botanin5
2024-11-14 03:02:11
18681文字
Public 薬さに♀(小説)
 

終わりよければ全てよし

ハッピーエンド
「好き」に振り回されるお話です。





「みかづき~~~~!!!!」
「はっはっは、どうした?薬研と何かあったのか」

買い物から帰ってすぐ、荷物を置くのもそこそこに、三日月の部屋へと駆けこんだ。彼は何か本を読んでいたようで、内番服で座椅子に腰掛けている。今までと同じように、ゆったりと私を受け入れてくれる様子に安心して、思わずその胸に飛び込んだ。

「薬研、私のこと好きじゃなかった!」
?何を言っている。あれほど主の世話を焼いていただろう」
「それがっ、そのっ、違う好きだったの!」
うん?」

どう説明したらいいのだろうか。

「三日月は、私のこと好き?」
「ん?主のことは好いているぞ」
「可愛い妹みたいな?」
「そうだな妹というものはいたことがないがおそらくそうだろう。可愛らしいと思っている」
薬研も、それだったなんか、勘違いしてるみたいで
「ふむ

自分で説明してて辛くなってきた。じくじくと胸が燻ってくる。考えこんで黙ってしまった三日月の服をギュッと掴む。そのまま胸元にぽすっと頭を落とせば、ゆっくりと頭を撫でてくれた。

「私私は、薬研のこと、ちゃんとその恋愛的な意味で好きになっちゃったの」
「そうか
「今日、言おうって、思ってたんだけど、薬研に「どうして私のこと好きなの」って聞いたら、ちがくてっ」
「落ち着け」

ぐずぐずと胸を借りていると、不意に障子が開いた。びくりと肩を震わせて恐る恐るそちらを見れば、薬研がそこに立っていた。

「なんだ、やっぱりここに居たのか大将。泣いてんのか?みんなに配るために買った菓子、部屋に持って行っただろう。広間に置いてくるから、俺が取りに行っていいか?」

呆然と薬研を見上げる。仮にも好きな女が、他の男の胸を借りて泣いているのに、こんなに平然としている。やはり薬研の好きは違う。図らずも明白になってしまった事実に、胸が杭でも打ち込まれたように痛む。

うんごめんお願いします
?ああ、任された。あんまり泣くと腫れるぞ。後で冷やすもん持ってくる。三日月さんよ、大将のこと頼むぜ」
「相わかった」

薬研が去っていくと、主はまた己の胸に顔を埋めてしくしくと泣き始めた。もう一度その頭を撫でてやる。確かに、好いたおなごに対する態度にしてはいささか淡白に思えた。しかし。しかし、三日月は見逃していなかった。障子を開けた薬研と目が合った瞬間、彼が少し顔を顰めたのだ。おそらく、彼自身もそんな自分に気づいてはいないのだろう。

「主」
「ん?」
「そう心配するな、なんとかなる」
なるかなぁ

ぽんぽんと背中をさすれば、主はようやく泣き止んだ。まったく、世話の焼ける。

「薬研と顔を合わせるのが辛いなら、俺を近侍に戻すか?」
「!」

俺の言葉を聞いて、主は顔を上げて目を合わせると、ぶんぶんと顔を横に振る。

「それはっだめ。あっ、三日月が嫌とかじゃなくて、その、えっと」
「はっはっは、冗談だ。」
……三日月、私、がんばる」
「うむ」

今度は私が振り向かせる。
優しく微笑む三日月に、背中を押された気分になった。薬研はまだ私の事を好きだと思い込んでいる。そのまま、本当に私の事を好きになってもらえばいい!

「よっし!なんかやる気でてきた!私、がんばる!」
「はっはっは、その意気だ」
「ありがとう三日月、話を聞いてくれて」
「気にするな。ここは、主のためにいつでも空けているぞ」

ありがとう!と抱きしめて、廊下に出た。まだ薬研はいるだろうかどうせなら一緒に広間へお菓子を届けに行きたい。先ほどまで燻っていた心はすっきりと晴れていた。