akinoshiroihana
2026-02-09 22:59:42
9407文字
Public
 

名刺置き場15

ゲッター





「なんで俺達で雛祭り」
「うむ、メカザウルス倒したばかりじゃからの、すぐ次の出撃もないじゃろと」

眼下はまだ決闘の場であった山の裾野が炎々と燃えている。延焼を防ぐべく周辺の山林をトマホークで切り払った後は公共機関に任せて帰って来たところだった。
ゲットマシンのハッチが開いた先にいたのは、普段は自分の地下研究室から出てこない敷島博士その人で
「部屋で作っとった白酒が酒造法違反じゃから捨てろと早乙女がの」
なんじゃ象も十秒で骨まで溶かせる薬にはお目こぼしくれるのにあいつめ、武蔵が来た辺りからちょっとキャラデザが丸くなってきたと思ったらつまらん良識じゃあ
「アルコールが入った状態で博士が開発なさるレベルの危険物には触ってほしくないんでしょう
 どちらか捨てろと言われたら酒の方でしょう?」
子供の無責任な同調ではなく、至極もっともな指摘をする隼人に老人はむう、と面白くなさそうに唸ってから、まあそういうわけじゃから捨てる前に雛祭りでお前らガキどももちょいと飲めという。

「だからなんで俺達で雛祭り」
「知らんのか、白酒は蛇退治の酒でもあるんじゃ」
縁起物よ。じゃというのにああ早乙女め
そう繰り返す老人はそういえば竜馬の特攻をも酒と共に屋上で見ようとしていたのだったか。
炎の熱気と煙と先程までの地獄の余韻を眼下に、じゃあ舐めるだけねと竜馬が猪口を手にすれば、桃の節句にその名の花は到底間に合わず、浅間山の麓にせめて咲いた梅の花が熱気の中にも不思議なほどよく香った
炎の中燃える花の香りかとそれを胸いっぱい吸い込みつつ盃で口を湿せば、傍らで同じく濡れた唇を、隼人が僅かに出した舌で舐める仕草が目に入る。ものみな眼下に燃える中、花の香りの中で盗み見た白い横顔とそこだけ紅く照り映える唇に舌。それは初めて口にした白酒と同じで竜馬にとっては

思いがけない甘やかな思い出