akinoshiroihana
2025-04-14 21:23:10
22255文字
Public
 

名刺置き場7




寝室の方から呼ばれたから

「クスリは俺が探すと言っただろ」
お前さんの鼻にまかせてタイガーバームばっかザクザク発掘されちゃたまんねえや、

そう、艶っぽい方のお誘いだった場合をいなしていたのだが。竜馬は空きっ腹のはずがなかなか戻ってこようとしないでいて
「いいから来い、来いってそんで見てくれよ―――何だこれ」

ゲッターの戦闘後、分離して地上に降りてみれば、そこはメカザウルスにやられたのでもない元から数十年来の戦闘区域らしかった。これなら迷惑も小さくて済んだかなと言っていれば、博士からは「なんなら一緒に検問所を越えたい避難民の助けくらいはできるかもしれんから」との待機命令、取りあえずは近場での空き家での家捜し(必要なものをお借りしました、とのメモをかならず残していくこと)、その途中だったのだが

「なんだこれ」
身の丈1メートルはあろうテディベアが寝室の天井から首を括られてくるくる回っている。その顔を覗き込んでみれば、両目にはナイフが柄まで深々と刺さって。これを突き通すには男でもそれなりに力を込めただろう。
「なあ」
自分の手を掴む竜馬の強い力に、隼人は常ならぬ当惑を感じ、だから一度目を閉じため息をついた。

「俺のときと同じだよ。
逃げおおせた奴に『てめえをこうしてやれなくて残念だ』って。
俺の校舎でも趣味の悪いクリスマスツリーみたいにされたのが、いただろ?」
あれは生きた人間でだったが。
「あー……。けどよ、こんなモンで、こんな真似して楽しいのかよ?」
「楽しいんだよ」
「なっ」
前の戦争でも、残されていた女達の下着を身に付けて見せて笑い、侮辱している写真なんかよくあっただろう?擬似的に彼女たちを犯した気になってるのさ
あ!っ、わかった!ちくしょ、バッチリわかったからもういい!……俺ゃてっきりああいうのは頭がイカレちまった可哀想なヤツのかと思ってた…………畜生。

下ろしてやろうぜ、それでこのベッドに寝かしといてやるんだ、もしかしてこの家の人たちが戻って来るまで。
それでこれから食い物探してくる間、おまえがこの顔、なんとか直してやってくれよなんとかさ。頼むよ、はやと。
どさりと落ちてきた大きなふわふわを抱き止めれば、なぜか自分にそっとかけられた羽布団を見、隼人はばたばたと遠ざかる戦友の足音を聞いた。何をどう理解したらああいう反応に至るのかと、些か眉をひそめながら。

ひるさがり、タル·アル=ハワ
ガザ区西
Tal al-Hawa, in the west of Gaza City
14:00

ceasefire. stop genocide
ひとごろしをやめろ