akinoshiroihana
2026-02-09 22:59:42
9407文字
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名刺置き場15

ゲッター



遅刻2026.2.22
名刺文字数オーバーついでに夢落ち予定じゃなかったのに夢落ち
主に號隼?

Circe

おかえり、との声に、おうそう来たかと號は思う。
ネーサー基地への迷い犬捨て猫は、保護中つなぎの名前としてクルーや直属上司の名を借りる、なんでも早乙女研究所の頃からのならいらしい。腹だけまっ白な黒猫の「はやと」は避妊手術を受けて帰ってきて、エリザベスカラーを嵌められている筈だが

「どうした」

一人掛けのソファに高々と足を組んだスーツの上司が、何故だか大英帝国エリザベスの方のあのゴージャスな襟を生やし、しかしその点以外は全くの通常営業で書類を繰っている。
「あーいや、どうしちまったのかな~~~と、」
神さんか、俺が。
「お前は先の戦闘で前歯をやられて歯茎に麻酔を多めに打たれたところだろう、まだ頭がフワフワするなら安静にしておけ」
「あ、そうでしたっけ俺、あそうだそうだ」
闇プロレスでも覚えのないくらい血の臭いと味でベタ塗りになった記憶が数時間前にあるのはどうやらそれらしいと思いつつ、號は向かいの客用ソファに腰を下ろす。さあこいつは俺がチョイおかしいにしても、これは神さんかなネコチャンかな、それともこれがまるっと夢で、俺は鎮痛剤と化膿止めを飲んでスヤスヤしてる真っ最中か。
「えーとあー、アンタも病院行ってきたの」
「ああ、傷を舐めるな、とこの姿だよ」
と神隼人が心持ち長めで切ってある半透明の爪でぴんとその襟をはじいたから
おおお眉目うるわしい上司に見えてはいるがこれはネコチャンであるか、お前の大事なとこが無くなった帰りかよ、と號は震える。あの襟が無かったらこの上司の姿に見えている「コレ」は一体どこを舐めてどうしようとするのだろう人の面前で。そして去勢手術後の上司というのもこれまたパワーワードが過ぎる、ああそういえばあのゴージャス襟の女王さまは「処女王」でもあったんだったか。

『指輪物語』のエルフの女王様俳優が主演する同名映画で見た感じ、過去には実のところいろいろありつつ、最後に誰をも選ばず一人っきり、肖像画に残ってるような真っ白い姿になって『今こそ私は無垢』って言うんだ、などと彼は思い返す。いやまあ、この人もいろいろ過去にありそうだけど今現在自分ともあるけど、将来的に一人ぼっちのまっ白不動の存在になるなんてことはハハハ似合わねえ似合いそうだけどヤだなそれは、とも思っていると
「なるかもしれんぞ、『私』なら」
「へっ」
神隼人の姿の猫がこちらを見ていてそして言った。そして書類をテーブルの上に軽く投げ、テーブルの下に手を遣り何やらさぐっている。
「こらまたお前は、竜馬」
忘れた頃に通ってくるあの男のような、太った茶猫が抱き上げられて、白く長い指の間でじたばたと藻掻くのを差し出されたから、號はそのひんやりした手からよく動く重量を受け取った。
「他人の自由を尊び合っているから勝手に死なれて一人にされる
それがいやならぜんぶずっと飼って愛していればいいんだ。奴隷になって奴隷にするんだよ」
みんな、全部。もう片方の手で処女王の襟をびりびりと引き剝がしつつ「隼人」は言う。

愛すると約束したら、それと引き換えに請いさえすれば、『私』がそうならない道もあったのに、一度たりと選ぼうとしないから、だからここでだけはお前たちを撫でて、ずっとそばにいてくれる愛する獣に落とすよ

ああなぁんだ、やっぱりこれは夢か、次の瞬間のどこからでも暗転して終われる無責任な夢かいいよ、だけど誰が見ているんだい神さん?

尋ねたつもりの號の口の中はまだ血腥かったけど舌はもうざらざらで透明な棘がいっぱい生えていて、「ニャア」という声しか出てこなかった。