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mishiadd
2024-12-09 00:19:51
16040文字
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美食家饗宴美味礼讃
柳伊。DLC2でセイバーが席を外した途端に発生する宗矩殿と伊織殿のアダルト空間の「90~00年代BL風味BL未満少女漫画」の雰囲気が大好きなので…剣陣営は絶対不動の運命だけど成立してません(セコム気味)
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《口直し》グラニテ
上野で出逢った
――
とはいえ、宗矩は「上野に紐づいている逸れ」というわけではないらしい。
もしかすると当初はそうだったのかもしれないが、霊核を砕かれてなお現界を保とうとした結果、そのよすがは土地ではなく今際の際に彼が執着した生者となった。即ち宮本伊織である。
であれば、セイバーとそう立場は変わらないのでは
――
などとまかり間違って誰かが言おうものならば烈火の如く怒り狂った日ノ本の大英霊の荒魂に浅草一帯が水浸しにされかねなかった。セイバーには、伊織本人にはそうそう言えないし言わないくせに、他の誰かに「イオリのサーヴァント」の立場を脅かされた途端牙を剥き出しにして唸り出すようなところがある。元狂犬には昔の気性の荒さなど過去のこととしてすっかり忘れてもらい、
ふわふわ毛並みのよい忠犬
として機嫌よく居てもらうことが一番である。
――
本人とて、大好きな
飼い主
へ闇雲に牙を剥いていた頃の自分などすっかり
忘れていた
方が幸せだろう。
というわけで、上野という土地に縛られているわけではない宗矩は、気ままに江戸中をふらふらしている。
助之進と各地の水茶屋を開拓する傍ら、ひとりで露店の様子などを覗き込んでは町の活気を喜び、ついでに場当たり的に気になるものなどを無秩序に
――
衝動的に
――
購入するなどしていた。
◆
宗矩が長屋を訪ねてくるときは、あらかじめ丁寧な文を寄越すときと前触れなしに突然やって来るときがある。それすらも伊織に対する
駆け引き
の一環であったのだが、伊織は気付かないふりをしてあしらう。
今回は「前触れなし」だった。「頼もう」と穏やかな声がして、引き戸が開く。畳の縁に腰かけていたセイバーがやおら立ち上がって警戒態勢に入ろうとしたところに、「セイバー殿。お気に召すとよいのだが」と団子を手渡した。
勇ましく眉を吊り上げた顔のまま団子を受け取り、セイバーがそのまま再び畳の縁に着席する。険しい顔のまま彼が団子にかぶりつき始めるのを確認してから、畳の上でちょうど刀の手入れをしようとしていた伊織へと近寄る。
「伊織殿。
――
お気に召すとよいのだが?」
そう言って手渡されたものを伊織が見遣る。小さな一組の金具だった。なんのことはない、目貫である。
――
月と桜をあしらった
、金細工の目貫。
ふうん、と目を眇めて己の手の上の
貢物
を見下ろしてから、ちらり、と目の前の男に伊織が目を遣る。ん、と屈託のなさそうな穏やかな笑みを浮かべた宗矩が、小さく小首を傾げてみせた。
「宗矩殿。これは?」
「先日は不躾な誘いで貴殿に無礼を働いてしまったのでな。その詫びである」
「
――
真意は?」
「勿論、つれない貴殿に贈り物をして貴殿の歓心を買いたいのだ、伊織殿」
素直な言の葉は誠意の演出であり、同時に
駆け引き
と
戯れ
の一環である。「ふうん、」と伊織が眇めた目で宗矩を眺め、それからおもむろに手にした刀の柄の柄巻きを解き始める。
おや、と片眉を跳ね上げた宗矩に、平坦な口調で伊織が言った。
「悪いが深い意味はないぞ、俺はそのへんで拾った目貫でも構わず使うのでな」
「存じている」
「ただ
――
そう。これは
誓約書
ということにするとしよう。
……
いつか貴殿が
すべてを俺にくれる
という、誓約書」
ちゃりん、と目釘に当てた目貫が鳴る。伊織の
――
色素の薄い、つややかな唇が弓なりに笑みを
象
かたど
る。ふ、と含み笑いと共に囁いた。「だいぶ
いい
な、宗矩殿。これはなかなか気に入った」。
満足げに目を細めた宗矩が、「お気に召したようでなにより」と甘い声で囁く。畳に片膝をつき、刀を手に胡坐をかいている伊織のかたちのよい顎を指先で軽くすくい上げた。
伊織の唇に触れるすれすれのところまで己の唇を近づけ、その直前でぴたりと止まる。「
――
うまくできた
褒美を
賜
たまわ
っても?」、と甘く掠れた声で囁いた。
伊織が少し考えるそぶりを見せる。やがて、「まあいいか」とでも思ったのか、「
こんなもの
が貴殿にとっての褒美になるというのが解せんが、どうぞ」とこともなげに言った。
「恐悦至極。
――
では」
宗矩の唇がまさに伊織の唇に触れようとした瞬間
――
「あああーーッ!!」と素っ頓狂な声が長屋の中に響き渡った。
「なにをっ
……
なにをしくさりおるのかヤギュウ!? イオリから今すぐ離れッ
……
イオリもなにをぼさっとしておるのだ、さっさと立ち上がって逃げよ!」
食べ終えたばかりの団子の串を畳の上にぶちまけたセイバーが慌てふためいた様子で伊織と宗矩の間に割って入り、伊織を背に庇って宗矩の喉元に蛇行剣の切っ先を突きつける。
肩を竦めた宗矩が軽く両手を挙げて身を引く。その喉元を蛇行剣の切っ先で捉えたまま、「イオリ、なにも妙なことはされておらぬな?」と心配そうな声で尋ねた。
「以前から思っておったのだが、こやつはきみへの接し方が
――
こう、
不適切
ではないか? 私は不快だぞ、イオリ。
……
きみが一言命じれば、私はこのままこやつの首を獲るが」
「セイバー、だめだ。
……
宗矩殿、今日のところは退いてくれ。
――
ちゃんと
覚えておく
から」
「ははは、セイバー殿にすっかり嫌われてしまったのでは敵わぬな。これは
偏
ひとえ
に拙者の不徳の致すところ。出直すとしよう」
退散退散、と嘯きながらゆったりと宗矩が長屋を出ていく。からからと引き戸が閉まると同時に宗矩の気配が消え失せると、ようやくセイバーが剣を下ろした。ふう、と肩で大きく息をつきながら、呆れたような顔でセイバーが伊織を見て、言った。
「きみ、本当に
抜けている
というか、ああいう手合いへの警戒心が薄すぎるぞ。
――
本当に、私がちゃんと見張ってやらなければ心許ないったら
……
」
「ああ、そうだな。
……
頼りにしているよ、セイバー」
「きみなあ」
セイバーが頬を膨らませ、肘で軽く伊織を小突いた。
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