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botanin5
2024-11-14 03:02:11
18681文字
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薬さに♀(小説)
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終わりよければ全てよし
ハッピーエンド
「好き」に振り回されるお話です。
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「薬研、どうかな。新しい髪飾りを買ってみたの」
「ねぇ薬研!歌仙と一緒にお菓子を作ったんだけど
…
食べてくれる
…
?」
「薬研!裏山の紅葉が綺麗なんだって!一緒に見に行かない?」
最近の大将は、前にもまして元気になった。これまでもずっと元気なお人ではあったのだが、最近はなにかに凝り始めたのか、楽しそうに俺の名を呼ぶことが多い。この笑顔を守りたい。大将からの返事はまだ受け取っていないが、その思いは日に日に強くなっていた。
「薬研!見て
…
大きな紅葉
…
綺麗だから何枚か採って、夕飯の飾りに使ってもらおうよ」
「そうだな」
可愛らしく笑いながら、大将は俺の少し前を歩いている。紅葉ですっかり色を変えた道を進む彼女が映る景色は、綺麗だ。とくん。ひとつ、心臓が鳴った気がした。不思議に思って足を止める。自分の胸元を見るが、服に包まれたそこはいつも通りだ。
「薬研来て~!これ、どうかな?」
「
…
ああ」
俺を呼ぶ声を聞いて、ふっと顔を上げる。そこには。鮮やかな紅に染まった景色の中でこちらを見て美しく微笑む、ひとりの、ひとりの
――――――
どくん。再び大きく心臓が脈打った。今度は一回で止まらない。どくどくと心臓が暴れる。どうした。なんだってんだ。なんだか、顔まで熱くなってきた気がする。大将の顔が、上手く見れない。ぐらぐらと頭が揺れている気がする。動こうとしない俺を不審に思ったのか、大将がどうしたの?と近づいてきた。
「大丈夫?
…
ね、これこれ、すっごく綺麗じゃない?これなら歌仙も納得だと思うなぁ」
「っ
…
あぁ、そうだな」
歌仙、そう述べた口を、抑え込んでしまいたいと思った。他の奴を名前を、呼ぶな。そう言いそうになった自分に、驚く。今、何を考えた
―――――
?
「大将、もう体も冷えてる。本丸に戻るぞ」
「えっ、まだ一枚しか紅葉採ってないよ?」
「んなもん、明日でもいいだろ。昼間の方が気温も良い」
「そうだけど
…
」
少し不満げな大将を連れて行こうと、いつものように手を掴んだ。はずだった。掴んだ手が、小さくて、柔らかくて、思わずぱっと離してしまった。感覚が、消えない。自分の手を見て固まる俺に、今度こそ不審に思ったらしい大将が声をかけてくる。
「薬研、ほんとにどうしたの?
…
ちゃんと帰るって、ほら、行こうよ」
遠慮がちに肩を押されて、ようやく歩き出す。触れられた場所が、燃えるように熱かった。
「どうしたってんだ、俺は
…
」
ぶちぶちと雑草を抜きながら呟く。あれから、大将の顔を見ると心臓がうるさく鳴って、会話どころではなかった。いつも一緒に食べていたメシも、隣に座る大将が気になって食べた気がせず、いつのまにか三杯もご飯を食べていた。これではまともに仕事ができないと思い、今日は三日月に頼んで近侍を代わってもらった。
「兄弟、それは雑草じゃない」
一緒に畑仕事をしていた骨喰に声をかけられて、自分が掴んだものを見やれば、それは春菊だった。そろそろ鍋の季節だ。抜いたものをこそこそ戻していると、すとん、と骨喰が隣にしゃがみこんだ。顔をみれば、じっとこちらを見つめてくる。
「何かあったのか」
兄らしく振る舞うところもあるんだな、と少し意外に思った。不器用だが、俺の事を気にかけてくれたのだと分かり、じんわりと胸が温まった気がした。
「大将の顔を見ると、落ち着かねぇんだ」
「主の
…
?喧嘩したのか」
「いや、そういうんじゃなくてだな
…
自分でもよく分からん。大将のことを考えるだけでも、心拍数が上がる。動悸がおかしくなるし
…
体が熱くなるというか
…
」
「そうか
…
俺にはよく分からないが、それは悪い事なのか?」
悪い事?これは、悪い事なのだろうか。考えてみるが、あまりそうは思わない。体調が悪くなったのかと聞かれれば、むしろ調子がいいとさえ言えるだろう。
「悪い事
…
ではない気がするな」
「そうか。
…
主のことが、嫌いになったわけではないんだな」
「それはない!」
思わす大きな声が出た。驚いたように少し目を見開いた骨喰に、すまんと声をかける。どう言ったらいいのか、もはや、なんと言ったら正解に辿りつけるのか分からなかった。再び考え込んでしまう。雑草を抜く手はとっくに止まっていた。ぽん、と頭に何かが乗る。隣に視線をやれば、骨喰が片手で雑草を抜きながら、空いた手を俺の頭に乗せていた。慰めているつもりなのだろうか。
「ありがとな」
「気にするな。兄弟が悩んでいるのは珍しい」
「おう。ただ、軍手は外してほしかったなぁ。土が背中に入ったんだが」
「すまない」
どちらともなく笑ってしまった。スッキリしたとは言えないが、これは悪い事ではないと自分の中で位置付けることができただけでも良かった。不器用な兄の、真っ直ぐな問いかけのおかげだ。この辺りの雑草は抜き終わったし、もうそろそろ終わりにしてもいいだろう。背中を落ちていった土も心地が悪いし、風呂にでも入ってこよう。骨喰に声をかけて抜いた雑草を集めて籠に入れると、よいしょと持ち上げて堆肥置き場へと向かった。
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