さもゆ
2024-11-15 22:32:32
35495文字
Public BF
 

【BF腐】もったいないまとめ

全部ちぎれちぎれの雑多、ワンシーン、落書きなので、私のためのまとめみたいなもんです…。なんでもいい、って人しか見ちゃ駄目。

2019.10.2 たまごのお粥pixiv投稿作品

2019.0128



A英、愛をつくるやり方でやろうよ






「やり方が、分からない」
 途方に暮れた顔つきでそう言うのは彼の搾取され切り刻まれてきた過去から考えれば当然だし、言われた僕が絶対に彼を愛と幸せで満たしてやるんだと決意するのも当然だった。僕は裸の上半身を持ち上げ、同じ格好のアッシュをぎゅうと抱き締めた。
「じゃあ、僕が、やる」
……は?」
「fuckじゃない、make loveのやり方で、僕が、やる」
「お前……
 アッシュが鳩に豆鉄砲みたいな顔で体を離し、僕を見る。
「したことあんの? お前が?」
 言い方には目を瞑るとして、僕は自信ありげに胸を張り、快活に「No!」と答えてみせた。



 僕とアッシュはお互いに対して自他共に認める愛情を持っている。でもまさか、それが性的な意味を持って接触するような愛だとは、たぶん、誰も思わなかったはずだ。だって僕とアッシュでさえ考えなかった。傍にいるだけで、心が通い合っているだけで、充分だってお互い思ってたんだ。
 それが何故か、でもきっと超自然的に、手を繋ぐ距離になって、キスをする距離になっていった。心だけじゃ足りないと体の方が訴えていたのだ。
 それにとても狼狽えたのがアッシュだった。そりゃそうだろう。彼はその一般的で何もおかしくない、愛する人に対する欲望を持つのを汚らわしく思ってしまうほど、性行為に対していい思い出も体験もないのだから。
 それでも目が合った時とか、お風呂上がりの時とか、どっちかがむくれてる時とか、ふとした瞬間にキスをして、抱き締めあって、暫くその状態のままじっとしていたりするのだけれど。
 今日は違った。
 寝る前だった。
 別々のベッドがあるけど最近は二人で一つのベッドを使っている。そこでおやすみのキスをして、ちょっと深めにちゅうっとキスをして、それからアッシュの緑色の瞳が今までにないくらいゆらゆら燃えるように揺れていたから、僕は、ああ今からキス以上のことをするのかな、なんて嬉しいような泣きたいような気になって、パジャマの上を脱がされるのに身を任せていた。
 もともと上は着ていないアッシュに押し倒されて、腹や胸や顔中にキスを落とされて、そして。
 彼は迷子みたいに途方に暮れた顔と声で言ったのだ。
 やり方が、分からない、と。



 僕はうんと大きく頷いた。
「任せてよアッシュ、僕は確かに完璧なる童貞だけど、だからこそ慎重にできると思うんだ。大丈夫、絶対痛くしないし嫌だったらやめるし、何か気に障ったらぶっ飛ばしてくれていい」
「いや、……いや、お前、」
……分かるよ。ここまでして、やんなくてもいいんじゃないかってことくらい。僕はきみが僕と一緒に生きてくれるだけで、とっても幸せだもの」
「それは俺もだけど、そうじゃなくて、」 
「でもさ、僕やっぱり、きみと触れ合いたいって……思っちゃうんだよ、ごめん、ほんとに」
「おい謝るな、俺だって同じだ、そうじゃなくて」
 がしりと肩を掴まれ、「英二お前、……」何かを言おうと口を開けるが、僕の真剣極めた目を見てアッシュは押し黙った。もしかして自分はとんでもないことを宣ったのかもしれないと不安になったが、申し訳ないけど本心だから取り消すことなどできない。
「幸せなさ、えっちができたら、すごく幸せになれるよ、たぶん。やったことないけど、でも幸せにする、絶対にだ」
 語彙が乏しいことは勘弁願いたい。
 僕はじいっと彼の瞳を見つめる。アッシュの困り顔を見て、ハッとなった。とんでもないどころか、彼のトラウマを突くようなことを、言ったんじゃないのか? そういうことがしたいと明言するのは、不快なことだったのではないだろうか。
「あの、アッシュ、嫌な気持ちにさせたのなら――
「分かった」
「ごめ、え?」
「俺に、教えてくれる? オニイチャン」
 アッシュは俯き、それから顔を上げると楽しそうに微笑んで言った。
「make loveのやり方をさ」
 
