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さもゆ
2024-11-15 22:32:32
35495文字
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BF
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【BF腐】もったいないまとめ
全部ちぎれちぎれの雑多、ワンシーン、落書きなので、私のためのまとめみたいなもんです…。なんでもいい、って人しか見ちゃ駄目。
2019.10.2 たまごのお粥pixiv投稿作品
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2019.0313
A英。診断メーカーのお題より。悪魔と人間で、つき合ってなくて、甘々な雰囲気の
……
、???
悪魔と人間
この町には悪魔が憑いている。
という噂はひとたび人の口にあがればあっという間に町中を駆け巡り、様々な尾ヒレをつけられて神父のもとまで届いた。
曰く、耳まで避けた口を持つ金色の猫がいるだとか。
見る者を破滅へと導く翡翠の目を持った子供がいるだとか。
その悪魔に襲われたくなければ教会で祈るしかないだとか。
どう考えてもあまりに空想的でおかしな妄想が入り混じった噂だったが、英二はまあ仕方ないよなあと耳に入った噂話を右から左へ受け流す朗らかさだった。悪魔というのは恐ろしい生き物であるし、悪魔に憑りつかれ心身を滅ぼされた人間の話はどこにでもあるし、なんだかよく分からないがそうだと一旦考えたら思考が飛躍してしまうのが人間であるし、とかく、英二は噂の真相を訊きに来た子供たちにやんわり笑いかける。
「その噂は、真実じゃないよ」
お祈りついでに今子供たちの間で話題に上る悪魔の話をしにきた彼らは、膝を屈めた英二に唇を尖らせた。いかにも不服そうである。「ほんとに? 神父様。みんな言ってるのに」英二はううんと顎に手をやった。
「僕はここで悪魔を見たことがないんだよ。それに」
「それに?」
「こんな寂れた教会の神父を取って食うほど、悪魔も暇じゃないんじゃないかな」
子供らはぽかんとした。「神父様が
……
そんなこと言っていいの?」言われた英二は、寂れた(十字架像は磨いても磨いても錆が目立つのだ)教会内をそろりと見回し、口元に人差し指をしぃっと押し当てた。「今言ったことは内緒ね。アッシュに怒られちゃう」子供たちは顔を見合わせ、ニヤリと笑ったり真剣に頷いたりして「分かった」と言った。数人分かっていないだろうな。英二はあははと笑う。
この町に悪魔はいないって神父様から聞いた、と恐らく帰ってから親に話すであろう小さな子たちを見送り、英二は十字架像の前に佇む。町の小さな寂れた教会に見合う、けれど英二の大切な人がぴかぴかに磨いてくれた聖なる印だった。
「
……
きれいだな」
悪魔が憑いているなんていう話は、一体どこから出たのか。
英二は考えて少々頭が痛くなった。そろそろこの噂話を右から左に聞き流しておくのも居た堪れないような気がしてくる。というのも、英二は噂の真相を知っていたからだ。何が真実で、虚構か、更には噂を流した人物がなんのためにそうしたのかも誤解なく知っていたので、どうしたもんかなあと様子を見ていたのである。
「神父様」
開け放っている扉から声をかけてきたのは、一人の男だった。険しい顔つきをしていて、いかにも神様に縋りたい様子に見える。
「どうしました」英二は男に歩み寄り、穏やかに眉を下げた。
「最近噂になっている、悪魔のことなんだが」男は英二に駆け寄り、この静かな二人しかいない教会で他の誰にも聞こえないよう声を何倍にも落とした。
「神父様、あんたのために言うが」
「はい」
「あんたのとこで働いてる美丈夫がいるだろう」
「アッシュのことですか」
「あいつは悪魔だよ」
英二は驚いた顔をした。「何を言うんです」男は更に声を潜め、早口で言う。「あの男は教会で仕えてるふりして、裏では人を殺してるんだ。あいつがここに流れてくる前に住んでたっていう町の住人から聞いた。間違いねえ、悪魔だよ。あんたも聞いてるんだろ? 最近噂になってる悪魔の話! とんでもねえ綺麗な面は、そういうことだったんだ。ありゃ人を誑かす、バケモンだよ。この間だってあいつに懸想した奴が
――
」ぎぃい、と何かが大きく軋んだ音を発した。
男が振り返る。「なんだ
……
?」英二もそちらを向いた。
ぎぃぎぃ、ぎしぎし。
会衆席からだった。男が後退る。すると、バチンッと二人の前で一つの長椅子の装飾金具が弾け飛んだ。「なッ
――
」そして悲鳴を上げる間もなく、長椅子が浮き上がり男に迫った。足を縺れさせ、倒れ込んだ男を下敷きにする。「神父様ッ」他の椅子も浮き上がった。英二は後退し、次々と長椅子がひとりでに男の上へ積み上がるのを口を引き結んで見ていた。
やがて静寂が訪れる。呻き声もなかった。死んではいないはずだ。
「
……
寂れた教会だから、椅子の管理がなってなくて
……
」
「俺の大工仕事が悪いっていうの」
言い訳のように漏らした言葉に、出入り口から楽し気な声が返ってくる。
教会の真ん中に積まれた椅子群から離れ、見ると、いつの間にか入って来ていたアッシュが英二に歩み寄ってきていた。金髪頭をかき、翡翠の瞳は弧を描いている。「アッシュ!」英二はきっと眦を釣り上げた。
「君って奴は! いっつもそうだ、僕に黙って勝手なことして、」
「落ち着けよ」
「落ち着いてる! 落ち着いて君に怒ってるんだッ」
地団駄を踏み拳を握り締める英二の前まで急ぐでもなくやってきたアッシュは、英二の黒髪に手を伸ばした。ニヤリと笑う。
「ツノが出てるぜ、オニイチャン」
英二はぎょっとして自分の頭を覆った。手に当たるのは、歪で硬い二つのツノ。悪魔の象徴だった。出しているつもりはなかったのに。慌てて引っ込めようとするが未だに憤りが治まらず、手で隠したままじとりとアッシュを睨みつける。
「あの男が君のこと悪く言うから
……
」
「それで椅子を? 熱烈だな」
「もとはと言えば君が悪い」
「なんでだよ。寂れた教会を繁盛させてやろうと噂してやったんだぜ」
それは半分本当なのだろう。ではもう半分は何かというと、きっと英二が何かの拍子に悪魔だとバレないようにだ。噂の真相はここだった。彼はいつも、悪魔の英二のために悪魔より賢く手段を選ばず行動してくれる人間だった。英二はちゃんと知っていた。その好意に頼り、結果的に台無しにしてしまった自分を情けなく思わないでもなかったが、それより何よりアッシュが自身を陥れるやり方は、つい力を出してしまうほど嫌だったのだ。
英二は深々と溜め息を吐いた。
「君って僕より面倒くさいよ」
「悪魔なのに神父やってる英二に言われたくない」
アッシュが小憎たらしい笑みで肩を竦めた。
この町には悪魔が憑いている。
黒い髪に、黒い大きな瞳、黒い神父服を着た童顔の男なのだが、それを悪魔だと知っているのは、ただ一人。
アッシュ・リンクスという人間だけだった。
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