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さもゆ
2024-12-10 00:36:07
15199文字
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狂戦士
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【セルファル】ツイログ
以前投稿したものも一緒くたにしました。本当に好きです、この主従。41巻もいつか分かりませんがすごく楽しみです。
1…松明を怖がる従者と察する主。
2…従者は自分のものなのか疑うようになった主。
3…従者の傷の手当てを主がする話。
4…ちょっとした悪夢を見た従者。
5…幼少主従。
6…眠れない魔女さんと従者。
7…従者の涙と主。
8…海馬号で一時的に声の出なくなった従者と不安がる主の話。
2020.12.28 たまごのお粥pixiv投稿作品 (原文ママ)
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シールケ加入前、松明を怖がるセルピコとそれを察するネーゼ様の話。
忘れるものですか
言い訳をさせてくれるならば、夢見が悪かったのが原因なんでしょうね。これ。
夜の間にとっとと移動をしようということで、まあ、その夜の間というのが最も疲れ時ですから、それまで休息を兼ねて夕刻まで眠る。眠る行為はわりとわたしにとって得意の範疇だったから、そう、油断していたんですかね。まさか夢の中でまで疲れるなんて、思わないじゃないですか。もう、あまり、見ることはないと、見たくはないと、思ってたんですけど。
だって、ずるいじゃないですか。
ずるいんですよ。雪の冷たさを、炎の熱さを、共に握った松明の感触を、ぼくだけがいつまでも覚えているなんて。
いつまでも、いつまでも。夢の中でさえ、正確に過去をなぞって。
夢見が、悪かったんです。
脳の皺っていうんですか、なんかそんなところまで夢の残滓がこびりついて、手が、意思とは関係なく、震える。体は強ばり、変な汗まで出てきて、得意の笑みが、引き攣る。まあ、あなたの前での笑みなんて、あってないようなもんですが。
「
……
おい、セルピコ」
「なんです」
そういうふうに、いつまでも手を伸ばさないわたしに痺れを切らしたんでしょう、この大男ときたらこちらの異変を感じとって松明を揺らしてくる。ぱちり、火の粉が飛ぶ。危ないなあ、ぼくは取ってつけたようにそう笑って、顔を仰け反らせた。怖がっているのだろう。ぼくは、今、彼から受け取らなければならないこの松明を、怖がっている。
「なんです、じゃねえ。受け取れって言ってンだ」
「分かってますよ」
分かってはいるんですけど。
どうにも、体が、動かない。松明なんて、彼らの旅に加わってから、いや、騎士団にいた頃から何度も握ってきたのに。内心は怖がっても、笑顔、得意ですから。薄ら笑いさえ浮かべられていたのに、これはどういうことなんでしょうね。
「
……
極たまに、」揺らめく赤と、闇を見つめる。爆ぜる炎に記憶が重なる。「
……
あるでしょう。昔のことを思い出して、手も足も、出せなくなるときが」あなたにも。
呟きに、彼は押し黙った。考えることがあったのかもしれない。けれどそれはほんの一拍で、すぐに、ねえよ、という答えが降ってきた。そんなんになってたら、俺はとっくに死んでるさ。そんなひどいことを言われる。ひどいですねえ、口に出して笑いやる。何がひどいのか、こちらをちっとも慮りはしない口振りか、この男の壮絶な今までの歩みか、それはちょっとわたしにも分からなかったけれど。とにかく、ひどいなあ、と思って、がちがちに強ばった指先をなんとか解こうと手を上げる。その時、白い、手が。
この旅ですっかり働く者の手となった、ファルネーゼ様の手が、松明を掻っ攫っていった。
「ファルネーゼさま」
驚いたぼくの隣、あの頃とは似ても似つかない目をしたファルネーゼ様が、ぼくを見上げて松明を掲げる。
「わたしが代わりに、」
持ちますから。と、後半は小さな声で言った。
ぼくはまた驚いて、それはきっと相当な心の変化だったんでしょう、ぽかんと開いた自分の口から意図せずはくりと息が漏れ灯りを揺らしたので、よほど。
「
……
ファルネーゼさま」
わたしとガッツさんの応酬、まさか聞かれていたんですか、とか。いえ戦闘になったらあなたはキャスカさんを守る役割があるのだから、わたしの灯り係は無理でしょう、とか。そういうことを言うべき口は、主人の名を呼んだまま、中々動いてくれない。
そんなこと。
わたしが代わりに、などと、そんなこと、を、言えるように、なったんですね。
なんて言ったら、さすがに泣かれるだろうか。
ファルネーゼ様は小声で言ったくせに、炎で揺れる瞳はしかとぼくを見ている。
知らない瞳。
あの頃の雪の冷たさと炎の熱さと共に握った松明の感触を、忘れてはいない瞳。
けれど氷の檻に閉じ込められていた小さなお姫様は、もうすっかり、ぼくを置いて、溶かされていっているんだろう。ぼくはそれを、ひどいなァと思って、それでも彼女を守るのがぼくの全てだから、べつに、構わなかったのに。
彼女はどうやら、何度だって、この従者を拾い上げてくれるらしい。
「代わりは、無理ですよ」
だってぼくたちは同じものを背負っているのに。
そんな心のうちのことなんて何も知らないファルネーゼ様が、でも、とショックを受けた顔で言おうとする。ぼくはそれを遮るように、彼女の松明を握る手に、自分の手を重ねた。
「一緒に持って貰えます、ファルネーゼ様」
言うと、彼女はようやく、安心したように、ええと笑った。
一緒に持ってちゃ戦えねーだろ、黒い剣士殿の、冷静ないらえが入る。
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