芹沢亀吉
2025-07-20 17:47:33
13718文字
Public 菊タブー
 

最後の園遊会

暴虐な軍国主義者の楠木武が恥をかく物語の通算116話目。残忍描写濃い目なので18歳未満の人は読まないように。


 靖国通りを逃走中と聞けば大多数の方が自動車を運転し逃走する様子を思い浮かべることだろう。しかし実際は全裸姿の楠木が車道を自分の足で走っている。しかもパン食い競争のパンをくわえるのと同じ感覚で人間の腸をくわえながら。

「うわー!」

「キャー!」

 靖国通りを走る自動車の運転手達は目の前に迫る口髭を生やした全裸男に驚き玉突き衝突事故が多発した。そう、楠木は今車道を逆走中だ。見たくも無い楠木の裸体を見せられた上玉突き衝突事故に巻き込まれた運転手達の心中は如何ばかりか。走る速度は時速90km、パトカーを含む車道を走る自動車に次々体当たりし悉く大破と多数の悪霊に憑依されたこの全裸男は脚力も身体の頑丈さも桁外れ。

「陛下!大量殺人犯がこの赤坂御苑に迫っています!物凄い速さで!今すぐ避難して下さい!」

 この侍従の懸命な訴えは清仁の機嫌を損ねることに。

「痴れ者!園遊会を中断など朕の権威に関わるではないか!誰が避難などするか!警視庁がその殺人犯を早く捕まえれば済む話ではないか!」

 機嫌が悪くなる度侍従を怒鳴りつけるのは即位前からの清仁の日常茶飯事とはいえ、園遊会の参加者達は今上天皇の横暴な振る舞いを目の当たりにしてただ戸惑うばかり。この連中は皆報道機関が報じる過剰に美化された清仁の虚像を真に受けていたのだ。

 園遊会の会場全体がざわめく中、全裸男楠木が厳重な警備陣を容易く突破しその会場に駆け込んだ。今の楠木は極めて動きが俊敏故清仁の目の前に行くのを誰も止められない。

「天皇陛下万歳!」

 そう叫ぶや否や楠木は目の前の清仁に抱きつき、いきなり全身返り血だらけの全裸男に抱きつかれた今上天皇がブクブクと泡を吹き白目を剥く。楠木本人は勿論彼に憑依している悪霊共は皆天皇を神の如く崇め、清仁に抱きついたのは念願の「現人神」との対面(?)を果たし感極まってのもの。

「おい!あの全裸男が倒れたぞ!」

「今だ!天皇陛下を取り戻せ!」

 全裸男楠木がバタリと倒れたのを見計らい、SP達が素早く駆け寄り意識の無い清仁を保護した。SPの中には仰向け状態の全裸男楠木を「この国賊め!」と罵り蹴飛ばす者も。

 意識の無い実兄清仁が取り巻き達に丁重に扱われるのを遠巻きに眺め、義仁は舌打ちし眉間に皺を寄せる。この皇嗣は一日も早い兄の「崩御」を望み、兄弟仲は極めて険悪。園遊会の皇族全員が一列に歩く従来の形式が清仁一家と義仁一家が別々に歩く形式に変更されたのも、お互い同じ列を歩きたくない今上天皇並びに皇嗣の「お気持ち」を宮内庁側が忖度したからだ。「従来の皇室全員が一列に歩く形式では進路沿いに招待者が集中し待ち時間が長くなる。招待者の待ち時間を短縮するため今年から変更した。」という形式変更の表向きの理由を考えるのに宮内庁職員達は徹夜したとかしなかったとか。

「さっきあいつを仕留めていたらパパの即位が早まったのに、あの変態口髭野郎、詰めが甘いなぁ。」

 途端に義仁は頭の中が沸騰し、軽口を叩く一人息子靖仁やすひとを殴り飛ばした。

「痛いよ!何で俺殴られたの!?俺生まれてから一度も殴られたこと無かったのに!」

「馬鹿息子が!大勢の人がいる中で軽口叩くな!」