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黒綺
2025-03-14 19:45:42
14093文字
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クロ指 SSまとめ
18禁以外/全年齢向け作品のリンク(旧Twitter投稿分)2024-2025
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2025起動日 I will protect you forever.
ふたりきりで会いたいと書き記されたメッセージの通り、指揮官は一人、商業区のレストランに向かった。
普段着慣れているグレイレイヴンの隊服とは違う、礼服特有の心地よい重さが、生地の上質さを物語っている。今指揮官が身に纏っているのは、メッセージ相手から贈られた誕生日プレゼントだ。ふたりきりの逢瀬、しかも第二の誕生日とも言える起動日に、相手からの贈り物を身につけていくのは、気恥ずかしさがないかと言えば嘘になる。しかし、こんな機会でもない限り、袖を通すこともないだろう。そう、考えて着たのだが。
普段とは違う格好故か、物珍しさを隠さない視線が指揮官に突き刺さる。商業区は民間人だけでなく、軍に所属する者の往来も多い。隊服でないため声をかけられないのは幸いだが、好奇の目に晒され続けるのは本意ではない。
はてさて困ったと途方に暮れた指揮官に助け舟を出したのは、空中庭園の自動気象管理システムであった。ぽつ、ぽつと降り出した人工雨が、商業区の整然とした道に水玉模様を落としていく。指揮官が手元に携えていた傘も、メッセージ相手からの贈り物で、贈り相手は指揮官が好奇の目に晒されることも、雨に降られることも許し難いと考えたに違いない。
広げた黒い傘の下に入ると、顔と上半身が適度に隠れ、指揮官への視線を遮る絶好の盾となった。小雨が降り出したせいか、通りの人出は減り、指揮官の周りにも人影は見えない。自らが守れない時まで、細やかな配慮を欠かさない彼の顔を思い浮かべれば、つい指揮官は独り言ちる。
「
……
この姿を見たら、クロムはどんな顔をするかな」
「
……
私が、どうかしましたか?」
指揮官の呟きに呼応した、背後からの声に振り返ると、懐かしいファウンスの制服に身を包んだクロムが佇んでいた。流れるように指揮官から傘を譲り受ける動作は、完璧としか言いようがない。一分の隙もなくきっちりと白い制服を着こなしている姿は、彼の性根をありありと表しており、指揮官の頬が緩んだ。
「おや、遅くなると聞いていたのだが」
「ええ、その予定だったのですが
……
」
ひとつ傘の下、指揮官の頭の先から爪先までを見遣ったクロムの目が、すっと細められた。普段、クロムがあまり浮べない表情に戸惑った指揮官が、小首を傾げる。「いえ、」と小さく咳払いをしたクロムは、周囲に目線を走らせてから、自らと指揮官を守るように、傘を通路側へと僅かに傾けた。
「
……
今日という日に、お会いできたことが私にとって僥倖であるのですが、そんな日に君が、そのお姿で来られるとは思っていませんでした」
「ん、もっとラフな格好の方が良かったか
……
?」
「
……
そうでは、ありません」
傘の下、青い瞳が指揮官の瞳をまっすぐに捉えた。機械で出来ている、瞳孔を模した双眸に映るのは指揮官の姿のみで。黒い傘の中、響くクロムの声色は、優しさの中に、情を帯びて指揮官の耳を擽る。
「大変お似合いです。しかし
……
その姿を何人が目にされたのかと、私は今、顔も知らぬ相手へ狂おしい程の嫉妬をしているのです」
指揮官の頬に伸ばされたクロムの指先が、指揮官の下瞼をなぞった。しかしそれも、絶妙な角度で傾けられた傘が目隠しとなり、誰の目にも映らない。
「
……
その嫉妬、詳細を聞きたいな。食事の後、時間はあるか?」
「ええ。君の時間を私にいただけますか、指揮官」
ふっと笑んだ指揮官が、クロムの耳元へと唇を寄せたのと、鋼で出来ている肩が跳ねたのはほぼ同時であった。小さく笑い声をあげた指揮官に寄り添いながら、レストランの中にエスコートをするクロムの姿を見ていたのは、街をベールのように覆う小雨だけだった。
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