【創作|馬軸】春雷 外伝 不知火 プロローグ

──その星が、俺の行くべき道を示してくれる。
「春雷」では描かれなかった牝馬クラシック路線から贈る、再起と栄光へ至るもう一つの物語。

スペシャルサンクス
Littorioさん 双鶴浅葱さんをお借りしました。めちゃくちゃ勝手に設定生やしてお借りしてめちゃくちゃ喋っていただいております。
山城まつりさん 櫻田翠先生のお名前、真田那央さんをお借りしております。那央さんにはめちゃくちゃ喋っていただいています。
早蕨足穂さん クロフォード先生(お名前は出ていません)をお借りしております。
さけはしろみさん 台詞の一部、設定の一部をお借りしております。
みなさまいつも遊んでいただき本当にありがとうございます。これからもよろしくお願い申し上げます。
※本作品は実在の名称、団体、企業などとは一切関係ない一次創作作品です。

 プロローグ

 
 天球に映し出された星々を見上げる。数億光年、数千光年離れた場所にある、過去の光。俺たちは過去を見ている。美しい過去の瞬きは、季節がある限り一瞬で過ぎ去ることはない。空を見上げればそこには星があり、それを道標にして俺たちは進む。
 
 一つの、栄光へ。
 
 プラネタリウムが好きだった。日常の煩わしさを忘れられるから。勝負の駆け引きに思いを巡らせずに済むから。最早ルーティンの一部と化したプラネタリウム鑑賞も、俺の人生と勝負の一部だという確信があった。
 かつて俺には、完全に競馬を忘れられる時間が、騎手としての自分自身を流し落とす時間が必要だった。
 俺は瞼を下す。眼を開けば、眼前に広がるのは青く凪いだ景色だけだ。冬が迫る冷たい風の音だけが俺の耳を叩く。

 しかし、跨る温かな背中には確かな意志があった。

 祈りという意味を与えられたその牝馬は、今日このレースを以て競走馬生活を終え、故郷の北海道へ戻ることになる。
 俺は彼女の首筋をそっと撫でた。普段であれば嫌がって首を勢いよく横に振り、俺の手を払いのけているところである。だがそうはならなかった。


「ありがとう、——俺に夢を見せてくれて」


 彼女は耳を片方だけ、俺の方へ向けている。そしてくるりと両耳が正面を向く。
 ──直後、行手を阻むゲートが開く。
 蹄跡を刻みつけ、十八の人馬が青い芝へと躍り出た。