はしびろこう
2026-01-19 12:36:23
22914文字
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全裸特異点

それいけ!全裸特異点

 
 
 その名は

 仕方ない、仕方ない。
 理想のためなら仕方ない。
 たとえ死んでも仕方ない。
 得るためならば仕方ない。
 失わないならば仕方ない。
 仕方ない、仕方ない。
 ——ほんとうに、そうだろうか。

 ♦︎

 古代インド。
 前257年——アショカ王が普遍的な仏法ダルマに基づく政治を行うことを宣言する前年に、特異点ができた。微少特異点ではあるが、時代が古いのもあり放置もできない。
 そう言うことで、今回適性を持ったのが、カルナ、アルジュナ、ビーマ、アシュヴァッターマン、ドゥリーヨダナである。
 インドだが、男サーヴァントのみ。
 女性サーヴァントに適性のあるものがいなかったが、インドの女性サーヴァントは半神ところがモロ神であることが多々あるため今回シヴァが適さないと判じた理由でもあるのではないか——そんな憶測が飛ぶ。
「マシュも今回はお留守番なんだね」
「申し訳ありません、不詳マシュ・キリエライト。先輩が無事に帰って来れるようにサポートします」
 鈴なりの声の、可愛い後輩が頑張ってくれるならばちょっと寂しいけど仕方がない。
「よろしく」
 古代インドだと現代よりよほど女性の地位は低いから危険を伴うのかもしれないし——ならば、自分は男だけど男らしく、気を付けていかなければ。
 カルデア戦闘服に着替えて、ミーティングを終わらせレイシフト。
 街がどうなっているのかもわからない故に——こちらは山の中に降りることになった。
 ——ふっ。時空の歪みのような灯りに飲み込まれ、ついた先は森の中。日本生まれの自分からすれば、森というには鬱蒼とした雰囲気はない。
「全員いる?」
「おうよ」
 見まわした先のビーマが快活な声で返答する。少し向こうでドゥリーヨダナが服が木に引っかかって取れないと言っているのをカルナとアシュヴァッターマンが手伝っている。
 ブツ、通信が繋がった音がして、ダヴィンチちゃんが手を振る。
 
『お疲れさま藤丸くん、問題なくつけたようだね。——そこはインド北部、パータリプトラの近くの森だよ。アショカ王が覇王と呼ばれた時代が終わり、聖王となる年の前年だ。おそらくそこで異変が起きている。街で情報収集を頼めるかい?』
「なら、そのパータリプトラに行ってみよう」
 ピピッ。画面の向こうで機械音がなる。マシュの声が危険を知らせる。
——先輩、敵性反応、カリの群れが来ます!』
「!!戦闘体制!」
 視界の隅、川の中から深紫のカリがゾロゾロと上がってきた。ビーマの反応が早く、視線を向けたときにはもはや接触寸前。
 ぶわ——槍に目に見えるほどの風を纏わせ、ギャアアアア!と鳴くカリの鼻っ柱に一撃————ガキィッ!!!
「マスター!」
 アルジュナが抱えるように腕を引けば、先ほどまで自分がいたところをビーマの巨体が吹っ飛んで——大木に叩きつけられていた。
「ぐっ⁈」
——えっ」
 半神、ビーマが——純然な力比べで負けるような個体が野生のカリ?振り返れば、ドゥリーヨダナが棍棒を構えて踊り出ながら舌を出す。
「ぶわ——か!どうせ相性確認せず突っ込んだのだろう!その点わし様ならばどの相手でも——
 ガンッ!!!
 高い音がして、ドゥリーヨダナがこちらを見ずにじりじりとこちらを庇うように手を広げる。
 バーサーカーのドゥリーヨダナが、弾き返された?!
……マスター、退却だ」
……
「攻撃が——通らん」

 退却が決まったところをアシュヴァッターマンが自分を抱えて他のみんなも場所から離脱するべく走り出したが、カリの群れが早い。
 サーヴァントと比較しても遜色ないスピードだった。
「ダヴィンチちゃん!なにかわかった?!」
『ごめん藤丸くん、もう少し——ええ、なんだこれ?!』
「なに?! カリのスピードも何もかもおかしくない?!」
『これ、なに』
 俺が聞きたいんだけどダヴィンチちゃん!?
——先輩、サーヴァント反応!きます!』
 ——ガサッ
 
 樹上から飛び出してきたのは見知った英霊だった。
「テメェら何してる!!!」

 あの背中を知っている。
 力強く、自分の信じた道を征く、その言葉と力に、今まで何度世話になったかわからない。
 ——遥か彼方の叙述詩にて吟じられた——名高き王、ベオウルフ‼︎
 
 樹上から飛び降り、そのまま先頭にいたカリの頭を潰し、地面を叩き割って他のカリも弾き飛ばした。
 俺の知る、サーヴァントだった。
 
「服を脱げ!」

 仁王立ちで拳を握り、股間に見事なイチモツが揺れる。
 
 ——全裸なこと以外は。