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黒綺
2025-03-14 19:45:42
14093文字
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クロ指 SSまとめ
18禁以外/全年齢向け作品のリンク(旧Twitter投稿分)2024-2025
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6.2024.12.31 4周年記念絵/クロ指
「クロム、すまないが私を隠してくれ」
「は、」
新しい保全エリアの開設祝いとして組まれたのは、空中庭園と覚醒機械たちが参加するカーレースで。コンステリアに残された、クラシックカー
——
今では貴重としか言いようのないガソリンエンジンで駆動する車
——
を一目見ようと大勢の人間が集まった。
レースの結果は、空中庭園代表として参加したストライクホークが、一番着でゴールラインを走り抜けた。大歓声の中、ヘルメットを外した構造体の姿に、割れんばかりの黄色い声が加わる。
レースの興奮が醒めやらぬ中、運転していたクロムは一人ロッカールームへと戻ったのだが、勝利を本人以上に喜んだのはグレイレイヴン指揮官であった。主賓席でスタートの号砲を鳴らし、ゴールに一番近い場所で惜しみない拍手を送っていたのだが、クロムがバックヤードに戻ると同時に抜け出したらしい。ロッカールームの外では「グレイレイヴン指揮官がいない」と走り回るスタッフの声がする。シー、と指を唇に当ててロッカーへと潜り込む指揮官を止める暇もなく、ロッカールームの扉がノックされた。
「お疲れ様です。クロム隊長、こちらにグレイレイヴン指揮官はいらっしゃいませんか」
「
……
、いえ、お見かけしていませんが」
「そうですか、わかりました」
足早に去っていくスタッフの靴音が遠ざかるのを確認し、クロムは指揮官が隠れたロッカーをノックする。
「ふふ、ありがとう。助かった」
「たまに君は、私の想定を超えることをされますね
……
」
「こうでもしないと、直接勝利を祝えなそうだったからな。私の役目は最初の号砲だけだし、居なくてもさしたる問題ではないさ」
クロムが差し出した手を取り、ロッカーから出てきた指揮官は、ちらりとクロムを見遣ると然りげ無く目を逸らした。しかし、それを見逃すクロムではない。指揮官の目線が向けられた先を、ロッカーに備えられていた鏡で確認する。レーシングスーツのボタンが外れている上に、車内の湿度が高かったせいかヘアセットも崩れてしまっていた。
「申し訳ありません、お見苦しいところを」
「
……
いや、それは構わないが、クロム」
「はい」
「
……
その、いや、これは私の欲目だな」
普段は躊躇いなくクロムへの愛を囁く指揮官の唇が、今日はなんだか歯切れが悪い。気まずそうにクロムを見つめては、頬を染めて俯くを繰り返す。
「指揮官
……
?」
「ッ、」
何か失礼なことをしただろうか。今日の機体ログを電子脳内で確認するが、指揮官と話をしたのは今が初めてである。想定される数十パターンの可能性が全て否定され、クロムは途方に暮れた。
「
——
その、姿を誰かに晒したか?」
「は
……
と、言うと」
「
……
だから、その、姿で誰かと会ったか」
「いえ、車を降りてすぐ、ここに」
「
……
そうか、」
安堵の表情を隠さない指揮官に、クロムはわずかに首を傾げた。指揮官が、クロムの人工毛髪に触れ、崩れた髪を元ある場所へと誘う。そのままの流れで、こめかみ、頬と手を滑らせ、車内の暑さで結露したままだった水分が拭われる。
「機体の温度が、上がっているからだと理解はしているんだが
……
その姿を、他人が見たかもしれないと思うと、」
「? すみません
……
もう少し、詳しくご説明願えますか?」
「ぐ
……
だから
……
ッそんな色気が漂う表情をしないでくれと言っている」
「色気
……
ですか?」
「
……
普段はそんな顔、二人でいる時にしか
……
見せないじゃないか」
ヘルメットを取った時から、気が気じゃなかったよとぼやく指揮官の口振りに、クロムは漸く指揮官の表情の理由を理解した。それと同時に意識海に湧き上がったのは、目の前の人を強く求める感情で。
「
……
君は、私の表情に惹かれてここにお越しになった、ということですか?」
「
……
悪いか」
「いいえ」
「そんな表情をされてみろ。
……
腹が疼いて堪らなくなる」
指揮官は目を逸らしながらも、クロムの手を握ったまま離さない。強く力が籠った手を、クロムは自らの方に引き寄せた。腕の中に収まる指揮官が、クロムの背に手を回したのを人工皮膚表面のセンサーが感じ取る。
「
……
いいレースだった、おめでとう」
「ありがとうございます」
「
……
だが、あんな歓声を浴びたんだ、クロムのことを狙う輩も多そうだ」
「私が求めるのは君だけだと
……
おわかりでしょう?」
「ふふ、では行動で示してもらおうか」
指揮官がクロムを見遣る眼差しに誘惑が宿る。応えるように、弧を描く薄い唇を食むと指揮官の目がとろりと揺れ、そのままクロムは口付けを深くした。
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