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mishiadd
2025-09-27 01:47:40
41943文字
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幽世より愛を込めて
【本編/現パロ/FGO軸】「ところ構わず気に入った場所に社を建てて神域展開するタイプの男」ヤマトタケルと神隠しの標的にされる宮本伊織の八百万煎じシチュエーション3連発。だってあたしはまだ煎じていないのでェ…【剣伊】※急遽ハロウィン合わせ
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――
儀は、佳境を迎える。
最近ではめっきり皮肉や意地悪を口にすることもなくなったセイバーが、とびきり機嫌のよさそうに伊織の後をついて回っている。たまたま出掛けていた品川で桜を眺めながら屋台巡りなどをし、大通りを散策している。
「イオリ、前に食べたあそこの団子が美味かったのだ。一緒に食べよう。私が買ってくるから待っていろ」
「ん? おまえ、銭は」
「この間きみが用事で出ている隙にスケノシンのところで小遣い稼ぎをしたのだ! というわけで、ここは私の奢りだぞ! 謹んで受けよ!」
「いつの間にそんなことを」
伊織が驚いているうちにさっさとセイバーが駆け出して行ってしまう。団子を二本持って戻ってきて、一本を伊織に手渡してくる。既に団子に噛りついているセイバーに、「んんん」ともごもご促されたので、伊織も串に刺さった一つ目を齧り取る。もご、と噛む。団子自体の風味が強く、餡子は程よく甘かった。
「うん。味がいいな」
「であろう、であろう。フフフ、素直に『美味い』と言ってもよいのだぞ?」
「美味い」
「フフフ! 美味いかイオリ、そうかそうか! 『おまえのおかげでこんなに美味いものが食べられて、おまえのようなサーヴァントのいる俺は果報者だ』と言ってもよいのだぞ?」
「おまえのおかげでこんなに美味いものが食べられて
――
ん、長いな。残りはなんだったか」
「フッフフフ、よいよい、本当に言うやつがあるか」
「たまにきみは私から見ても心配になるよなあ」などと言いながら、セイバーが後頭部で両手を組んで伊織の先を歩く。それから、はたと足を止めた。振り返る。
――
表情ががらりと変わっていた。ひどく焦燥感のある顔で、「イオリ」と名を呼んだ。
「イオリ、ようやく会えた。『こちら』の私が
――
もうよい。
……
イオリ、私と共に行こう。まさかこんなに時が経ってしまうとは思わなかった。もう
――
もう、
時間がない
、イオリ。まさか、私が弾かれている間にこんなにも儀が進んでしまうだなんて」
「セイバー。言った筈だ、俺はおまえの頼みは聞けない。
――
安心しろ、俺と『こちら』のおまえのふたりで、盈月の器はきっと破壊してみせる。あと少しなんだ。江戸の平穏はきっと守るよ」
「
……
イオリ、ああ、イオリ。
……
その言葉は本当に嬉しい、でも」
戸惑うように言葉を重ねたセイバーはしかし、やがて意を決したように伊織の手首を掴んだ。咄嗟に伊織がその手を引こうとしたがびくともしない。力の差を思い知らされた伊織が目を瞠る。
「ごめん」とセイバーが小さな声で言った。
――
それから、不意にもう片方の腕で伊織の腰を引き寄せる。
体勢を崩しそうになる身体を支えられたまま、伊織が瞬きをする。目を開けると、そこは既に社の本殿の中であるようだった。見覚えのない座敷の畳の上に、セイバー共々倒れ込む。セイバーの身体を下敷きにしていることに気付いた伊織が上半身を起こす。周囲を見渡せば、一方の壁にひとつだけ、大きな円い飾り窓がついている。外には雪景色が広がっていた。
「セイバー。
……
セイバー。俺を
――
無理に連れてきたのか? 同意もなく」
「もう時間がないんだ、イオリ。悠長なことは言っていられなくなった。
……
イオリ、この社の様子は見たろう? ここでの日々をきっときみは気に入る。
……
またきみを帰すよ。いつかきっと帰すから。だから、今はここにいてくれないか。私と共に」
「いつだ? いつ帰してくれる」
「イオリ
……
」
「嘘だ。おまえは俺を帰す気などない。
――
セイバー、俺にはわからんのだ。なぜ、儀の進行を妨げようとする。おまえも賛同してくれた筈だ、器は壊すと。それとも、
この
おまえは違うのか」
「そうでは
――
そうではないのだ、イオリ。
……
私がきみに言えば、きみは
――
」
「セイバー、さっさと俺を帰してくれ。
……
こうしている間にも、俺のいない間に儀が進んで
――
俺が手をこまねいている間に、
一体どんな猛者や強者が儀に現れているかも
――
」
「
――
イオリ」
狼狽えるばかりだったセイバーの声音が、硬質になる。ん、とセイバーを振り返った伊織は、自分がたった今零してしまった言葉の意味を認識しきれていないようだった。
セイバーの大きな双眸が、火球のように燃えている。熱した鋼鉄が赤く光るように、伊織を射貫いている。
「イオリ。きみは、私と共にここで暮らすのだ。
――
きみをどこにも帰さない。どこにもやらない。どこにも出さない。
……
ずっとここで、私と共に永劫の時を過ごすのだ」
「セイバー。
……
セイバー。これは、なにかの罰なのか?」
ぴくり、とセイバーの眉が痙攣する。平坦な口調で、表情に乏しい顔で、純粋に、ただ思ったままの疑問を伊織が口にした。
「これは、俺に対するおまえからの罰なのか?
