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botanin5
2024-11-14 03:21:18
22478文字
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薬さに♀(小説)
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花一輪
顔を隠していた審神者が、自分を一輪挿しの付喪神だと名乗ってしまうお話です。
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「きれいになりたい」
女の子なら、誰もが一度は頭をかすめたことがあると思う。
中学、高校とメイクは校則で禁止。それほど興味もなかった。休日に友達と遊ぶとき、まだ若い目元に黒くアイラインがひいてあるのを滑稽に思っていた。それは今でも思う。あの時の友人のメイクは完全に浮いていた。
(なんだか無理して背伸びしてるみたい)
幼い子が、ひらひらキラキラの服を着せられて、ピアスを開けられ髪を染められ、満面の笑顔でSNSの写真に載せられているのを見た時の違和感。それと同じものを感じていた。友人のメイクは私に、明確に「不自然」として受け止められた。
なんとなく化粧品を敬遠したまま高校を卒業することになった。そして、審神者を目指し大学に入学したとき、「大学生は化粧をするものだ」と気が付いた。もちろん義務ではないのだが、これまで不自然に感じていた同級生のメイクは様になっており、純粋に美しいと思った。
「私たち、卒業したら審神者としてずっと本丸で過ごしていかなきゃいけないわけでしょう?刀剣男士と一緒に暮らしていく。見目が美しい彼らと共にね。目が慣れてくると、きっと毎朝鏡で自分の顔を見るのが嫌になる。それって辛いと私は思う。メイクしたところで絶世の美女になれるわけじゃないけど、「自分を美しく見せるために努力している」って思いは、彼らの前に立つための自信の一つにできると思うの。だから、この卒業までの間に納得できる顔を作れるように頑張るんだ」
そう笑った友人の顔はすでに十分美しかった。自信になる。考えたこともなかった。中高の友人も、自信につなげるために一歩踏み出していたのかもしれないと思った。私よりずっと前に練習を始めたあの子は、きっと今頃美しくなる技術をもっと手に入れて、胸を張って自分の道を歩んでいることだろう。
勢いだけで、とりあえずドラッグストアの化粧品コーナーへ立ち寄った。ファンデーションは見たことがある。下地?チーク?分からない。目元に塗るものって、種類がこんなにあるの?これなんだろう?化粧品の種類の多さに圧倒されて、店員さんに声をかけるという発想すら生まれなかった。
化粧水や乳液など、肌のケアについては簡単なものだけでも続けるようになった。化粧がうまくいかなくても、肌がきれいならある程度は自信ができると思ったし、事実そう感じた。でもやっぱりメイクは敷居が高かった。審神者の学校は二年制だ。勉学に追われるうちに次第と後回しにしてしまい、結局ろくにメイクの練習をしないまま審神者になってしまった。
「ゆっくり教える時間がなくてごめんね、お互い審神者の仕事が慣れてきたら会おうか。メイクの講座ならいつでもするから!とりあえず、これだけは持っておきなよ」
そう言って、渡された餞別の贈り物の中に入っていたのは、化粧下地とファンデーション、チークと口紅だった。
本丸に転居する前日。何度も開くだけ開いたメイク講座が載っているサイトをもう一度開き、アイブロウやアイシャドウなど、もうひと手間加えるアイテムを確認しながら、適当に買い集めた。夜、試しに使ってみたけれど、やはり滑稽に見えて、泣きたくなってすぐに落とした。力加減が分からない。塗る範囲が分からない。色使いが合っているのか分からない。美しくラインが引けない。メイクをしない方がむしろマシに思えるくらいだ。散々迷って、最後に引っ越しの段ボールに押し込めた。
「メイクをするのは自信につながる」
ならば、化粧ができない自分は自信を持つだけの後ろ盾が無いといえる。これまで、メイクをしていないことに不安を感じたことなど無かったのに。このまま刀剣男士の前に立つことが、怖くて怖くて仕方なくなった。
結局、私が選んだのは「顔を見せない」という方法だった。
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