akinoshiroihana
2025-04-14 21:25:42
19808文字
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名刺置き場6





ああ、おまえは柔らかいな
不意打ちへのそんな言葉はなかなかに心外だった

体脂肪率のせいかな、力を抜いてくれていれば問題ないが、
飛び付いてくる瞬間はまさに鈍器かいっそ飛んできた瓦礫か岩な奴がいたんだよ、二号機乗りでもないくせに
そうかお前の場合、「殴られる」のもショーでの大事な見世物だったから、適度な脂肪のクッションが必要だったな。
多分そもそもが「当たらない」大前提の二号機パイロットだった、いろいろ削ぎ落し失ってもう飛べなくなった彼が腕の中でつぶやく。
大人の声で笑うが恐らく、彼は「友」との出会いの時を思い出し、戦闘後の、雨間の鈍色の空を見上げた。雨にも静まり切らなかった粉塵と破壊されたばかりの建造物と炎が臭う中で今彼の背を抱いたから。
でもだから言う、多分その時はそれどころじゃなかっただろう台詞を
「終わったよ、ケガしてねえ?神さん―――はやと」
男の背中がびくりと震えた


(校舎の頃の竜馬ならまだそんなゴリゴリじゃないと思いますが、サーガ號での彼イメージ優先で)




蟋蟀、螽斯。女が男を食うことも男が女を食うことも、何事もなく終わることもある同族喰いのサガのある恋
だが蟷螂、その妻。必ず夫の脊髄を噛み砕き精を放たせ。それで彼らは成就する

唐揚げ定食に大豆ミート、茶色いものをを喜んで貪る流竜馬は、餌の煮干しの頭や削り節で、動物性蛋白質で共食いの衝動をすっかり丸め込まれている籠の中の虫けらだと隼人は思う。サラダとトーストだけの自分の餌を噛みしめながら

雌蟷螂と睦みに来て、首を食いちぎられ食い殺されない雄蟷螂はいない。ならば
せいぜい雌伏とやらをしてやろうではないか。自分が上だと、憎めない愛される存在だと世界は容易いと思っているあいつは、どれほど嬉々として飛びつき圧し掛かってくることやら。神隼人は、目にも口にもその色を出さず、口の中を舐めた



『俺は繊細なんだよ』
とは、誰が言ったか。

父が死に母がいなくなり、野良に生み残された卵は大抵のいのちにおいて、オスから先に孵る、おれたちの卵の方が、温度変化に敏感だからとか堪え性がないとかで。
だから生まれてみれば女日照りの世界だメスがたりない交尾の相手がない。シャーレや虫かごの中飼いじゃなく共食い上等の掟な分、体はよく仕上がって、そうしてみれば本能がお前をおまえの情報を残せとおれに耳打ちする。
昔は「種の保存」なんて名の本能が存在すると言われたが、その界隈は近年どうやら旗色悪い。間違いなく「おれ」の子を生むのであってほしいから手付かずの処女がいちばんだし、「おれ」との交尾に乗ってくれずガキにかまけるのは邪魔だから連れ子は殺すのが自然の声だ。性球を尻に付けられまとわせよたよたと行く知らないメスが食いちぎった旦那のを脚を咥えているのを横目にしながら、おれはもうじき孵ると目を付けたきれいな白い卵の前にしゃがみこむ。
遅れて割れる卵はどんどんメス率が上がっていくって本能が入知恵するから
『おれだけのものになりな』
そう言い聞かせておれは月の下まだ眠っているまるいカノジョをだきよせた。

そうやって、まだ卵のまま食われちまわないようにお守りして、初齢から、ずっと見守ってみれば、

「なぁンでこっちになっちまったかねエ!?」
おれたちは何度目かの脱皮でようやくオスメスが判明するから。つまり「はやと」は、美人の明日香ネエチャンやらショウに囲まれた、この時期のあの夜、唯一孵ったヤロウは、いまや佃煮にするほど圧倒的にいるメスたちにがっつく気もなくその行く道を見守る算段心っもりだとかで。大して飛べない羽を拡げ、小難しくも静かな顔で、この原っぱから青と白の空を見上げている


月の夜にはたまに共に鳴く