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botanin5
2024-11-14 03:21:18
22478文字
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薬さに♀(小説)
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花一輪
顔を隠していた審神者が、自分を一輪挿しの付喪神だと名乗ってしまうお話です。
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「ねぇ加州くん、あるじさんってどうしていつも布で顔を隠してるの?」
「ん~。化粧下手だからって聞いてるよ。乱は主の顔見たことないの?」
「ちょっと~それ意地悪な質問だよ!加州くんしか見たことないって皆知ってるんだから!」
「あはは、そーだった」
こちらは書類仕事に追われているというのに、執務室でお菓子を広げて談笑しているのは近侍である加州清光と、遊びに来た乱藤四郎だ。誰かに監視されていないと集中力が続かないので、仕事中も自由に部屋を出入りしてよいと許可を出している。そして、今は手伝ってもらえることが無いのだから、二人が手持ち無沙汰にしているのは仕方がないのだが、触れられたくない話題にあえて触れている乱の方が意地悪だ!と思う。
「というわけであるじさん、ボクにもお顔見せてほしいな~~」
「その流れになると思った。いやだよ、自信がないから」
「加州くん加州くん。自信がないって言ってるけど、もしかしてあるじさんって、目も当てられないほどドブスなの?」
「言い方ひどくない?」
こてん、と顔を傾げる乱は可愛らしいが、口から出てくる言葉は過激だ。もう少しオブラートに包んでほしいものである。加州は初期刀ということもあって、流石に顔を突き合わせて会話をしないとまずいだろうと考え、顔を隠す布をつけないまま挨拶をした。きっと一番私を助けてくれる刀になるだろうし、顔を見せたくないとは言ってられないと思ったのだ。
「別に、主はひどい顔ってわけじゃないよ。そりゃ年相応に化粧した方が綺麗になるとは思うけど」
「ならいいじゃん!そもそもボクたちは見た目で主を判断しないよ?あるじさん、お願いお願い」
「こら捲ろうとしないで!」
まったく、油断も隙も無い。私の顔にかかっている布を掴もうとする手から逃れる。布で顔を隠している審神者が珍しいわけではない。顔に傷があったり、有名人の演練対策だったり、味方とはいえ神である刀剣たちに与える情報を減らすためだったりと、様々な事情で顔を隠している審神者はたくさんいるのだ。もちろん、私のように顔を出す自信がないという理由で使っている人も多くいると聞く。
「別に不都合があるわけじゃないんだからいいじゃん。ね、加州」
「俺はもう見てるからどっちでもいいよ」
「も~~ずるい!加州くんはあるじさんの味方するに決まってるじゃん!
…
あ、ねぇあるじさん、その布って前見えるの?ボク付けてみたいなぁ」
「その手にも乗らない。マジックミラーみたいなもんだよ、こっちからは見えるけど、外からは見えないの」
「
…
あるじさんのけちー」
頬を膨らませた乱は、内番の時間だからと拗ねたまま出て行ってしまった。ほう、と息をつく。乱は可愛いけれど、顔を見たいと定期的におねだりしてくるので困ってしまう。
「そんなに気になるかなぁ、顔」
「そりゃ気になると思うよ。みんな直接話してるから主を信頼しないってことはないけどさ、顔が見えない上司より、顔が見える上司の方が個として認識しやすいでしょ?その分、情が生まれるし、協力したいって気持ちの生まれ方も違うじゃん」
「う~
…
それ言われると弱い」
顔を見せた方が信頼関係をより結べるとは分かっている。私と刀剣たちは直接的な会話でコミュニケーションをとっているし、メールやSNSなどの文字だけのやりとりよりは相手の気持ちが読み取りやすいと思う。でもやはり、顔が見えていないことは刀剣たちに違和感を与えているのだろう。顔を見て話す。視覚情報というのは、大きく影響するのだ。
「主さ、押し入れにある化粧品使わないの?」
「えっ、なんでそれ知ってるの!?」
「この前春物の服を出すの手伝ったでしょ、そのとき見つけた。あるなら使いなよ」
「
…
下手くそだから嫌だ」
段ボールに詰めて押し込んだ化粧品のことはもちろん覚えていた。しかし、苦手意識がばっちりついてしまって、化粧品を見るだけで落ち込んでしまうようになっていた。化粧水と乳液は懸命に続けている。たまに忘れると乾燥するようになってきて、自分が年を重ねつつあると実感するのが辛い。
「
…
いや、そろそろ頑張らないといけないのかも」
「主?」
「私、友達に連絡してみる。メイクを勉強して、みんなの前に顔を出せるようになる!」
「別にそのまま見せてもいいんだよ?俺ら気にしないし」
「だめ、私にとっての自信なの!」
審神者としても落ち着いてきたし、あの子も順調に本丸を運営していると聞く。時期としては悪くないだろう。むしろ遅いくらいだ。
善は急げと連絡をとり、好意的な返事が返ってきたことにほっとしながらすぐに約束をとりつけた。週末になって休みをとると、手持ちの化粧品をかき集め、加州を連れて本丸を飛び出した。
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