さもゆ
2024-11-15 22:32:32
35495文字
Public BF
 

【BF腐】もったいないまとめ

全部ちぎれちぎれの雑多、ワンシーン、落書きなので、私のためのまとめみたいなもんです…。なんでもいい、って人しか見ちゃ駄目。

2019.10.2 たまごのお粥pixiv投稿作品


2019.0704



モブ+Aというかアッシュって秘密結社とかに勧誘されそうだなって



秘密結社勧誘







「レイプ魔を見るような目だね」
「違うのか?」
「自分のケツかペニスにでも訊いてみるといい」
 男がニヤリと笑って、ベッド前の椅子に腰掛けた。

 アッシュは縛られた後ろ手で腰のあたりを探る。銃は──ない。脚と腕を拘束しているのは縄で、引きちぎれるものでも引き抜けるものでもなかった。部屋に扉はひとつ、窓はない。自分の転がされている簡易ベッド、隅にテーブル、椅子に──三十代半ばの、髪も目も暗色の男が座っている。
「あんた誰だ」
 特にこれといった印象のない男だった。ゴルツィネの手先にしては威圧感がなく、ギャングにしては敵対心がない。そして、レイプ魔か誘拐犯にしては理性的に見えた。
 だが味方ではない。アッシュをここに連れてきたのがこいつかは分からないが、そうでなくとも縛られた人間に対して悠長に構えすぎている。まともではないだろう。
「俺に一体、何するつもりで?」
 転がったまま訊くと、男は同情するように眉を下げた。
「きみは……、さっきの発言といい、いつもそうなんだな」
「何?」
「誰にでも犯されると思っている」
「誰にでも犯されてきたからな」
「かわいそうに」
 ぴくりと自分の目尻が痙攣したのを感じた。
 同情する表情のわりに、温度のない返しだった。アッシュは鼻で笑う。「あんたは違うの?」──違う、と思った。嬉しくないことに、この人生で相手がどういう欲を持っているか、大体分かるようになってしまっている。支配欲、加虐欲、独占欲、情欲……そのどれもに、この男は当てはまらない。アッシュを危険視しているふうでもない。
 背中に冷たい汗が浮かんだ。なのに自分は縛られている。不気味でさえあった。
「誤解が……あるな」男が言葉を選ぶように唇を湿らせる。「きみの世界にいる人間が、全て、きみを陥れようと動いてきたならば……」暗色の瞳の中に瞬く色があった。「……きみの世界の外側の人間は、きみを陥れないだろう。俺はどっちだろうな、きみの世界の内側か、外側か」それが何色であるかは、虹彩が暗すぎてよく分からず、黒目と評されている日本人の瞳がどれだけ色彩豊かかを知らされた。
 英二。
 あいつ、どうしているだろう。アッシュは強く思い、そして、男を睨みつけた。
「俺をどうこうしようってんなら、あんたは内側の人間だよ」
「俺はきみを襲わないよ。もとから、人間に性的魅力を感じないんだ」
「無性愛者? それとも、特殊性癖?」
「なんにでも名前をつけたがる人がつけたら、そんな感じだろうね」
「あんたの話はまどろっこしい」
「どうすれば?」
「これを外せ」
 肩を揺すり、両足首を突き出すと、男はなるほどと頷く。「そうしたら、きみの世界の外側の人間だと信じてもらえる?」「ああ」
 男はポケットからナイフを取り出すと、「失礼」まず脚の拘束を削り出した。「しまった、もっと細いのにすれば良かった」縄がぎしぎし軋んでいる。
 アッシュは大人しくその時を待ちながら、思案を巡らしていた。この男は何者だろう。言葉からして、自分を拘束し攫ってきたのはこいつで間違いない。そもそも、……攫われた時、俺は何をしていた? どこにいた? 覚えていない。最後の記憶は、あの59丁目の部屋から英二に「行ってきます」と(いつの間にやらその挨拶がルール化された)声かけて──それから? 分からない。確か、あの日は、マックスから頼んだ情報を受け取ろうと……
 アッシュはもう一度部屋の中に視線を走らせた。時間を示すようなものはなかった。くそ、心の中で呟き、なんにせよ、分かることは必ずあの部屋に戻って英二に「ただいま」と言わなければ、何かとても良くないことになる、ということだ。
 ぶつり、脚の拘束が解かれた。
「悪いね。うつ伏せになってくれる?」
 アッシュは言われた通りにした。腕に男の手が触れる。人形のように温度がなかった。自分と同じ体温だからかもしれない。
「少し痛いかも」
 男が力を入れると縄が食い込んで肌を擦り、ベッドを軋ませた。じわじわと総毛立ち、背筋を冷たくさせ、それを悟らせまいと奥歯を噛む。こいつがそうなら、とっくにレイプされているだろう。ひとまずその心配はない、大丈夫、大丈夫だ……
 ぶつん。
「できたよ」
 その時はきた。男が離れ、アッシュは慎重に身を起こし、相変わらずなんの敵意も見受けられないことに少し気後れしたものの、行動に移す。「さっきの話、」足を振り上げた。
「俺を攫った時点で、あんたは内側の人間だ。犯罪野郎」
 顎を蹴り上げ、椅子ごと引っくり返った男から離れたナイフを拾う。距離を取った。派手な音だったが、男は呻き声ひとつ漏らさなかった。
 土台がベッドだったせいで入りが甘かったのだろう、気絶していない男は蹲って顔を抑えている。おもむろにこちらを見る。アッシュはナイフを構え、見下ろし、黒か茶色か紫か濃緑か、痛みで滲んでいる両目から、ふいと視線を逸らした。
 そして部屋を出た。

