つの
16054文字
Public 過去ジャンル
 

DD習作(ほぼフラマト、ときどきマトフラ)



 家で自分の帰りを待つ人がいるというのも悪くないと近ごろマットは考えるようになっていた。例えそれが警察に追われるマフィアキラーで、マットの家にしばしば血と硝煙の匂いを持ち帰っては口論――十中八九は殴り合いの喧嘩に発展する――になったとしても、それ以外のときの彼はマットのヴィジランテ活動を唯一理解してくれる友人になり得たし、思いやり深い父親のような、あるいは庇護欲の強いボーイフレンドのような存在にもなりつつあった。つまるところ、フランクがマットの家に居候するようになってから、二人はセックスをする間柄になった。その関係に名前をつけることはまだお互いにしていなかったけれど。
 街が平和な夜にそれは起きる。マットが仕事から帰ったあとに二人で安いビールをあおって、副音声付のスポーツ番組なりB級アクション映画なりをカウチに並んで観て、それからマットがシャワーを浴びて出てくれば……しかしその夜は少し勝手が違った。
 生乾きの髪を荒れた指で梳かれ、「ちゃんと乾かさないと風邪を引くぞ」と呆れたような声でフランクが自分を叱るのに胸を高鳴らせながら、マットは小さな声で「今日は挿れないで欲しい」と言った。途端にフランクの声が固くなり「本当は嫌だったのか」などと尋ねるのでマットは慌てて首を振った。

「その、すごくよかった……けど」

 それだけならば言い慣れたセリフだったが、その続きを口にするにはさすがのマットも赤面せずにはいられなかった。

「君がなかなか抜いてくれないから……

 それはフランクに男性との性交経験がないからなのか、あるいは誰かとこんな関係になるのが久しぶりだからなのか、理由はわからなかった。しかし彼は一度マットの後孔を犯すと二時間は達することがない。
 前にしたときから腫れているみたいで、少し痛いんだ、と口にしたのが運の尽きだった。

*

「ふっ……♡ んんぅ……っ」

 最初は膝を立てて、フランクの顔前に尻を突き出すような姿勢を取っていたけれども、いつの間にかマットの全身からは力が抜けて、マットレスにうつ伏せの状態ですがり付いている。腹とベッドのあいだで押し潰されたマットのペニスは先走りを漏らし続けて既にシーツをべたべたに濡らしている。それでもフランクが後腔を執拗に犯す指は止まらない――犯すというよりは、検分するような手つきだ。どこか痛いところがあったら言えと命令して、それから彼はマットの粘膜に傷がないかを丁寧に指の腹で確かめている。

「ふら、ぁ、大丈夫だから、もっ……ァアッ!」

 二本の指を揃えた状態で腸壁をぐるりとかき混ぜられて、濡れた音が立つ。体内からじわりと、フランクが用意した潤滑剤とは別の、マット自身の体液が滲み出てくる。フランクの耳にも水音が届いたのか、まるで楽しむように、指をちゅこちゅこと抜き差しされた。フランクの指の節さえわかるぐらいに、きゅうきゅうとマットの粘膜がまとわりつく。

「も、ぬ、ぬい…………?」
「痛いか?」
「ちが…………♡」

 今度はトントンと前立腺を指の腹で叩くようにされる。肛門のきつい環がフランクの根元まで差し込まれた指の周りでヒクヒクと震える。

「足りな……指だけじゃ、やだぁ……♡」

 コクリとフランクの喉仏が嚥下する音がした。あぁ、と興奮に掠れた短い応答があって、指をずるりと引き抜かれる――ぬぽん、と音がして、マットはその衝撃とこれからへの期待に熱い溜息を吐いた。しかし、本当に欲しいものは与えられなかった。フランクはさらに一本指を増やして、ふたたびマットの直腸に三本の指を押し込んだ。

「あっ、ぁ〜〜〜♡♡」

 同時に尻臀を掴まれて、ぐいと狭間を露わにされる。見られているという羞恥と、彼の目にはどんなふうに自分が写っているのだろうという好奇心が同時に湧いてくる。

「本当に、痛むところはないんだな?」

 マットは、ん、ん、とほとんど喘ぐように、しかし懸命に頷いて見せた。するとフランクはふっと吐息を漏らして微笑んだようだった。焦燥感と怒りと悔しさの綯い交ぜになった感情がマットの瞳を潤ませる。

「見れば、わかるくせに……
「心配したのは嘘じゃない、が……

 ぐちゃぐちゃと三本の指で内壁を掻くように混ぜられて、マットはぱたぱたと首を振った。

「もうぐしょぐしょだな」

 指がふやけちまった、とフランクが揶揄する。傷などついていないとわかったのに、どうしてこんなことをするのだろう。マットは普段の10分の1くらいの速度でしか回らない頭で考えた。

「も、……ぁっ、いれて……くれ……フランクの……

 結局答えは出なかったが、欲望のままに零したその言葉が正答だったらしい。は、とフランクが興奮を隠すように笑った。

「俺はなかなか抜かないらしいが、いいのか?」
「ん……っ、あ♡ もう、こんなに濡れてるから……へいき」

 フランクの指を体内にくわえこんだまま、震える自身の手を背後に回して、尻肉を掴んで大きく開いた。くぱぁ、と熱を孕んで濡れた粘膜が重たく開く。フランクにどんなふうに見えているのかはわからないが、緩んで口を開いたアナルと彼の指の狭間から腸液と潤滑剤の混ざって泡立ったものがとろりと流れ出ると、ドッと相手の心拍が早まったのがわかった。

「奥まで、いっぱい、ちょうだい?」

 その言葉は自分でも舌足らずに思えたが、フランクの興奮は萎えることなく、マットの願いはようやく叶えられた。