冬の曇天、数時間以内には雨になりそうな。
凍てつくまで行けない寒気を漕いでいけば、鉄板の上で熱されたケチャップの、甘くてあったかな、安っぽく幸せな匂いがする
「研究所のメシを思い出さねえか?
特別美味くもねえんだろうが、安心して食っていられて、一緒に食いながら話せる誰かがずっといたのは、俺にはあの時だけだった」
そうノスタルジーに浸ったふりして早い昼飯を奢らせる算段なのか、それとも本当に往時を思い出したのか言った男に、
「私はお前の赤い翼を思い出してたよ、よくケチャップでも描いてただろう、高校にも行けてただろういいトシして」
言いつつ隼人は薄青い吐息を吐いて応えた、まるでそこだけ凍えているかのように。
「ああそれなあ、俺は最初お前が空を飛ぶんじゃないかと、その担当だと思ってた」
ロボットがやたらスラっと細いから身軽そうだし、掻っ攫ってくるお前は元体操選手だって話だったし、
それにあれだろ、空の神様は「槍」を使うんじゃないかって
「それは翔にやってもらってるよ。赤い戦乙女さ。私は、俺は
―――」
「隼」人だろ、お前は
『撃たれた鳥のような 優雅さで雨に耐え』
お前にも似合う傷を歌う詩人がいたなと男は思う、けして口には出さない
もうすぐ雨が降る。
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