akinoshiroihana
2025-04-14 21:23:10
22255文字
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名刺置き場7




むめいさんのツイートでふと。
本当に大事な人ならなんてことない持ち物ひとつ出て来ただけで思い出が出てきて無限大よなー、クローンなんてその歴史が全くついていかんやつですやろ?とか


重いと思ったらこれかい

留守のうちに家からの段ボールをそのまま部屋まで運んでくれたのは、早乙女夫人ひとりによるものだろう。
保存食やら茶葉と、そっと忍ばせた茶封筒を見る竜馬の隣で、姉の旅行土産らしいものの小包を開けた隼人が声を挙げる。
「そりゃまあわざわざこっちで買う気はなかったけどよ」
言いつつ取り出したのは電動鉛筆削りだった。彼らよりほんの少し早く生まれたそれは、まだ手動のそれに取って代わるまででもないし、各教室の黒板横に常設されるようになるにはまだ数年以上を要するだろう
三人部屋に二つ並んだ机の中央奥にそれを配置すれば、右利きの竜馬が左、左利きの隼人が右に座るぶんにちょうど良かった

どうぞ、と隼人の白い手でジェスチャーされると、それじゃお先にと竜馬が自分の布製の筆箱を開けて鉛筆を差し入れる。抑えられつつそこそこの機械音と振動に、ああこれこれ、みたいな顔を彼はした。
上手にとはいえカッターナイフでけずられていたそれが、次々と揃ってつるりときれいな顔に仕上がっていく。その中に一本だけキャップを嵌めた短い鉛筆が残るのを手にした彼がはっとする
「ああいかん、これはあれだ、武藏のだ。
 寮を出る時、荷物出しをお前に頼んで最後の雑巾がけを俺がやっていたとき、見付けたんで持って来たんだよ」
飛びのくように削り機から手の中のそれを遠ざける。
武蔵が最後に使った時のままにとキャップをしたんだ
俺のじゃないし、お前はHBでも柔らかいのって苦手だろう?この2Bは武蔵のだよ、俺と同じ美術を取ってた武蔵が、画材用の鉛筆をものぐさでそのまま使ってたんだ、そういえばあいつが日直の時の日誌にはべたべた手型が着いてたもんだ
うん、そういやゲットマシン搭乗時の署名も汚くて太い字だったぜ、やっこさん落書きしやすいから、すっかり普段使いにしてやがったな
あいつが何を描いてたのか知ってるかい?―――いいや、お前も?

「宿題にうなって鉛筆をかじるの、やめていたんだな」
「まだ尻んとこ肥後守で削ってサイコロの目を入れちまってないヤツだな、テストの時に転がして解答してた」

語らう中、ああ、と隼人は目を伏せる。たかが鉛筆一本、ただのそれだけで蘇る言葉と仕草、匂いと時間は尽きることがない。愛しく思う心さえそこにあるならば、たしかにその人はいっしゅん儚くも輝くように、そこに生きている。言葉をつづけるのは、その輝きがマッチの炎のように消えてしまうのを惜しむからだ。
竜馬が穏やかに笑いながら鼻をすすったから、隼人は顔を上げなかった。