●本当はGの年にはインドシナ三国の難民問題も直撃だと思いますが。
「お疲れ、ありがとさん」
「ん」
戦闘終了後、足元に残っていた逃げ遅れの子供に仰天し、隼人が避難所まで連れて行った。書類を書かなきゃならないなら俺達だとわからないところが絶対出るから。
この辺りは既に地盤からひっくり返され焼き払われた工場地帯であり、職員住宅がすぐそばに立ち並ぶでもなく駅からの送迎バスが一日中ピストン輸送しているタイプだと聞いていた、なのにどうしてと思っていれば
「工場がぶっ潰された段階で、トカゲ野郎に親のカタキ討ちしようと、この工場倉庫の含水爆薬を探しに人波に逆らって入り込んでいたんだと、すごいな」
「ちいバカなことしやがる」
そういう無茶するお子様、前にもいたよなあ、あーやめろやめろ!と竜馬は首を縮める。俺達は死ににくいと選ばれた奴が自分で選んで戦ってるからいいんだよ、まだ理由と覚悟しかねえただのガキがそんな真似しちゃいけねえや、と。
俺もそう言ったさ、と隼人は熱い地面に上がる強い風に長い前髪をもてあそばれつつ返した
*
「兄ちゃんも鍵持ってんの」
パイロットスーツのうなじから覗いた光るものに、肩車されたその子供が聞いた。汗と土埃でべたべた汚れたまだ小さな手が白く長いうなじに触れるから、隼人はふい、と片眉を上げる
「鍵」
「うん、家族と一緒に焼かれちまったけど。家の鍵。持ってる。
あそこは絶対トカゲ野郎のものじゃなく俺たち家族のもんだから、この鍵に誓って帰るんだ
首から汚れた毛糸紐でぶら下げた鍵を手に小さな彼は隼人の双眸を覗き込んだ、幼くも既に静かに祈るかのような決意だと隼人は感じた。
「
―――って、故郷を追われたパレスチナの難民みたいな事を知らずやって、言っていてさ」
「へえ、俺ん家のぼろ屋はそんな上等なのじゃなく、南京錠が借金取りにぶっ壊された後は3ケタのダイヤル錠だったよ。最近の鍵っ子はサマになってうらやましいや」
「まぜっかえしなさんなよ」
せめて帰らせてやりたい、わかってるさ、夕闇が迫る、風の中の語らい。
●
「トカゲ野郎の脳が残ってやがったんだよ」
ゲットマシンの、ゲッターの操縦席からも見た覚えがあった、分厚い装甲の下からこちらを見ている生きた眼差し、興奮状態の目と剥き出しの牙。メカザウルスのベースとなった恐竜の知能が高ければ、サイボーグ程度の改造で"竜遣い"に駆り出されてあったり、場を恐慌状態に陥らせるべく飢えた小型の肉食竜を密集地に放ったりの展開もあった。
ごく稀に得られた情報によれば、爬虫人類は、俺達で言うサル方向に進化し「きってしまった」同じ根の巨大生物たちを孵化し育て、改造することで戦力としていた、その分敵はしばしば優秀な敵機体とはいえ生き物ならではの習性やクセをも有していた。
ゲッターチームメンバーが揃っていない時に司令塔である研究所がそんな形で狙われるのは一度ならずあったことだった。ジャガー号を自動操縦状態のまま合体して急ぎ駆け付けることも、たどり着くまで生きていてくれと祈ることも、やられるんじゃねえぞ畜生と歯噛みすることも。
「トカゲ野郎の脳が残ってやがったんだよ」
だからゲッターパイロットの首級が得られると見るやそこで踏みつぶしたり本能のままに食いちぎらせて原型無くする代わりに丸呑みさせ、喉の奥にあった捕食物粉砕の為のシャフトを停止して、サイボーグ化した胃袋兼内部ダストまで落とそうとしてくれた、こっちとしちゃ、嚥下されるときに窒息や全身骨折しちまわないよう、仲間の研究員の死体も一緒に食う格好に誘導した程度さ
怪物の腹の中で悪さをするのはほら吹きミュンヒハウゼン男爵だったかピノキオか、ヨナはカウントされないか
メカザウルスは臓腑を内部から爆破され、その大穴の開いた肉塊は勢いのままにトマホークで首を落とされたあと、胴を捌かれ掻き分けられて、ゲッター1の手のひらの上、ちょこんと救い出された隼人は、血の赤と他はなんだかわからない色でどろどろの隼人は、
「その辺の白衣でも取ってくれ、かなりハダカンボにされちまった」
そう言って、ほぼ裸身となったパイロットスーツの上から白衣を纏った。
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.