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gib_fox
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hq松花
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花巻のおでこ
pixiv再掲
モブ視点→花巻視点→モブ視点、です。
松川一静、シンデレラ?ストーリーというより、ちょっとマイフェアレディ的なお話。捏造過多です。
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次の日の朝日は、既に暑かった。
おはよう。そう言ってクラスメイトが肩を叩いていった。俺は登校時につけているイヤホンを片方外して、おう、とだけ手を振る。
今日は月曜で部活がない。朝練もないから、気ままにゆっくり歩いて学校へ来た。
聴いている曲は自分でダウンロードしたお気に入りの歌で、少しばかり口ずさむ。タイトルは「Before you realize」、洋楽の女性ボーカルだ。普段は聴かないキャッチーなメロディーなのに、俺の心を一週間ほど前にくすぐって、リピートしている。
英語はそこまで得意な方じゃないけど、洋楽は好きだ。邦楽とはまた違う出だし、ハーモニー、ギターのエフェクト、ドラム回し。
そんな風に夢中で聴いていたから、二度目の肩を叩く感触に、最初は気付けずにいた。
「はーなーまーき」
イヤホンをゆっくり外されて、曲の低音がやや薄く頭から無くなっていく。不思議に思って左側を振り返ると、松川がいた。
いや、松川か?
「
……
誰、お前」
「ひどい、髪型違うからって」
全部が短い、その頭。前髪も俺が切ったのを調整されてて、もっさりしてたはずの後ろの髪は、バリカンで整えられて剃られてた。襟足なんて丸見えで、「スースーする」って手の平でそこを覆うこいつがいる。
「松川、お前っ」
俺はガッと両肩を掴む。弾みで耳からイヤホンが落ちたが気にしない。至近距離に詰めた俺の顔は、松川の体を硬直させた。そりゃそうだ、急だし勢いがあるし、何より怒られるのかと思う剣幕だし。
でもそんなの、全くの杞憂である。俺は、感動していた。
「かっこよくなったあ
……
!」
松川の目は、何度も瞬く。対して俺は、目が乾くんじゃないかってくらい、じっとその顔を見ていた。正確には頭、だが。
癖っ毛がほどよく馴染んでセットされて、こいつ、ちゃんとワックスつけたりとかできるんだ! って嬉しかったし、この髪型、まさしく俺が雑誌で読んでいたページものと同じだった。
「花巻ん家にあった雑誌、見つけてさ。それにしてくださいって頼んだら、刈り上げにされちゃった」
聞いてないのに、照れていたのかやや早口でまくし立てて、はにかむ松川。
めんどくさいからそれで、そうしたら花巻からもとやかく言われなくなるだろうし。みたいな理由かもしれない。俺の要望をひとまず聞いといてやるか、っていうため息一つくらい、美容室の前でついたかも。
それでも俺は良かった。だってまずは第一段階をクリアしたのだから。
新しいゲームを一つ全クリしたかのような達成感。高揚する俺を見て、松川はまたクスリと笑む。
「お気に召した?」
「うん、とっても。さすが松川」
朝から、俺のテンションは爆上がりだ。
でもそんな俺のこのふわふわとした気分は、校内に入って何人かのクラスメイトが松川に気づいた時に、少し陰りを見せた。
「あ!松川! お前、似合うじゃん!」
「松川くんかっこよくなった〜」
「どうも」とか「そんなことないよ」とか軽くいなしながら、松川は「じゃあね」って俺に告げて教室へ入った。
ホームルームを知らせる鐘。生徒の足音。俺の目の前にはクラスへ入るためのドア。あいつの爽やかな刈り上げが松川のクラスへ消えていくのが見える。どよっと聞こえる、あいつのクラスの感嘆。
やっぱり似合う〜。いいじゃんそれ! どこで切ったの? これからもその頭でいろよ。
さざなみのように密やかに、俺の足元に寄せては返すその声の集合体。やがて担任が入ってきて「花巻、席着けよ」と頭を叩かれるけど、俺は心に宿ったこの小さな陰りが何なのか、わからなかった。
俺が、最初に「かっこいい」って気づいていたのに。
そしてもう一度だけ、松川に「お気に召した?」って言われたかった。
俺は松川の、中学時代からの友達って奴がちょうど同じクラスにいたことを思い出す。そいつはスポーツ推薦で俺たちと同じようにサッカー部に誘われて入学し、早くから頭角を表していた。
俺は試しに、この頭をもたげ出した渦みたいな気持ちのまま、聞いてみる。
「ああ、松川、中学の時仲良い女子いたわ」
俺は、びっくりしてジュースを落としそうになる。液体もストローから溢れて、「あぶね!」ってそいつが言って初めて、失態に気付いた。
「あ、ごめ
……
あいつ、そんな子いたんだ」
「んー、その子くらいかな、大人しそうな、目立つ子じゃなかったけど。かわいかった!」
かわいかった。
グルグル頭を回る六文字。言ってしまえば大したことのない単語なのに、どうも俺の調子をおかしくする。
特定の女の子がかわいい。しかも松川がその子を好きで、付き合いたいのか会いたいのか今のところはわからないけど、でも気にはしている存在で。
「その子、中学卒業したら親の都合で引っ越したんだよ。だから今は近くにいないはずなんだけどな」
俺はあいつが、遠くに行ってしまっても会いたい人がどんな人か想像する。黒髪? 髪が長い? 小さくて、華奢で、かわいい顔で、きっと二人でいたら。
「何だよ花巻、もしかして松川、その子のこと好きなのか?」
松川は忘れられなくて、もしかしたら。
「
……
そう、かもなあ」
俺は、口に出せば正しく事実が胸に降りてきた気がしてけほっと咳をした。
肺に入った室内の空気が、なぜか重たい。
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