クリスマス当日。デパ地下で二人で選んだお惣菜を食べ、冷蔵庫にはケーキ。僕らがやるとやっぱりなんだか嘘みたいな光景だと思いながら、僕はプレゼントを取り出した。
再度、再再度、再々再度の熟考ののち、でーっかい電気の鍋を選んだ。深い鍋と鉄板と、ついでにたこ焼きプレートもついているやつ。まあまあええ値段のするやつ。値段はともかくクリスマスプレゼントにしては所帯染みすぎている気もしたが、僕は僕なりの絵を描いていた。
まず、クリスマスのつぎには大晦日がくる。同僚の実家では大晦日にはすき焼きを食べると聞いたので、僕たちもぜひそれを試してみたかった。お正月はおせちに飽きたらお鍋を食べられるし、夏になったら餃子を皮から作って焼きたい。たこ焼きも焼きそばも作る。秋はコンビニよりもはやくおでんを煮込み、まだ暑いなか汗だくでそれを食べ、猫舌の狂児を笑ってやる。二人がどんなに忙しくても鍋なら簡単に栄養が取れるし、そうしてなんとか繁忙期を超えて、またクリスマスを迎えたい。なんか、めっちゃ嘘みたいやけど。その次も。その次も。
そのくらいしたら多分もう嘘やないと思うんです。
そう言ったら、狂児は唇をむにゃむにゃさせ、ちょっと泣きそうな顔になった。伝染するから止めてほしい。
「胃袋鍛えなな」
「禁煙して食欲増したやろ」
「それよむしろ。俺このままやとでかなってまう」
「別にいいけど
……そしたら、一緒に走りましょう」
「
……ン、ありがとう」
ふっと小さく息を吐く狂児の笑顔を見て、僕は胸が苦しくなった。
狂児は僕に、本当に全部くれた。だから僕も狂児になんでもあげたい。あげたいけど、僕にはまだドンピシャなものがわからない。早く早く、早く見つけないと。僕はいつでもじんわり焦っている。頭では、さっき自分で言ったみたいに、ゆっくり積み上げていくべきものだってわかっているのに。
僕の顔を見た狂児は明るい声で「俺のも見て~」と言い、ゴソゴソ包みを取り出した。ちょうど僕のと同じくらいの大きさの箱を前にして、今度は神妙な顔を作り、口を覆うように指を組んだ。「聡実くん」
「
……何」
「何が出てきても驚かんといてね」
「こわ
……」
若干緊張しながら、差し出されたプレゼントの包装紙の端っこを摘まむ。テープをはがしてちょっと開けた、だけで、僕は「へ」と間抜けな声を上げてしまった。
「嘘やん」
「ほんまやねんこれが」
「そんなことある?」
「あんねんな~これが」
僕らが用意したのは全く、全く同じ鍋だった。色も型番も何もかも全くだ。
僕はまだびっくりしていたが、狂児はもう笑い始めている。おかしさのなかに照れが混ざっているような声。
「俺は聡実くんにい~~っぱい食べてほしかってんけど。
……あ~あかん、さっきの聡実くんのプロポーズに勝たれへんわ全然」
「
……プロポーズちゃうし」
「ちゃうの!?」
ちゃう。ちゃうと思う。それはもっと、違うものと一緒に言う。なにかドンピシャの
――いや。
思い直して言葉を変えた。
「ありがとう。一生いっぱい食べるわ。狂児さんと」
自分で煽ってきたくせに狂児は一瞬動きを止める。その顔を見て、僕は狂児がめちゃくちゃ好きだと思い、めちゃくちゃ好きな狂児と向かい合ってこんなことをしていることに、改めてびっくりした。僕らがやるとほんまに嘘みたいやけど、僕らがやると嘘みたいなことが全然起こるのだと思うとおかしかった。
「
……プロポーズちゃう?」
「ふふ」
卓に手を付いて身を乗り出す。
鍋はどっちも返品せずに、代わりばんこに使うことにした。
*💖5億なくてもHappy End💖*
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