けーだい
2024-11-25 00:19:45
73340文字
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レヴナントの褒賞

下記の要素を含みます。苦手な方は読まないでください。
・一部原作キャラクター(以下「キャラ」)が故人の設定
・キャラの死亡描写
・キャラの身体の分離、欠損描写
・魔物、キャラの殺傷描写
・キャラの自殺願望に関する描写
また、他注意事項として
・リンゼルに子供がいる設定
・リンゼルの絡みがほとんど無い
・(カップリングではない)リンクと他キャラ、またはモブとの会話がメイン
となっています。大変好みの分かれる話ですのでこの他にも心配なことがある方は読まないことを推奨します。
だいぶエロ以外のセンシティブ要素がてんこ盛りですが、書いた人間としては死によって救われるのではなく救われたから終わる、そういう話にしたいと思ってはいます(できてるとは言っていない)。そういうのが好きな人向けです。
リンゼルオンリーにこれを持ち込もうとしている狂気。

プロローグ


 時の神殿でふたりきりの式を挙げた。ドレスもブーケもない、ハイラルの盟主としては随分簡素な式だった。

 苔生こけむした女神像の足元に並んで立つ。神父さえいない式は、俺達がそれぞれ誓いを立てれば終わってしまうあっさりしたものだ。まだ制度として結婚を認めるような「法」を作る段階にはなくて、未だに自分達が共に生きていくことを女神に誓うのが主流だった。
 だからこそ、躊躇う。ゼルダの伴侶に選んで貰えた喜びは確かにあるけれど、本当にそれでいいのか、この期に及んで心が迷った。口を開かない俺を心配そうにゼルダが覗き込んでくる。その森のような翠に不安の色は見えなくて、よほど俺より俺を信じてくれているようだった。
 変えるつもりのなかった関係を変えようとなって初めて、俺は、俺にとって唯一の障害を彼女に打ち明けた。彼女が龍になるなんてことがなければ、そして彼女がこうなることを望まなければ、一生言うことはなかっただろう秘密。それを聞いた彼女は落ち着いた雰囲気で「やっぱり」と口にした。
 彼女は俺の秘密なんてもうとっくに察していて、その上で俺を選んでくれている。そのことが堪らなく嬉しくて、だからこそ、彼女の未来を歪めてしまうかもしれない自分が怖かった。その恐怖は、多分これからずっと抱えていくことになるんだろう。俺だけが苦しむならこんなに迷う事もなかった。けれど結婚するなら、家族になるのなら、俺の問題は彼女の問題にもなる。
「本当に……俺でいいの」
「貴方がいいんです」
 すぐに返ってきた返事は揺るぎなかった。強い意志を宿した瞳が真っ直ぐに俺を見つめている。こうなったゼルダは梃子でも動かないと、俺は知っている。
 視線を伏せ、深く息を吐く。肺の奥底、全てを吐き出して、ようやく息を大きく吸った。再び顔を上げて彼女に向き直る。俺が誓いたい相手は石像に宿る女神ではなく、目の前の彼女をおいて他にいなかった。
「私、リンクは――病める時も健やかなる時も、妻ゼルダを支え、生涯愛することを誓います」
 彼女は揺るがない。俺も、もう躊躇わない。だからせめて、彼女が後悔しないよう、俺にできることは全てやろうと決めたのだ。

 それから、
 ――それから。

       *

 久し振りに訪れたそこは蔦に覆われ、日の光もまばらにしか射し込まない鬱蒼としたもりと化している。
 彼女が以前綺麗に修繕したいと言っていたが、ここは人々の生活圏からは離れているせいで結局手つかずのままだった。忘れ去られてしまった建物は、それでも朽ちることなく、ただそこにある。
 聳える巨大な像を見上げた。懐かしさと共に、ほんの少しの苦さが胸に広がって、ぽつりと口をついて出る。
「これで……よかったのかな」
 女神は応えない。ただ、そこにあるだけだった。