【失笑の歌と蒼い月】設定

一ページ目必読
※Ibパロ



【ソウゲツの日記】




(八年ほど前の日付)
・ヒロの紹介で、バーテンダーとしての店の土地を整えられた。アイツには世話になりっぱなしだ。今度、美味い料理を馳走しよう。

(以下、他愛のない話が複数の頁に続いている)

(七年ほど前の日付)
・今日の仕事は上々。客の対応にも随分と馴染みが生まれ、バーテンダーとしての道に乗った感覚がある。
・明日はカンジと久しぶりに会える。楽しみだ。

(空白の日付欄)
・どうして

(七年ほど前の日付)
・カンジが死んだ。車と衝突して、即死だった。
・運転手も死んだらしいが、どうでもいい。
・一番そばにいたのに、守れなかった。目の前で死んだ。

(空白の日付欄)
・久しぶりに、ヒロと会った。隣には男がいた。
・彼は中学までの幼馴染、アサヒだ。親の都合で引っ越したと聞いたが、なぜこんな時に。

(空白の日付欄)
・アサヒの言う魔術とやらを、最初は信じていなかった。しかし、実物を目の前にしてはぐうの音も出ない。
・カンジを取り戻せるなら、オレはなんだってする。

(空白の日付欄)
・一年たって、ようやく《美術館》を作り出せた。
・階層は多くない。最上階は雑多の部屋として置いておく。

(空白の日付欄)
・〈作品〉たちは、決して従順ではないが聡明だ。アサヒの協力で覗いた世界にいた人物たちをモデルにしているが、外には公表せずといいだろう。どうせ一般には知り得ないことだ。
・アサヒはここに研究室が欲しいらしい。二階に個室を作った。出るつもりはないらしいが、一応裏口を作っておく。

(空白の日付欄)
・ついにカンジを作り出せた。作品としての名前は当然、〈最愛〉だ。大切に大切に仕舞っておく。

(長い空白の頁が続いている)

(五年ほど前の日付)
・そうだよな。おまえはヒーローだから、そのカンジの願いも叶えようとするよな。
・だが、絶対に逃さない。絶対にまたここへ来る。オレはそれまで、カンジを諦めない。カンジを忘れない。オマエはオレの元へ、必ず戻ってくる。
・それまで残された〈最愛〉と〈英雄譚〉が壊れないよう、ヒロを引き寄せるためにも置いておく。

(今日の日付)
・ようやく来た! これでまたカンジと共にいられる! はやく迎えに行かないと!
・ヒロの説得には失敗した。心苦しいが、作品として調整する。存在を〈英雄譚〉に閉じ込め、器は作品の外観として利用する。こうするしかない。
・アサヒは嫌悪を示したが、抵抗はしないでくれる。とてもありがたい。

(白紙の日付)
・どうしてカンジが最上階にいるんだ? そんなにもここが嫌なのか? お前が例え嫌がったとしても、ここならお前は幸せに暮らせる。オレがやらなければ。オレが何とかしてやらなければ。絶対に外には出させない。
・カンジを留めるために、〈最愛〉をより深くへ仕舞った。存在維持のためのバラを渡すよう適当な作品に命令し、下へ行くように誘導させた。道中で危険はあるだろうが、彼ならなんとかするはずだ。
・いつかこの日記を読み返して、大きく笑えることを祈っている。