――
俺は、これからなにか罪を犯すのか、セイバー」
「
……
イオリ」
フ、とセイバーが額に手を当てる。それから、ゆるゆると頭を左右に振った。
「これは『罰』ではないよ。
――
ただの、私の我儘なのだ。善も悪も、正義も罪もない。ただの
――
私個人の、我儘」
「おまえの『我儘』。
……
俺と、暮らすことが? 『未来永劫』、を?」
「うん」
伊織が唖然とする。理解しがたいものを見るように、わずかに切れ長の目を見開いてセイバーを見る。
――
その視線を、セイバーが真正面から受け止める。真っすぐに、ただ見つめ返している。
――
やがて、「ダメだ、セイバー」と伊織がふるふると頭を左右に振った。
「なにか他のことならば、融通を利かせてやれたかもしれん。
……
でもこれは、ダメだ」
「私と共に永遠を過ごすのは嫌か、イオリ」
「そうではない。
――
儀が
――
」
ふ、と伊織がセイバーから視線を外す。どこか遠いところを見るように、透き通った月夜の瞳が宙を彷徨う。その端正な横顔が、切なげに小さな溜息を洩らす。
――
まるで恋煩いでもしているような表情だった。
その伊織の肩に、セイバーの手が伸びる。掴まれると同時に畳の上に倒され、そのまま釘付けにされる。抵抗もままならぬまま、伊織がセイバーを見上げる。引き倒された身体の上に乗り上げられたまま、セイバーに両肩を押さえつけられながら、彼が静かに自分を見下ろしているのを見る。
――
その瞳が、煌々と燃えているのを見る。
「きみが、儀に
――
あの月
に恋をしているのは知っているよ。
……
だが、恋というものは大抵が実らないものだ。それは、きみだろうと私だろうと同じだ。
――
だが、それとこれとは別だ。私は私の我儘で、きみをここに閉じ込める」
「
――
……
セイ、バー
……
」
「私の恋が実らなくとも構わない。きみが私を恨んだとしても構わない。
――
私は未来永劫きみをここに閉じ込め私の傍に留め置いて、きみを守る。たとえきみから同じ想いが返って来なくとも、私はきみを私のものにする。
……
きみが私を嫌いになってもいいよ。それでも私は、きみを守る」
「セイバー
……
」
ぽつりと零し、伊織がセイバーを見る。落ち着き払ったように見えたセイバーの呼吸は、ふ、ふ、とわずかに乱れていた。その顔を真っすぐに見上げて、いっそ慈しむような
――
憐れむような瞳で、伊織が言った。
「おまえが、俺のためを思って何かを成し遂げようとしてくれていることは、わかるんだよ。
――
でも、ごめんな。やっぱり、おまえの想いには応えてやることができないよ。
……
おまえに守られてやることが、俺にはできない」
「
……
イオリ
……
!」
「すまんな、セイバー。
……
ごめんな」
伊織が、両肩を畳に縫い留められたまま、そっと両腕を伸ばす。大きな手でセイバーの両の頬を優しく包み込んだ。驚いて目を瞠るセイバーの小さな顔を、ゆっくりと引き寄せた。
――
その唇に、自分の唇を重ねた。
「
――
あ、」とセイバーが小さく声を洩らす。伊織の手の中で、セイバーが小さく痙攣したのを感じる。伊織が唇を離した。
――
セイバーの表情が変わるのを、間近に見る。
「
――
ん、あ?
……
あ!? イ、イオリ!?
……
んんんんんっ!? 一体どこだここは!?」
伊織の上から飛び上がるようにして身を起こしたセイバーが、きょろきょろと周囲を忙しなく見回す。心底驚いたように叫びながら、畳から身を起こした伊織を庇うようにして立ち、蛇行剣を構えた。
「一体なんだここは!? 誰だか知らぬが、馬鹿げた規模の術を仕掛けおって。
――
いや、本当になんだこれは
……
?」
「ここからの脱出方法はわかるか? セイバー」
「私を誰だと思っている、きみのサーヴァントだぞ!」
言って、伊織を伴って本殿の外へと出る。遥か下界へと続く長い階段を目にして「んんー?」と小首を傾げたあと、「普通なら無理そうなのだが
……
なぜか私ならいけそうな気がする」とぽつりと言った。
「そうか。
――
『目を閉じて三つ数えたら』、というやつだな?」
「よく掴まっておれ、『ばびゅーん』するからな」
「う
……
ん
……
?」
言っておもむろにセイバーが伊織を背中に背負う。伊織が何かを言える前に、セイバーが長い長い階段を一足飛びに駆け下り始めた。
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