akinoshiroihana
2025-04-14 21:23:10
22255文字
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名刺置き場7




(9/9は菊の節句らしいですが、映画『御法度』終盤にミもフタもないこと言ってたのが耳に貼り付いてまして
大島渚監督のバカァ!w💦)



闇の中、地表より煮えたぎりよろめくように立ち上がる地熱がめとりと蛍光灯の肌に這い、手摺がひとの埃と砂と汗と熱を纏いべとつく夏が、
ゆるやかに横方向に、流れ吹き渡るあたたかな風のフェンスを鳴らす音へと、夜明け前にいつの間にか巻き取られた毛布、その毛布に包まって悪い夢にうなされている奴に文句を言いたくなる秋へと。

今日はそういう日だったらしいぜと片手にビールケース、片手に藪でむしってきた野菊を提げた竜馬が、飲みに付き合えと隼人を訪ねたのは、時計の針が真上を回った頃だった。
菊酒ってのはわかんねえけどよ、サシミの醤油に菊むしって散らすと爽やかで悪くねえ。だいたいサシミの飾りは基本全部食っていいんだとよアレ、とは珍しくも竜馬から出た蘊蓄だった。

さて何を願う?無病息災か子孫繁栄か不老長寿か
不老長寿、ふふ

砂粒の数ほどの命を請うた女は死を願い
不死を賜った男は蝉の声になった

「老けねえように」はどいつも頼み忘れんのか?
どこの神話の世界でさえ人には叶わないこと、上手いことやるのは蛇くらいって落ちだよ多分な。

昔語りの「蛇」ってのは蛇そのもの、それに虫達のことくらいか
じゃあムシじゃねえ俺達には叶わないことか、へへっそうさ俺達は虫ケラじゃない

そんなのはちょいとの浅知恵で不老をもらったとこで、無責任な誰かにシャーレか水槽に放り込みだけされて、そいつはまた捕虫網を手に明るい野っ原に行っちまうだろうさ。
石に刻まれてうつろわなくなったもの。だがその石は砕ける倒れる屑折れるもの
「ーーーリョウ?」
それで翌朝水槽を覗いたソイツは、そこでその命本来の速度相応に起きた忙しい共食いや殺しあい戦争の痕も見付けられず、たまたまそこで生き残っただけのただの虫が、ぼろぼろの身体で出てきたのに首を捻るんだ、そいつが何を見たか食ったか、これから何を産むかは知らないで。

…………なあ
なんだよ
案外自分達を虫ケラだって思ってないかい?リョウさんよ
え、ええ?ちげえよ、あれ?っかしいな

昭和××年、長月の夜、過ぎ行く


『愛するものが いる限り』


月が傾く、熱にうるむことのなくなった空に、白金に滑り行く

嘗て『研究所』の名で知られた廃墟はいまはただ黒く静かに聳え、白蛇を思わせる金髪の青年を迎えた
愛するものが、嘗て確かにあった、自ら手を離した彼の前に

20xx年 重陽の夜

もう蝉の声は聞こえない