🎄さときょ5億チャレンジ🎄

賢者の贈り物パターンを回避してさときょに5億掴ませよう!!!
聡狂オンラインイベント「聡いキミに狂わされ2」の展示でした
2024/12/8



 初めて足を踏み入れた中山競馬場はひとひとひと、とにかくひとが多すぎて、僕は若干狼狽えていたが、狂児は「有馬はすごいなー」と落ち着いたものだった。たぶん背がデカいからだろう。狂児の頭は他の人からひとつ飛び出ていて、まあそういうひとは狂児のほかにもちらほらいるのだが、それでもだいぶ息はしやすいに違いない。ちょっとだけうらめしく思いながら、僕は何とか投票用紙とえんぴつを確保した。
 指定席券の抽選には外れたが一般入場券を当てることができたので、僕らは有馬記念が開催される中山競馬場にのりこんでいる。どうせ行くなら近くで馬を見てみたかったのでそれはいいのだが、あまりに人が多くて、パドックと競技場を行き来するのは諦め、パドック中継をテレビで見ている。メインレース前からこの調子は、もしかしたら僕は馬やなくて人の頭しか見られへんかも……
「聡実くん、テレビ見える?肩車したろか」
「テレビは見えるけど。僕のこと肩車できるん」
「わかれへん。抱っこならいけるかも。やってみる?」
「ええわ。おとんか」
 僕には晴実がおんねんという意思表示で肩を押し付けると、狂児は簡単に僕の腰に手を回してぎゅうと引き寄せてくる。そういうとこやぞという思いが漏れないように奥歯を噛んで見上げた狂児は、むむむとパドック中継に見入っている。
 ちなみに事前の聞き取りによると、狂児は競馬はからきしということだった。
「わからんわけではないねんけど、俺個人やとわろてまうくらい勝たれへんねん。ナリタやのにほんまに勝たれへん」
「個人では……?」
「あってんいろいろ……
「ナリタやのに……?」
「昔いてん強いお馬さんが……名前がね、似てるから……
 狂児がむにゃむにゃ言っていた一方で、僕はといえばこのデートが競馬デビュー、ナリタブライアンを知らないくらいである。馬券の買い方は狂児に教えてもらったが、その狂児も知らん新しい買い方があるらしく、そういうのはだいぶ複雑だった。さらに識者によると、有馬記念はその年の総括みたいなものだから、今年一年の振り返りと過去のレースから分析してうんたらかんたら🤨🤔――このあたりから僕らは、有馬デートの本来の目的に立ち返ることにした。つまり、呪いの金をパーッと使うことだ。
 しかし、賭けるからには勝つつもりでやらないと面白みに欠けることも事前の練習によって判明したため、今日はお互いガチンコで勝負し、収支で負けた方が勝った方の言うことを一つ聞くということにしていた。そのため、馬券の買い方もそれぞれ異なる。
 狂児はめちゃくちゃこすい買い方をしていた。
「複勝しか買うてへんやん」
「いや~、複勝がいっちゃんええやろ。いうて聡実くんかて」
「何やねん」
「単勝だけ😂」
「うるさいです」
 1着から3着になるどれかを順不同で当てる複勝よりも1着に全部託す単勝の方が潔い、などというのは後付けで、僕には短時間で細かい予測が一切できないという才能のなさをカバーできるのが、資金力を活かした単勝買いだったのだ。
 事前予想は複数の新聞で確認し、自分でもめちゃくちゃ考えていた。なんならいろんな競馬場のメインレース1着をあてるWin5も、すでにネットで買ってみたりしていた。しかしだ。パドックで暴れ回ったり小走りだったり汗だくだったりの馬たちの様子を実際に見ると、記号でできた事前の予想なんか簡単に覆ってしまう。迷いが読みを狂わせ動揺が動揺を呼び、結局1Rからこっち僕はほぼトリガミ、なんなら今、嘘やろってくらい固いやつすら外した。次は行けると思い続けて気づけばもう11R、本日のメインレース、有馬記念――
「ほんまにわからへん」
 僕の呻きにンフフと笑う狂児はせっこい複勝転がしで順調に資金を増やしており、その余裕は長蛇の列にもかかわらずゲットしたソフトクリームに表れていた。僕にも同じソフトと、加えて焼きそばとフライドチキンが差し入れられる。
「ありがとうございます……
「ええヨン♪」
 狂児はさっさと投票を終えており、ソフトクリームをはむはむ唇で挟みながら、鼻歌なんかを歌い出している。
「聡実くんに何してもらおっかな〜♪」
「勝ったつもりでいられるのも今のうちやからな……
 とは言うものの、僕はここで大勝ちしないと狂児に勝てないのだ。しかも、単勝で大勝ちするには大博打に出なあかんやないか……
 敵から送られた塩をほおばりながら、僕は投票用紙をにらんだ。
 


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