mishiadd
2024-12-09 00:19:51
16040文字
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美食家饗宴美味礼讃

柳伊。DLC2でセイバーが席を外した途端に発生する宗矩殿と伊織殿のアダルト空間の「90~00年代BL風味BL未満少女漫画」の雰囲気が大好きなので…剣陣営は絶対不動の運命だけど成立してません(セコム気味)


《デザート》デセール

伊織は、色恋沙汰や情事を好まない。

そもそもあまり興味が持てないということもあるが、そうでなくとも吉原という町の目的自体には苦手意識があるし、助之進のように――彼のこと自体は大いに気に入っているが――鼻の下を伸ばしている男たちに共感した試しはなく、どちらかといえばそれらを女子供と共にたしなめる側にいつも回っている。

従って、男と女の駆け引き――という行為にも疎い。セイバーと出逢ったばかりの頃は、あまりの跳ねっ返りっぷりに苦々しさが勝り、駆け引きにも似た皮肉の応酬などもしてみたが――セイバーとの関係性が改善されるにつれ、伊織の他者への接し方としてより自然な誠意のある素直なやり取りが多くなった。――たまにたわいのない冗談なども交えることがあるが、それだけだ。



出逢った当初から、宗矩は言動に煽情的な色気の滲む男だった。



繰り返し伊織に好意を告げ、口説き、言い寄るような色気のある戯れの言葉を囁き続け――やがてその先にある死合いに誘う甘い声は、ようやく伊織に町娘の心持ちを少しだけ理解させた。――手慣れた遊び人に熱心に口説かれて、その気がないわけでもないのに口では「いや」とつれないふりをして駆け引きを楽しむ、あの町娘の。
相手が欲しがっていることを知っていて、自分も欲しがっていることを隠しながら、それでもちらちらと相手の目前に餌のようにちらつかせ、相手が掴もうとしたところでひらりと身を躱して弄ぶ。

――戯れとは意外にもそれなりに楽しいものなのだと、知らなくてよいことを知ってしまった。







納刀する伊織の姿を見て、「おや」と宗矩が大袈裟に驚いたような、しかしゆったりした声を上げた。
かちゃり、と鍔の鳴る音と共に、伊織が宗矩を見る。口許に穏やかな笑みを浮かべて、宗矩が言う。

「使ってくれているようで何より。――先日は、別の目貫をつけておられたようだったのでな。あれにはもう飽きてしまわれたかと」
「ああ。――日によって気分で付け替えているだけだ」

さらりと言う。「ほう」と目を細めた宗矩を、伊織がちらりと見る。「うん」と頷いたまま、特に何を言うでもない宗矩の目を、伊織がしばし眺めたあと――目を逸らし、軽く肩を竦めた。
急になにかに興味を失ったようなその顔に、「拙者がなにか見落としたかな?」と宗矩がゆったりと尋ねた。

宗矩から殊更に顔を背けたまま――大袈裟に機嫌を損ねたように振る舞う端正な横顔が、冷たい声で言った。

「言ったろう、日によって気分で付け替えているのだ。――存外気が利かないな、宗矩殿。貴殿は百戦錬磨かと思っていたが」
――ああ。……これは、大変な御無礼を」

うやうやしく言い、身を屈めて伊織の右手を取る。その仕草を冷たい目で伊織が見下ろす中、慇懃な身のこなしで宗矩が伊織の手の甲に軽く口づけた。

「せっかく伊織殿がかように御気分を示しておられたのに、それに気付けぬとはまったく、拙者はなんという粗忽者であったことか」
「いい。気が削がれた。――今日はもういい」
「どうか、そう言わずに。この埋め合わせはいかが致そうか、伊織殿」

わざとらしく、殊更情けない物言いでみっともなく追い縋るのを宗矩が愉しんでいる。伊織は伊織で、拗ねたふりをして冷たくあしらうのを愉しんでいる――ことを、うっすらと自覚する。

「どうかな。恥を忍んで貴殿に誘いをかけたのにこれでは」
「然り、然り。拙者を想ってくれた貴殿に恥をかかせてしまうなど、決してあってはならぬこと。償いとして、なんでも貴殿の望むようにいたそう。なにがお望みか?」
「わざわざ俺に言わせようとして貴殿は意地悪だな。わかっているくせに

ふふ、と伊織が口許に笑みを浮かべる。ひどく、ふしだらな――淫靡な、蠱惑的な、情欲にまみれたような、好色で美しい、傾国のような笑みだった。
まるで恥じらうように宗矩の耳元に唇を寄せ、早口で囁くように言った。

この間は所詮四人だっただろう? 貴殿と、貴殿の甥、師匠と俺。――次は、二人でやろう、宗矩殿。貴殿と、俺で」
――伊織殿」

宗矩が目を細めて伊織を見る。真っ直ぐに宗矩の目を見返した伊織の月夜の瞳が、うっとりと――貪食に溺れた色をして、ちらりと光った。

「貴殿も、貴殿の甥も、師匠も皆美味かった――だが、次は誰とも分け合わぬ。貴殿のことはまるごと全部、俺ひとりで喰らい尽くす――独り占めだ」

ぐう、と愛らしく腹が鳴るのを、宗矩は聞いた気がして――



およそ己の人生の中で、自分が喰われる側になることなどなかったがゆえに――






「それもまた面白い」と酔狂な笑みを浮かべて、伊織の口の端をそっと指先で拭ってやった。