いを
2025-11-02 17:45:08
6899文字
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くらくら
それぞれフォロワーさんのお子さんお借りしています。


スブラキとジャジキ(鷹虎さん(隆弘さん)とマルタ)

 母の故郷であるギリシャは、乾いた土地と遺跡が混ざり合って、土の匂いがよく匂った。その空気の中でスブラキと、ジャジキに添えられた硬いパンを食べた。東々のものとは似ても似つかない、食べたことがない味なのにどこかなつかしいと感じ得るにじゅうぶんだった。母は「Πολύ καλάポリカラ!」といいながら、にっこりとほほえんでいた。
 ――遠い昔のことだ。
「スブラキは肉……豚とか鶏……の、串焼き。ジャジキはヨーグルトにキュウリやニンニク、オリーブオイルで作ったソース。パンにつけて食べる」
「へえ。ていうか先生って、どこの人?」
「母親がギリシャ人。で、父親がここの人間」
 ジャジキの白いソースをパンでかき回しながらつぶやく。ひょいと口に運ぶと、独特の匂いとパンの甘さを感じる。が、昔食べたものとはやはり違う。地中海料理屋といっても、範囲が広いのだ。
「そうだったんだ。東々って、色んな人いるもんね。灰届区なんてもう全然……。っぽくないし」
「ぽくない……? ああ。まあ、そうだな。異国情緒溢れすぎてる」
 治安が悪いから。と、指先でつまんだスブラキの串をくるりと回す。
「焼き鳥っぽいね」
「焼き鳥みたいなもんだからな。ジャジキにつけても美味い」
「先生、食べるの好きなの?」
「ふつう」
 食べなきゃ死ぬから、食べている。そういい、皿の上にならんだ串をながめた。
 食べることは好きでも嫌いでもない。胃が受け付けない日も、たまにある。
「迅瀬、お前は? 俺みたいに食べなきゃ死ぬから、食べるだけか。それとも食べたいから、食べるのか」
 〝おいしい〟という感覚も、生きるために脳が錯覚しているにすぎない。その証拠に、みなそれぞれ味の好みが違う。
 生きているから違うのだ。
 生き方も。
 そして、死に方も。