akinoshiroihana
2026-04-06 18:23:28
13071文字
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名刺置き場16

ゲッター



新ゲ事後
作中、竜馬の「才能」をジミー大西的なアレと考えるなどする段階はあるかもしれない



穴があったら突っ込むのが男ってもんだろ

そんな下衆な好き者のような口をきく男だが、女を大事にしたことが無さそうな奴のような物言いをするのは、女を深く欲したこと以前に、女に心を救われた事が根本から無いに近く乏しいためではなかろうかと隼人は思う、シーツの上、突っ伏したままで。
つまり、こいつの中には長く「母」さえいなかったのだろう、そういうタイプの雄だと隼人は思う、そして、手放して久しい十字架を無意識にベッドサイドに探し彷徨っていた手が取られて「どしたよ」と額が寄せられるのを感じたので
―――穴があったらいいってもんでもなかったろ」
俺も竿役のお鉢が回って来ちまった事はあるからな、御愁傷さまだ、そう言って背を向け身を丸めて寝る意志を彼は示した。だというのに「待て待て待て」と笑いを帯びた声と肩に食い入る握力と肉付きの良い掌の熱が隼人の体をひっくり返した、蛍光灯の白々とした光の下に。そして見下ろし、
「わるかなかったぜ?ぜんっぜん」
なぜか得意げに胸を反らし竜馬は言った。ありがとよ、お前コッチの才能あるよ、とも。
既に眉根が寄せられていた隼人の眉間がもう一段寄せられる。
ああ、これは「すっきりした」がゆえのこういう顔か、便所をきれいに使えた自信のある奴の顔でもあろう!
はあ、と額に手を遣る隼人に「おう、なんでいなんでい」など言いつつくっついて来てその体勢で寝ようとするから、隼人はその気だるい脚では蹴り飛ばせないものとわかりつつ「嫌だ」との表明はする、そしてこの男を振り切れそうな言葉を探した。

「穴があったら突っ込むと言っただろう、似たような話を聞いたことがあったと思い返していた」
「おうっ」
相手は寝物語を、ピロートークの発生を喜び勇んだ風であると隼人は不吉なものを感じる。

今でもテレビに出ている大物関西芸人がな、ちょっと「足りない」系芸人いじりをしていた事があった。
へえ、今だったら放送できねえかな
『ジ〇は昔、ハサミぃコンセントに突っ込んで感電したことがありますのや』
あ?バカじゃねえのなんでそん
『ハサミの先日2つでっしゃろ?コンセントの穴2つでっしゃろ?ジ〇ーでっしゃろ?
 そら突っ込みよるわけですわ!』
―――お前の口上と同じだと思って事のあいだじゅう
やめろよ一瞬そいつの気持ちもちょっとだけわかったけど一緒にすんなよってかコラそういう時は俺の事考えてやがれ
お前達は、似ている―――
いい話みたいにイイ声で言い捨てて寝るなコラ!

血色の悪い隼人の長い指に素早くリモコンで室内灯を消されて部屋が暗闇になる前の十秒間程度か、緑の非常灯の下でなおも食い下がる竜馬の図に隼人は深々とため息をつく、その「心底嫌だ」との反応が普段の無視や切り離しの態度よりはよほどまともな「自分」への反応であるから、楽しく嬉しく大好きに(?)なりうるものだと思い至れないのは、隼人が疲れているからか眠いからかそれとも万が一もしかしたら

「そのお前とよくにたその芸人はな、その後その奇矯にも通じる画才を見出されて国外でも成功したらしい
 お前がゲッター相手にいい数値を叩き出すようになったのも、そのジ〇ー大西みたいな才能が目覚め始めたのかもしれん」
「おう!」
「だがな」
「うん」
「そいつオンナの家に泊まった時に寝小便じゃなくウン〇もらしたんだと」
「」
「そんな地獄を呼ぶ奴に付き合うのはまっぴらだ、俺と弁慶はたかだかブレーキなんだろう?俺達のゲッターには3つの心なんていらないんだろう?じゃあおやすみ」
「」


「っきしょ、オンナも枕も一番具合がいい時期はほんのちょっとだって言うんだよ」
逃がすかよもったいねえ、などと。狭い部屋の中、薄闇の底で腰にがっちりと回された強い腕にほだされるには、あまりにあんまりな即物的な愛着―――神隼人の人格小なり小なり小なりその尻への好意に、隼人は表情には出さないまま悲憤慷慨し、絶望し、かすかに「ヒヒッ」と引き笑いを漏らした。聞いてる聞いてるとヘラヘラとなえつつ何もかも素通りさせる男、いやこの世界

だがそれは先の芸人がMCを務めた古い番組名的に、もしくはシェイクスピア的に表現、処理されてしまうならば、こうへらりと呼ばれるだろう


恋のから騒ぎ

それを「アイしている」と「アイされている」と人は言う。