akinoshiroihana
2025-02-10 20:06:10
15388文字
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名刺置き場9

ゲッターロボ用


火災報知器が、この施設内で起き得ることの中ではそれほどクリティカルではないです、とでもいうようにか、控えめに異変を告げる実験室にあったのは、

燃焼臭
飛び散った茶色い油汚れ
内部で何かが爆発して壁まで吹き飛んだ電磁波実験機
などの過去例のどれでもなかった。

「隼人ぉ、どうすりゃいいんだこれ」
「捨てちまえ」
でなきゃまともな代物の方が多いだろうから、自己責任でラウンジの置菓子にすりゃいいんだよ。食えりゃトラップ混入もまあ許すって連中はいるだろ
「自分のはやらねえくせに」
「俺のファンは変態が多いからだよ、それより」

あちこちの部署の、何人かいることにした副室長の肩書を持つ隼人は、パイロットスーツの上に白衣を纏えばそこの出入りがオールパスになる。ついでに入ったら「一切何も押すな触るないややっぱりあんた達は遠慮してください頼みます」と言われつつ、パイロットの残り二名もそれに乗じて。ビーカーでコーヒーを飲んだりマイクロ波実験機をいまだ珍しい電子レンジの代わりにしようとしたりして、敷島博士へのお使いを頼まれた背後で研究室のドアが固く閉まって、開錠ナンバーが総変更されるに至るまでがワンセットだ。『おーい隼人だいじょぶか生きてるか』『あの人達閉め出された側の自覚がないですね』

「今回は何をミスった」
「ゲッターの取材で『甘ったるいチョコみたいなモンはお断り』だっつったらよう、今どきは糞苦えのがいっぱいありやがんの、カカオ何%だかのが送られてきて」
「トカゲどもの相手してた頃でも、甘くねえ外国のチョコレートは入ってきてたぜ?」
「あーオランダとかの、甘くも苦くもウマくもねえ黄土色のな、武蔵がもうこれウンコだー!って騒いでやがった―――ってそれで食いやすくしようと溶かして甘くしようとしてよ、ビーカーを火にかけて黒コゲにはしねえで、ユセンでひっくり返しもしねえで、ここの電子レンジもどきには触らねえとこまでは良かったみたいだけど、いくら砂糖を入れても馴染まなくって、ただでさえウンコウンコ言われてた代物をコネコネしてたらますます得体の知れねえ物体になっていくんだこれが。もうめんどくせどころか心細えんで誰かわかる奴来てくれって火災報知器の通報ボタン押した」
「おい」
迷惑な奴なりの精一杯の変なお気遣いかよ、まったく
「わりい、でもだってよぉ」

毎度これを二人掛かりで何とかしたら、お前にもらえて俺からも贈れたことになってるじゃねえかと竜馬は頭の後ろを掻き掻き言う。
おいその手で実験素材に触んじゃねえぞ、手ぇ洗って来い、それで俺のデスクの二段目引き出しに買っといたホワイトチョコ持ってこい、と隼人は理科室の先生みたいなおふざけ禁止顔をして、そんななかなかふざけた指示を出す。カカオマスとカカオバター入ってる奴同士で溶かすんだよ、と。
「お前タイプのお子様は、クレヨンと蝋燭でカラー蝋燭作ろうとしても、色が濃かったら何も考えず水を入れて爆発させちまうんだろなあ……
怖いよ、などとすっかり長くなった髪を揺らして隼人は呟いた。

で、何作るよ作ってくれるよなになに
うーんそうだな、フォンダン・ショコラ

いいね。


(唇を丸めて、舌先を歯茎の裏にあてて発音した君の、僕のために菓子を選ぶしぐさ、それだけで。)



(了)