 どこぞの精神病棟を彷彿とさせる。
 地下、だろうか。ことごとく窓はなく、かといって天井の照明は明るいわけでもない、扉が一定についている廊下。そこを駆けながら、響く足音に眉をひそめた。あの男以外の人間はいないのだろうか。試しにドアノブを捻ってみるものの、開きはしないし反応もない。「くそ」今度こそ声に出した。
 人の気配を微塵も感じられないのをいいことに、アッシュは猛然と駆け抜けていった。やがて、廊下の奥に、上り階段を見つけたため周囲を確認して上がっていく。
 天井にぶち当たった。扉だ。やはりここは地下なのだ。一般的な民家じゃないことは確かだった。
 薄暗がりのなか天井を弄り、レバーのようなものに指先が触れるとそれを捻り押し上げる。僅かに開いた隙間から光が漏れ、目で見て音を聞いた。視界の端にソファの脚が見えるも、物音はなかった。においも、おかしなものはない。人ひとり出られるまでに広げ、アッシュはそこから上半身をあらわにした。
「きみは十七歳だろう?」
 頭上に影が迫る。ぎょっとして振り返り、頬にぽたりと降ってきた液体に顔を顰め、同時にナイフを突き出した。
 切っ先を交わした男は覆い被さる体勢をやめ、立ち上がった。下唇が真っ赤に濡れている。数回拭ったのか、袖も赤く染まっている。
 アッシュは地下から抜け出すと、ナイフを向けたまま、二歩下がった。先回りできる経路があるということは、だいぶ厄介だ。顔に落ちた男の血を拭う。自分と同じで、血は赤く、熱い。
「痛みを感じないわけ?」
「いいや、すごく痛い。歯は折れてないけど、折れたかと思った」
「それで、何?」
 歳を確認した理由はなんだ。
 アッシュは自分に薄ら寒くなった。会話を試みようとする己が理解不能だった。だって、……それでもまだ、男には危害を加えようという意思がない。隠しているわけじゃなく、本当にないのだ。彼が、まさか、あらゆる気配を消せるアッシュの師と同職なわけがあるまい。
 一般人。その辺を歩く、群衆の一人。ただ、何かが、どこかが、おかしい。
「俺は、三十六なんだけれど」
 声も落ち着いている。
「十代の頃は、そんな歳になったって、何も変わらないと思ってたんだ」
「変わったのか? よくある話だ」
「そう。よくあることが、俺にも起こった。歳を取るにつれ──体力が、知力が、好奇心が、想像力が、緩やかに保身に走っていった」
 声がワントーン跳ね上がった。
「でもきみは、十七歳だろ? なあ、想像してみろよ、想像するんだ」
 ぼたぼたと口から血液が零れていく。
「きみはここに来る前、自分が何をしていたか覚えているかな? なんのために俺と今、話していると? 分からないだろう、説明してないんだから。でも想像することはできる……あらゆる可能性だ」
 まだらに赤く濡れた歯を見せて、ニヤリと笑った。
「きみが反抗する度、きみの大事な人が、どうにかなってしまうかもしれない。たとえば、きみの仲間、偽の父親、その妻子、あとは……きみの帰りを待つ、日本人とか。想像してみろよ、可能性の話だぜ。だってきみは何も分からないんだから。どうかな?」
 男は浮ついた足取りで歩み寄ってきた。反応に遅れたアッシュが後ずさるより早くナイフを持つ手を握り込み、それから、意気揚々と告げる。
「俺と手を組まないか? きみの世界を変えてやる」