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者
2025-09-05 13:22:40
10140文字
Public
紫白:短編
とても短いものまとめ
帯に短し襷に長しでお話にも4コマにもならなかったものたちです。
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一石三鳥(元+紫白)
「今日は無名様が登城されているんですって」
「そうなの?見に行きましょうよ!」
「あの美しいお顔、元気が出るわ〜!」
用事を済ませて目立たぬように城内を歩いていた白鸞の耳に、きゃらきゃらと女官たちの声が聞こえてきた。その内容が知己の噂話のようで一応耳をそばだててみたものの、特に留意すべき内容ではなかったので、まあいいか、と、紫鸞の屋敷に足を向けた。
城から少し遠いところにある屋敷の廊下を勝手知ったる様子で歩いていると、元化の部屋から気配がした。訪問の理由は元化に薬草を届けることだったので、白鸞はそのまま、元化の部屋へ向かう。開け放たれた入り口からそっと中を伺うと、弟子は遣いにでも行っているのか、元化は一人だった。これ幸いと声をかけて部屋に入ると、元化はいつものようににこやかに挨拶をした。持ってきた薬草を渡せば、白鸞の目の前で仕分けをしながらそれぞれの名前を確認する。それに一つずつ答えながら、白鸞は元化の顔を見た。
「?どうかしましたか?」
「いや
…
」
元化がすぐに気づいて首を傾げるが、白鸞はそのまま元化を見つめる。
「
…
紫鸞は
…
顔が美しいのか?」
「え?あぁ、ええ、まあ
…
整った顔をしてると思いますけど
…
」
「そうか
…
」
紫鸞の無口に隠れがちだが、白鸞も慣れてくると大概突拍子も無い会話の始め方をすると、元化は思う。けれど、元化はそれが嫌いではなかった。
「急にどうしたんですか?」
「城で、侍女たちが噂していた」
「ああ、なるほど」
白鸞は、尋ねれば必ずきちんと答えが返ってくる。その内容と、未だに腑に落ちない顔をしているのをみて、元化は少し笑ってしまった。たしかに白鸞は、人々の容姿、美醜には興味がなさそうではある。
「整った顔を見ると、元気が出るものなのか?」
「それも侍女さんが?」
「ああ」
尋ねられた元化は、面白いなと思う。紫鸞などは、よくわからないことがあっても、特に興味がなければそのままだが、白鸞はこうして、理解しようとする。なんでも一人で片付けようとする白鸞の、こういう一面が本来の彼の性質なのかもしれないと思った。
「見ていて気持ちがいい、ずっと見ていたいと思うものを美しいと呼ぶんだと思いますよ。白鸞殿は、ずっと見ていたいと思いますか?紫鸞殿の顔」
「
…
いや、ずっと見ていると腹が立つ」
「あはは」
それは容姿が理由ではないなぁ、と元化は笑う。きっと本当に、白鸞は人の顔の良し悪しなど気にしたことがないのだろう。元化からすれば、それはとても好もしく思えた。
「紫鸞殿、もうすぐ帰ってくると思いますよ。顔でも見て、元気になって帰ってください」
元化がそう言うと、白鸞はわかりやすく顔を顰めた。
「私は健康だが」
「そうですか?じゃあそのクマは俺の見間違いかなぁ」
「医者の不養生には気をつけろ」
白鸞は吐き捨てるように元化を気遣って、部屋から出ていった。その背中にちゃんと寝てくださいねと声をかけながら、元化も薬草に向き直る。紫鸞はいつも、白鸞に会えるかどうかは運次第だと言っているから、せめて幸運を祈ることにした。さて、と薬草に手を伸ばしたところで、廊下の奥から白鸞の声が聞こえてきた。ちょうど、紫鸞が戻ってきたらしい。紫鸞の運の強さで、白鸞も元気になるのだから、一石二鳥とはこのことなのだろうと思う。随分と大きく、随分と貴重な鳥ではあるが。
「白鸞殿も、顔がいいと思いますけどね」
どうせ紫鸞に言ってみたところで、先ほどの白鸞と同じように首を傾げるのは目に見えている。それでも紫鸞は、白鸞の顔ならずっと見ていたいと言うだろうけれど。その様子がありありと想像できてしまって、元化はついつい、一人で笑ってしまった。
〜おわり〜
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