akinoshiroihana
2025-02-10 20:06:10
15388文字
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名刺置き場9

ゲッターロボ用



●五半


『早乙女研究所』から戻って半日、五右衛門が名張に向かうというので

「持っていけ」と半蔵が彼に小さな包みを持たせた
「お、なんじゃ手作り弁当か?」
「違う!」
小さいのにずしりとしたそれに五右衛門が脂下がれば、ぴしりとした返事があったあと、多分じき温うなるはずじゃ、とあった。
えっなんじゃその『冷たい』『すぐ熱くなるさ』ってエロシーンみたいなのはと思ったあたり、この五右衛門、「あちら」の世界でなにか破廉恥なものでも読んだのかもしれないがそれはさておき。

「隼人のな、知恵を借りた。こちらでも作れそうな手温めじゃ」
里の鍛冶屋の鉄粉と、錆びさせてはならんから普段は決して近付けぬ塩気それに『水』と『酸素』
これを混ぜて紙と袱紗で包んでおけば、いわゆる燃焼反応が起きる、『熱えねるぎー』になる

いわゆるベンジン懐炉ではなく、もう十数年すれば商品化される使い捨てカイロの理屈を神隼人は浅間山の寒風の中思い付いていて、この微睡みから目覚めたら仲間にも使わせようと考えていたという。
「へえ!」
五右衛門は面白そうに手の中の包みを転がした。
この時代には本来無いもの、オーパーツ

なお伊勢一向一揆の後、三日三晩の死んだふりをした彼は、焼き討ちされる修羅場の焼け石を布で巻いて暖を取ることを既に覚えていた
それは温石(おんじゃく)、百数十年程後に一般化する知恵
であるから、なにこういう物は、思いついた奴はもっと古くからもっといただろうぜとからからと笑う五右衛門に、半蔵も時折そういう禁を犯す

「まったく、こっそりズルをして遊びよる、相手の鼻を明かす小さな秘密が楽しいのかおかしいのかの」
珍しく鉄粉で真っ黒に汚れた白い手をはたき、半蔵は友の馳せ消えた、明け行く山の端を眺め、涼し気な目を細めた



隼人のバイクは「馬だと思え」扱いかもしれない


隼人の「あれ」は、そうだな
あの乗り回し方の巧みさと無茶さが、
いっそ馬にでも乗ってるみたいだと思うことがあるな
バイクの方でも自分は隼人の馬だと思ってるのかもしれない、とは文次の奴が言ってたよ、はは
一緒に戦うと馳せ参じてくれたときの、身体の線にぴったり沿ったライダースーツには嬉しさだけで済まないような高揚感や胸のたかなりさえあって
たしかに馬上の王子様みたいでもあるが、寂しい大きすぎる玉座に見えることもあったから
先日徐行まで速度を落として、ミチルさんを後ろに乗っけて研究所まで行ってたのには
驚いたし何だかいとおしくも嬉しかったよ


亡くした小さい妹の話を一度だけしてたっけ、あいつ
どこか長子長男っていうか、男として家父としての道徳と責任を勝手に背負って立ってるよなとこがあって
多分それは昨日今日じゃなくあいつが流竜馬になった日からそうなんじゃないかと思わせる不思議がある
だから長子が―――うちの姉さ……姉貴なんかがすぐでかいスーツケースを出して旅するように、必要になりそうなものは全部まとめて持っていたがるんじゃねえかな、あのサイドカーは、あの側車は。
あいつとしちゃあ初めての自分の車代わりだったんじゃないかとも思うよ、なんなら自腹で買ったのかもしれない
テーピングとか絆創膏とか勇気や気概やなんかを乗せとけるところをよ
まあ最近は九割方、武蔵に乗られちまってるが。

あいつのバイクに乗りたいかって?

は?俺が乗せてもらった事はないのかって?
よしてくれ、あいつに見下ろされて収まり処のねえ脚を畳んで膝を抱えてろっていうのかい、冗談じゃねえ
面白えことになったって、い~い笑顔のあいつに見下ろされてるのしか想像できねえや

ううん、それは、隼人が俺に任せてくれる場合ということだろうか
隼人が安全のためにも俺の腰にしっかり腕を回して一緒に来てくれるというなら俺は
えっ、別に同乗する話じゃないって?
あっ隼人、真っ赤になって何処へ行くんだ
ハヤトーハヤトー、隼人がまた無印の時並に飛び出して行ってしまった!