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akinoshiroihana
2026-04-06 18:23:28
13071文字
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名刺置き場16
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隼人が煙草吸うか問題
カムイのお守りしてたら吸わんというか吸えんのでは?説です
●
「あいつらが喫うとは意外だったな」
「コミュニケーションツールとして有効らしいですよ、外の世界では」
そういえば彼が生まれるよりもう少しだけ前、第二次大戦後十年も経たない日本の映画小説劇画の日常描写には、大人顔負けの慣れた仕草でもって、よれてちびた紙巻きを旨そうにくゆらし、笑顔で紫煙を吐き出す薄汚れた少年少女がいくらもいた。今はあの時ほどではないにしても、世界はかなり薄暗く荒れている。国家間の緊張よりも十数年前、太平洋に流星が降って来たそれ以降。
「多少の煙草や酒はテント民やホームレス化した連中相手に事を荒立てずに済ます七つ道具だとか」
あとの五つが何であるか気にならないではないが、わざわざ藪をつつきに行ってあの二人、拓馬と獏のこれまでの素行に首肯しかねたり勝手に気分を悪くするのもバカな話だ、どこでどうやって生きて来たのか、そんな簡単な事を聞く取っ掛かりに過ぎないとしても。
海底の国から来た皇子は、そんな風に彼に日々言いに来る
「おまえはそういうやんちゃをしないな」
「貴方が喫い出したらお付き合いしてたかもしれませんが」
カムイは彼相手にだけそんな距離感で物を言う
「純血種達ほどではありませんが、
俺達の口は物を咀嚼する以外の事には猿猴人類より繊細ですから」
帝国人の口は爬虫類由来ゆえに、空中でひらめかすだけで匂いと味を察知できる。
だからカムイはほんの幼いころからずっと「神隼人」の「味」を記憶している、その面貌のように真っ白く無邪気な心根であった頃から既に。その舌は幸か不幸か二又に裂けてはいないが、もしそうであれば隼人がいま通路突き当りのどちらに曲がって消えたかさえも、目を瞑ったまま裂けた舌を口の外まで出して揺らめかせれば、その両端が受け取る情報の差で、より正確に読み取れるだろうとカムイは言う、少し残念そうに。
「俺達の口はむしろもっと目であり耳であり受容する重要な器官ですから、あんなものを咥えるなんていうのは、貴方たちには目と耳に燃えさしを突っ込むようなもの
―――
いや」
地上人類との混血の結果、一部爬虫類のような黒や空色ではないカムイの舌は、人のそれにしてはとても血の気の薄い、淡すぎて冷ややかなようなピンクをしている、女性ホルモンが足りない乳首か何かのように。それで口内をちらりと一舐めし考える風にした後で言葉をつづけた
「
―――
下の口に突っ込ませるような気狂い沙汰でしょう。献身がすぎる妥協をくれる者のする事ですよそら恐ろしい」
ああ、だから貴方が喫っていればその絵はきっと悪くないんだ
そんなことをカムイはにこりともせず言い、そこには存在しない煙草を口元から離すゼスチャーとともに、隼人にふっと息を吹きかけた
酷い語彙を仕入れて来るなとだけ隼人は言って人気のない通路を行く。そうであるから言外の、この後の誘いかお強請りについてはそのままで。
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