものが多くなってしまう。だからこそ、ゆっくり飲むように、と最初にアドバイスしている。
けれども、杯が多くなれば、どうしたって酔ってしまう。それは避けようがない、仕方のないことではある。
が、とはいえ、だ。
酔ったことで酷く妖艶で、誰かに劣情を抱かせかねない姿になる、というのは想定外だ。
このような、人を誘うような姿のアルジュナを見るのは、カルナだけの特権だ。他の誰かの目に触れるなど有り得ない……
……アルジュナ。もしカクテルが飲みたくなったなら言うといい」
「うん?」
「外に出ずとも、ここでオレが作ろう」
……んふふ、わかった」
ここが自宅でよかった。
作業スペースに出しっぱなしにされたリキュールに視線を向け、こっそりそう安堵したカルナは、ぽつんとアルジュナに話しかけた。自身でも分かるほど、強い独占欲がだだ漏れた言葉だった。
普段ならばアルジュナはそれを敏感に察知して、なにか小言を言ってくるところだが、酔いの回った今は、ふわふわとした様子で、柔く微笑ったアルジュナは、素直にカルナの言葉に頷いた。多分、寝て起きたら忘れてしまっているに違いない。
けれども、約束は約束だ。与り知らぬところで、酔い姿を晒されてなるものか。
「ゆめゆめ忘れてくれるなよ」
カルナはそう一言吐き出すと、いつもの凛とした様子のない恋人に、熱の篭った視線を向けるのだった。