黒綺
2025-03-14 19:45:42
14093文字
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クロ指 SSまとめ

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1.2024.2.14 バレンタインネタ/クロ指

 商業区は、バレンタインの装飾と、店頭に並んだスイーツの甘い香りに包まれていた。手元にバイオニックフラワーの花束を持ち、そわそわと手元の時計を見る者、両手で紙袋を捧げ持つようにして相手を待つ者と、商業区噴水前の待ち合わせスポットは、浮かれた空気が流れている。
 その中で想い人を待つ自分も端から見れば、イベントに乗せられた愚か者の一人に見えるのかもしれないと思うと指揮官は苦笑いを浮かべた。
 普段はかけないサングラスと、休日で久しぶりのデートだからと言い訳をして、遊ばせた毛先がなんだかこそばゆい気もしないではない。しかし、オンもオフも知り尽くされているクロムが相手だからこそ、多少のギャップを感じてもらえた方がいいだろうと判断して部屋を出たのが待ち合わせの一時間前だった。
 昨晩も一緒に過ごしたのだから、二人で部屋を出ても良かったのだが、丸一日の非番、しかも二人揃っての休日は本当に久しぶりで「せっかくだから待ち合わせにしないか」と切り出したのは指揮官の方だった。最初は首を傾げていたが、指揮官の説明にクロムは快く頷いてくれた。支度のために、いつもより早く隊舎に戻って行く背を見送ってから二時間になる。「デートだし、待ち合わせのドキドキ感があっても良いだろ?」と伝えたのは指揮官だが、待ち合わせの三十分も前に来ている自分の方が、緊張感と高揚感に踊らされている。
 早く出たのは、待ち合わせに遅れないためでもあるが、バレンタインの贈り物を選ぶ時間が欲しかったのもある。デート中荷物になるため、ショップで購入し取置きを依頼したチョコレートの伝票をポケットの中で弄びながら、まだしばらくは現れないであろう恋人をベンチに腰掛けてのんびりと待つ、筈だった。
「指揮官……?」
「クロム……?随分早いな、どうした?」
「私は……君がくるのをお待ちしていようかと思ったのですが……どうやら、我々は同じことを考えていたようですね」
 メガネの奥のブルーの瞳が、穏やかに細められる。通常の戦闘用塗装とは違う、ハットとコートを上品に着こなしたクロムが、指揮官の姿をじっと見つめた。
……、どこか変か?」
「いえ、とてもお似合いですよ」
……そうか、お褒めに預かり光栄だな」
「よければ……せっかくのデート、ですし私にエスコートをさせて頂けますか?」
 差し伸べられる手に、指揮官はふうと一息ついた。ありがたいことに、周りの人間たちの目は二人に向けられていない。
……そうだな、よろしく。どこに連れていってくれるのかな?」
「そうですね……以前気になっていると仰っていたカフェの予約が取れましたので、そちらにご案内しようかと」
 差し出されている手を掴み、指揮官はベンチから立ち上がった。一瞬指を絡ませ、すぐに解く。
「手際がいいな、流石だ」
「ありがとうございます、指揮官」
……おっと、今日は二人ともオフだろう?指揮官はやめてくれ。気付かれる」
 笑みを浮かべた指揮官が、クロムへ耳打ちをする。名前で呼べと囁けば、僅かに頬を染めたクロムが指揮官の名前を小さくも愛情を込めて呼んだ。
「行きましょう、……レイ」
「ありがとう、クロム」