つい先日訪れたばかりとはいえ、売り場に入るやいなや「来た!!探してたんです!」なんて言われると身構える。僕はなんも悪いことしてへんのに、こういうときいっつもデカい声出した方が勝ちなんが腹立つわ。腹立ちながら、ビクビクとこちらの腕を掴んできた店員を見た。え、何
……?
「お客様、たいっへんもうしわけないのですが!先日お買い上げいただいたライターを返品または交換いただけないでしょうか!?探されてるお客様がおりまして!!」
「あ、いや、そのつもりで
……」
「本当ですか!?大変助かります!!本日はなんとそのお客様もこちらにいらしております!!」
なんと って何
……?
一体何が起こるのかと待っていた僕の前に現れたのは、一般高齢者だった。詳しくは割愛するが、その一般高齢者は長年このライターを探し求めていたとかで、なんならもうこのために生きてるとかいないとか。ライター渡して祈願成就じゃーとか言って死なれたら困ると思っていると、見透かしたように「死なない死なない」とひらひら手を振られた。そして懐から何やら古めかしい懐中時計を取り出し、「きみ、そのライターくれたらこれあげますよ」と言う。
「いや、僕はお金返してもらえればそれで
……」
「ご返金は店からいたしますよ!!」
「これもとっておきなさいよ。結構いい値段で売れるから」
何やねんこれは。そんな話あるかと思ったが、返金は粛々と進み、時計の贈呈も断れず、そして何のどんでん返しもなく、僕は普通に帰途についている。こいつをどうしようかと、ナマで渡された懐中時計を目の高さに持ち上げると、その古めかしいフォルムのとなりにちょうど、大手チェーンの質屋の看板が並んだ。
こんなん使わへんしなあと思案する。なんか気味悪いし。
「売っていい言うてはったしな
……」
プレゼントの選択肢が増えるかもと思い、僕はその時計を質屋に持ち込んだ。
入店時はうちブランド品しか買い取らないんですけど〜と顔に書いてあった店主だったが、僕の持ち込んだ時計を開いたり閉じたりひっくり返したりしているうちに、だんだん真剣な表情になり、最後には「20万円」と言った。「え?」
「20万円です」
「ドッキリですか」
「いや違うけど
……」
……ドッキリやなかったら何?犯罪?知らん人から物もらったりしたあかんかった?あかんな
……。法的に何か問題あったかな?法律
……あっもう、僕ちょっと忘れとるし
……
帰宅するなり狂児に謝罪した。「ごめんなさい狂児さん」
「おかえっなに?どうしたの」
「僕なんかに巻き込まれてるかもわからん」
「待って待って。何!?」
僕は識者にあらいざらい説明した。顎に手をやって僕の話をふんふんと聞いていた狂児は、うーんとひとつ唸ってから、「平気やろ」
「ほんまに?こんなことある
……?」
「ちょっとその時計見せて〜」
「売った」
「売却済み
……」
心配やったら一緒にお店行こかという助言に内心ダーダー涙を流しながら翌日百貨店に赴くと、半分予想はしていたが、ポップアップストアは撤収されてしまっていた。
「
………………」
「あらら」
「
………………」
「買い取った質屋も大手チェーンやし、平気よ聡実くん。ただのラッキーやで」
僕は狂児を見上げた。「すみません」
「何が???」
「僕は禁煙してる狂児さんにライター買うたばかりか、汚れとるかもわからん金で狂児さんのプレゼントを買います
……」
「買うてくれるんや😂」
僕の懺悔を笑いよった後、狂児は少し考えた。「プレゼントはさあ、めーっちゃ楽しみにしてるよ。聡実くんの元々の予算で」
「
……ですよね。この金、汚れてなくても呪われとるもしれへんし
……」
「ほんならその呪いの20万でデートとかどお?」
パーっと使てしまおうやといいながらパーっと手を広げてみせる。
確かに、モノに変えて呪いの連鎖を生むよりは、コト消費にしたほうが気が楽かもしれない。
狂児のおかげで少し気が楽になった僕は、20万の可処分所得があったらやってみたかったことを思い浮かべた。
「僕、競馬行ってみたいです」
競馬行こ!🏇