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走り込みシーンに石段があったので、近所に寺社はあったと推測
一杯やらねえか
お前がヒヨッコ達にするみたいに奢るんでも、俺が帰りのバス代計算しながら奢るんでもなく
この近くの神社前、年明けの参拝待ちのコンジョーある客あわせで、振る舞いの甘酒を出すっていうぜ
ふうん、私よりよく知ってるじゃないか、この界隈を
「ん?まあな」
小夜更けた頃のそんな会話の後、竜馬はぽりぽりと首の裏を掻き、
真っ黒な鏡と化した執務室の窓に映る元相棒のデスクワークの様子を伺った。お互い目は合わせないままに。
甘酒ってか、俺達はああいう「ほんのちょっぴり」もダメだったんだよなあ
緊急出動ともなれば、ゲットマシン機内では気圧の加減で血管が開く
だから祝い事、祭事のたぐい、なあにもう立派な大人だと笑顔で進められた金色の麦酒や小さな盃を
「すみません俺
―――ぼく達はあそこの研究所の飛行機に乗るから、少しでもアルコールが入っていると大事故に」
そう言い頭を下げれば、相手ははっとした表情になりとても痛ましそうな眼をした。まだ世界大戦の前に生まれ、記憶を持つ人間がどこにでもいた。
『甘酒かあ、久々に飲みてえな』
『俺はガキの頃にしか飲んでねえや』
『おいら学校給食にも出たぜ?』
三人での走り込みの時にもときおり通った石段は、そうだそんな寺社の入り口があったのだろう、早乙女健共助のほど近くにも。
『俺の記憶だとあれよりもっと牛乳っぽい甘い香りだった気がするんだ、風邪ひいた時に』
『ハヤトよう、それ子供用の甘酒じゃねえ甘酒なんじゃ?シャンメリーみたいな』
『えへへハヤトはお子様クチってか!』
「だから、行かねえか?」
ひよっこどもは飲めねえお前は乗れねえ俺は乗らねえ
だから二人だ
今夜は勧められても断らねえ、辛い顔にもさせねえ
「どうよ」
暗い鏡の奥の白い顔が、こちらを見るのを待つのに焦れて、竜馬は振り向く。彼を見る。たった二人だった、もうたった一人しか残っていない彼を。
あともう少しで日付が、年が、時代が変わってしまうその前に
「行こうぜ。」
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