「じゃ、じゃあ、まずはキスをしようと思う」
 ふはっと笑われる。年相応の、これからすることにいかがわしさなんて微塵も感じさせない笑みだった。
「さっき、アッシュがやってくれたみたいにすればいいんだよ」
「じゃあ俺、できてたんだ」
「そうとも! キスしていい?」
「うん、して」
 アッシュの滑らかな頬に手を添え、改めて綺麗だなあと思う。まつ毛まで金色に、すっと通った鼻筋。きらきらしてて、凛々しくて、どうしてこんなに綺麗な人をあの大人達は泣き喚かせたかったのだろうと思う。笑った顔の方が、何よりも素敵なのに。
「目はね、たぶん、閉じるものかも」
「ふは、うん、でも俺は今お勉強中だから」
「そっか、じゃあ、僕は──」目を閉じ、アッシュの唇に自分の唇を寄せた。
 ふにっと柔らかにくっつけて、離す。アッシュとキスすると、僕はとても幸せな気持ちになるから、どうか彼もこの温かなもので満たされてくれますよう、たくさんの願いをこめて、もう一度。
 啄むようなキスを何度かして、舌でぺろりと表面を舐めた。目を開ける。
「なんかさ、」
「ん?」
「キスに関しては、教えることないな」
「なんで?」
「だって、きみの方が、うまいし。僕いつもされる側で……
「でも、してくれるんだろ?」
……口開けて欲しい」
 アッシュはまたおかしそうに笑った。
 開いた口に、口を合わせる。舌を入れればいいのかな。ディープキスを自分から仕掛けたことなんてなかったかもしれない。
 ちょっと舌を差し入れて、歯の裏側を舐めてみる。アッシュの楽しそうに弧を描いた目と目が合って、僕ははにかんでから瞼を閉じた。瞼の裏側で翡翠が瞬いた。
 ええっと。
 口の中を舐めながら、頬に当てていた手を、そのまま撫でるように頭の後ろにやった。さらさらな髪はお返しとばかりに僕の手をくすぐってくるようだった。もう片方の手は、素肌の腰に回す。
 彼の舌を、舌先でつついた。絡ませて、軽く引っ張ったり、押しつけたり。「ん……っ」僕の舌を食まれて、背中に腕が回された。うぐ、当たり前だけどアッシュの方がやっぱりうまい。それでもなんとか、いつも彼がしてくれるように、僕は舌で口の中を味わった。ちゅるちゅる、ぴちゃ、と音がする。「ふあ、」息の仕方は分かっているのに苦しくなってきて、僕は彼の後ろ髪を弱く引っ張り、薄目で離す旨をアイコンタクトした。
 口と口が離れる。僕の口端から涎がつうと垂れた。ぐいっと拭いながら「……僕できてた?」訊くと、アッシュは肩を竦めニヤッと笑う。「及第点てとこかな」ちぇっ。
「あ、あとさ」
「なに?」
「いっつも、きみの口の中は何味かなって考えたりするんだけど、最終的には説明しづらいんだよな」
…………
「アッシュの味としか言いようがなくて、──アッシュ?」
 ぐいっと抱き寄せられた。
 肩に乗った頭から、深々と溜め息が吐かれる。
……次は?」
「え?」
「次はどうするの、英二せんせー」
 こんな生徒、他にはいない。オニイチャンである僕の特権かもしれない。
 僕は任せろと彼の背中をぺちぺち叩いた。