芹沢亀吉
2025-07-20 17:47:33
13718文字
Public 菊タブー
 

最後の園遊会

暴虐な軍国主義者の楠木武が恥をかく物語の通算116話目。残忍描写濃い目なので18歳未満の人は読まないように。


 巨大怪物清仁の周囲をよく見ると、紫色熱線を四方八方に撃ち破壊の限りを尽くした割には複数の高層ビルがほぼ無傷のまま林立、線路にも架線にも目立った損傷が無く新幹線、在来線共にこれまで通り走行可能といった具合に破壊力の乏しさを示す物的証拠が盛り沢山。そんな破壊力の乏しい紫色熱線を撃ったところで地球に深さ数千kmの大穴開ける威力の放射熱線の直撃に耐えるキングギドラにはかすり傷一つつけられない。

「おのれ魔物!これならどうだ!朕を侮ると痛い目に遭うぞ!」

 己の攻撃が全く効いていないことに焦り口から吐いた紫色熱線と同じものを尾の先端からも撃つ巨大怪物清仁ではあるものの、どれだけ当ててもキングギドラは無傷のまま。一方キングギドラ側は左の首が紫色熱線を放射する尾の先端を興味深げに眺め、中央の首は早く反撃をと言いたげな右の首に自制を促す。

「し、しまった!朕にはもう体力が!ま、待てぇ!」

 巨大怪物清仁が体力を使い果たし紫色熱線を撃てなくなった瞬間を見計らい、中央の首が甲高い鳴き声を上げたのを合図にキングギドラの各首が一斉に引力光線を吐いた。3発の引力光線を同時に浴びた巨大怪物清仁の全身は瞬く間に灰と化し、その灰は暴風雨がきれいさっぱり洗い流す。引力光線は物体の分子構造自体を乱す性質故数十回の核爆発の直撃に耐え抜くゴジラの身体にも痛手を負わせることが出来、地中貫通爆弾程度で大量出血即ち核爆発の直撃には到底耐えられない巨大怪物清仁を消し去るなど朝飯前だ。

「て、天皇陛下が、天皇陛下が。」

「終わりだ、もうこの国は終わりだ。」

 巨大怪物清仁の敗死を目の当たりにした自衛官が1人、また1人と自らの頭を撃ち自決していく。主君に殉じる武士道精神など自分の命を粗末にする愚考に過ぎないが。

「に、逃げろぉ、って、うわぁ!」

 先程民間人を狙い乱暴狼藉を働いていた自衛官の中には自決せず逃げ出す者も数多くいて、キングギドラは龍柱から教わった力を使い逃亡を企てた自衛官全員を宙に浮かせた。間髪入れずに両翼の棘から引力光線を放射しフワフワと宙を漂うクズ自衛官全員を冥界送りにしたのは那覇市内に降り立った時と同じ。

 那覇市内に舞い戻ったキングギドラを出迎えた龍柱は心なしか微笑んでいるように見える。再び那覇市上空に巨大な時空の穴が開き、その穴はキングギドラが飛び込んだ途端にフッと消えた。龍柱がこの世界にキングギドラを呼んだのは在沖自衛隊、在沖アメリカ軍に加え巨大怪物清仁を成敗してもらうためだったのだろう。

「アメリカ軍の熱核爆弾なら巨大化した清仁を消すのは簡単だろう。だがここでアメリカ軍に巨大生物打倒という手柄を立てさせると図に乗って沖縄への抑圧、迫害を強めるのは必定。それ故龍柱としてはあの黄金三つ首龍に巨大化した清仁を討伐してもらう必要があったんだ。閻魔サンはどう思う?」

「私も同意見だ。沖縄にとって自衛隊もアメリカ軍も巨大化清仁同様脅威なのはわかりきったこと。ところで火車よ、また別の世界から楠木武がこの冥府に向かっていると奪衣婆から連絡が入った。行くのか?」

「勿論行く。楠木武の汚れきった魂は何度喰っても飽きないからな。」

 火車の退出とほぼ同時に亡者清仁が冥府に到着し、閻魔からの宣告は当然地獄行き。

 キングギドラが去り晴れ間が戻った都心ではあるものの、首都機能は完全に崩壊し一極集中国家日本は事実上滅亡。そして園遊会が開催されることはもう二度と無い。開催しようにも皇室が滅び去った今主催する今上天皇はもういないのだから。(終)