botanin5
2024-11-14 03:03:53
17941文字
Public 薬さに♀(小説)
 

早起きは三文よりお徳。

ハッピーエンド
イタズラで信濃の布団に潜りこんだけど、そこに居たのは信濃じゃなくて――






「破いちゃったの!?」
「うんあの後うっかり!いやぁまいっちゃうね!」
「じゃあ、あしたから あるじさまは こないのですか!?」

朝食を食べ終えて、畑仕事を手伝うために長靴を履く。今日の当番である信濃、今剣と雑談をしながら農具を取りに行く。あの後、どうしようもなく苦しくなって、勢いに任せてお札を破いてしまった。破けばその効果はなくなる。切れ端を眺めているのも辛くて、ゴミ箱にさっと捨てたのだ。

「大将、新しいお札買わないの?」
「う~ん、どうしよっかなぁ」
「ぼくたち たのしみに していたんですから、おわりなんて さみしいです」
「そうだよ!俺たちのドッキリも、まだ成功してないし!」
「あ~分かった分かった!注文しておくから!」

この二人から潤んだ瞳で言われてしまっては、断ることなんてできない。ドッキリは充分成功していましたよ!なんて言えないので、注文したけど売り切れていた事にしようかな、とずるい考えを巡らす。
薬研にあんなことを言わせておいたまま、この遊びを続けられるほど私の心は図太くなかった。放棄したのだ。うやむやにして、このまま逃げようとしている。何の解決にもなっていない事は分かっているのだけれど、薬研の布団に潜り込む勇気も無ければ、正直に「薬研が好きで、恥ずかしくて布団に潜り込めなかったの」なんて言う勇気も全くなかった。

「ちゅうもんといえば、あるじさま!うすときねは まだですか?」
「あぁ、それは注文してるよ~なんと!明日には届くよ!」
「わぁい!」
「臼と杵?何のために?大将そんなの使えるの?」
「杵はいける!って、私が使うんじゃなくて、岩融と蜻蛉切がね」
「みんなで おもちをつくのですよ!」
「わぁ!楽しそう!」

正月が近いこともあり、また、育てたもち米を有効に使うため、本丸で餅つき大会をしよう!と計画しているのだ。その前に、臼と杵が届いたら慣らすために使っておこうという事で、岩融と蜻蛉切には餅つきをお願いしてある。明日届くことは伝えてあるため、ついでに燭台切や歌仙にもお願いして、ちょっとした宴会をする手筈になっている。

「他のみんなにはまだ言ってないから、内緒だよ?」
「びっくりさせるんですよね!」
「そう!」

楽しそうな今剣の様子を見ていたら、朝の出来事で燻っていた気持ちは少し晴れた。薬研も、明日は楽しんでくれたらいいな。



そのまま、食事以外は特に薬研と顔を合わすこともなく一日が終わった。自分から会いに行かなければ、こんなものだ。お札が破れたことは信濃から短刀みんなに伝わったようだ。薬研は、どう思っただろう。きっと、偶然破れたんじゃないことは気づいているだろう。早く仲直りしたいけれど、なんと言って弁解したらいいのか、上手い言葉は見つからない。布団に潜ってぐるぐる考えているうちに、疲れてすっかり眠ってしまった。