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ちよど
2025-08-25 16:34:28
10390文字
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わし様など
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短編化企画(2025年1~7月)
#練習1Pでポストしていた1P小説を短編化したもの。リクエストしてくださって本当にありがとうございました!
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No.2
生前アシュヨダ
「おまえが着たかった服だろう?」
調停の式典に現れたクル国の王子はクシャトリヤの正式な戦装束を身に着けていた。
戦う事なく武力でもってこの国を呑み込む大国の代表としてふさわしい姿。絢爛な冠を目深に被り、金の装飾を身に着け、髪と同じ深い赤の衣装に身を包んだ王子は美丈夫との噂通りの端正な顔立ちをしていた。
この王子がクル国の大部隊を率いて我が国の辺境をぐるりとまわっただけで我が王がどうやっても鎮圧出来なかった反乱軍は大人しくなり。我が国はクル国の属国となったのだ。
きらびやかな装いでも国力の差を見せつけられた痩身の我が王はただでさえ小さな背を丸めてしまっている。
ため息がもれる。
気弱ではあるが優しい王なのだ。クシャトリヤとは名ばかりの俺を拾ってくれたほどに。
俺はこの式典に招かれた高位のバラモンから剥ぎ取った衣装を整えた。
バラモン殺しは重罪だ。もう後戻りは出来ない。
衣装に隠せたのは小さな短剣ひとつ。毒は塗ったが届かなければ意味がない。
国同士の誓いはバラモンが神へと伝える。俺はバラモンらしくゆっくりとクル国の王子に近づいた。
王子の側にいる我が王は俺に気づかない。──どうかそのままで。
脳裏を駆け抜ける思い出が足を早めようとする。
分かっている。王子を殺したところで我が国が、我が王がクル国のものになるのは避けられないだろう。それどころか、王子を殺された盲目の王の怒りをかうだろう。
でも。──我が王。我が王よ。
祈るように見上げれば王子の金色の瞳が目に入った。
あと二歩。踏み込んで振り抜けば、
金の瞳が獰猛に光る。
「おっとぉ!」
声。
衝撃。突然床に叩きつけられる。遅れて痛みが体中に広がった。なんとか顔を上げれば王子の護衛のひとりが棍棒を片手に笑っている。
「おまえが刺客か。──よくやったアシュヴァッターマン!」
「俺は立ってただけだぜ。旦那」
紫の髪の護衛と赤い髪の王子が言葉を交わす。アシュヴァッターマンと呼ばれた金色の目が俺を見下ろした。
「
…
まっとうなバラモンならその服をそんな風に着ねぇよ」
褐色の手が冠をわずかに押し上げる。宝珠の輝きが溢れた。
ああ、聞いたことがある。クル国の王子ドゥリーヨダナには額に宝珠を持つバラモンの戦士が付き従っていると。
俺の計画を事前に察知していた王子は彼を身代わりにしていたのだ。
罠にかかった愚か者を呼ぶかすれた声に俺は動かなかった。
──ああ、我が王。私を知らぬ振りすら出来ない愚かで優しい我が王よ。
そしてそれ故に軽んじられ続けていた我が王よ。私だけはあなたのために死にましょう。
ゆっくりと力尽きる俺の横で言葉が交わされる。
「旦那、なんで俺なんだよ?身代わりなら幾らでもいただろ?」
バラモンなら決して身につける事がないクシャトリヤの戦装束を身に纏い。クシャトリヤの王子として大部隊を率いて巡ったアシュヴァッターマンが問うのに型破りな王子はにんまりと笑った。
「分からんのか?」
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読んでくださってありがとうございます。
少しでも楽しんでいただけたなら嬉しいです。
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