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gib_fox
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hq松花
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花巻のおでこ
pixiv再掲
モブ視点→花巻視点→モブ視点、です。
松川一静、シンデレラ?ストーリーというより、ちょっとマイフェアレディ的なお話。捏造過多です。
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(花巻視点)
でっけえ校舎。それが青城へ初めて足を踏み入れた俺の、最初の感想だった。だだっ広いグラウンド、体育館もきれい、部室棟も備え付け。
中学の連中に見せてやりてえ、きっと羨ましがるだろうな。そう思いながらそれらに向かって歩いていた俺は、推薦入学の時点でもらっていた青城のジャージを着ていた。三月の寒空の下、さっそく先輩たちの練習に混ざれるからと、春休み返上で部活に参加している。
同じ部活にベストセッターだった奴がいて、その横にWSで剛腕放ってた奴もいた。出会った初日に仲良くなれたその二人と、今日も体育館前で会おうって二日前に別れた。
その時俺は、少し離れた場所で、MBのでっかい奴を見つけた。あいつも今ここにいるってことは、推薦で俺たちと同じということだ。
俺は先輩にアドバイス受けてるそいつを見て、ちょっと面食らった。
まず、髪が長い。切るのが面倒くさい、という具合に適当な伸び方。顔もよく見えない。細いし、背もあるからかっこ良くしといたらいいのに、田舎くささが全面に押し出ている。
あと、白いジャージが壊滅的に似合わない。
「マッキー?」
「花巻、何か怒ってんのか?」
俺は、後から岩泉に「ふぐみたいに膨れてた」と言われた。確かにそんな音が、頬からした。
「あいつ? ああ、松川って言うんだぜ」って他の誰かが教えてくれて、先輩と話し終わった松川って奴のところへ、俺はズカズカ歩いていく。俺よりもいくらか背の高いそいつは、ちょっとびっくりして、ぱちくりと目を開けていた、と思いたい。なぜなら目がよく見えないところにあるから。
だから俺はその前髪を、思いっきり掻き分けてやった。意外と広いおでこが見えて、タレ眉が見えて、「あ、こいつこんな顔なんだ」って能天気に考える。
「え、ちょ
……
だれ? なに?」
「マッキー何してんの⁈」
及川が慌てて引き剥がそうとしたけど、これだけは譲れない。及川のパワーで掴まれた肩をもがれそうになりながら、俺は叫んだ。
「お前、もったいない!」
松川にバチンと怒りをぶつけた。別に殴ったり平手打ちをしたわけではない。言葉で、だ。
「かっこいいのに。その髪! 俺が切る!」
松川はひどく
狼狽
うろた
えて、周りの人はだんだん腹を抱えて笑い出す。
「
……
え、ええ?」
でっかい図体して赤面するそいつは、ぐしゃぐしゃと頭を掻いて「何それ
……
」と小さく呟く。
遠くで見ていた岩泉が、
大仰
おおぎょう
に肩をすくめた。
俺と松川はその一件から、仲が悪いと思われたらしい。MBの先輩は松川を守るように立ち塞がって、俺はイライラする。
先輩曰く、俺はどうも美的センスにやかましいらしい。「松川の自由にさせてやれよ」って笑われたけど、俺は自分で自分の良さをわかっていない奴は、どうにかしてわからせてやりたくなる。おしゃれにするも良し、かっこつけさせるも良し。
当の松川は、入部早々変なやつに目をつけられた、と思ったのか入学式でもクラス分けの時も、俺の顔を見るなりあからさまに顔を背けた。
ちっくしょう、見てろよ。お前を一人前のモデルばりのかっこいい奴に、俺はこの三年をかけてでも、してみせる
……
!
「お前バレーしにきたんだろ」って呆れながら紙パックのジュースをすする岩泉に、俺は「それもあるけど! でも!」って抗議した。
「俺は! 松川を、プロデュースする!」
あの松川の温厚な「やめてよ」って声が今にも聞こえてきそうだが、俺は決めた。熱い決意は誰にも止められない。
「面白そうだけど、まっつんの気持ち考えながらやりなよ、バレーに響いたら怒るからね」
「そこは
……
っ、大丈夫、なはず!」
「花巻
……
」
いざとなったら止めよう、そう固く誓い合う
阿吽
あうん
をよそに、俺はメンズのファッション雑誌を開いた。松川に似合いそうなのを早速今朝、発見したのだ。
「マッキー余裕だね、そんなの見て。俺クラス戻ろー、勉強しなきゃ」
「え? は?」
「すげえな花巻。俺も戻るわ」
「え?」
気づけば昼の休み時間もあと十分ほどで終わる。周りもガタガタと弁当をしまい始め、広げ出したのは数学の教科書。隣の席のメガネかけた女子が、勉強しながらも及川が通り過ぎるのを赤い顔して見てた。
「次の時間、全クラス一斉に数学のテストじゃん」
……
サーッと俺の顔から血の気が引くのがわかる。もしもここで赤点を取れば。そして追試も最悪落としたら、次の新人戦に参加できないかもしれない。
あんなに松川のこと煽っといて、目立っといて、新人戦無しとか、何の拷問⁈
俺は慌てて雑誌をしまい、バタバタと数学のテキストを取り出した。見る公式見る公式頭に叩き込むけれど、どれも
朧
おぼろ
げでどこに何のアルファベットを当てはめていたかさっぱりわかりそうもない。
俺の、ばか。何がプロデュースだ。
ぐすんと泣きたくなる俺の数学のテスト時間はもちろん悲惨で、半分白紙で提出した時に見た教師の顔は、抜けるように出たため息と共にはっきり覚えてる。
放課後。答案結果がわかって、やっぱり俺は追試になった。
今日は部活が無いから、俺は夕方になって影の濃い帰り道を一人で帰る。入学早々追試の奴は他にもいたけど、皆図書室で勉強したり、どっかのカフェで何人かで問題を解き合うんだとか。
俺はそんな気になれなくて、前を歩く人混みに紛れて、気休めにイヤホンから流れる音楽に身を任せて帰っていた。
耳から聴こえるのは、珍しく母親に勧められたアーティストだった。優雅なバイオリン、サックスで始まると思いきや派手なギターがかき鳴らされて、ボーカルがずっしりと歌う。母さん、こんなのいつの間に知ったんだろ。
新人戦、どうしよう。追試受けたくない。
そんなくだらない、勉強をするしか解決法の無い未来を描けずに、俺は信号で止まった。
「花巻」
背後で、優しい声がした。
「
……
松川?」
「聞いたよ、追試なんだってね」
その顔からは、何も
窺
うかが
えない。表情も固い。
何だよ、いつも俺が突っかかるから仕返しかよ。
「
……
なに、からかいにきた?」
「違うって。これ」
松川の手に、一冊のノートが握られている。それはぶっきらぼうな文字で「数IA」と書いていた。
「追試の範囲。大体だけど。今からあの分厚い参考書と格闘するより、いいかと思って」
俺は目を疑った。前の信号は青になる。「進もう」そう言って松川が横を流れていく。
「花巻、ぶつかるよ」
人が逆流して、俺の肩に当たった。松川がそれを見かねて、くいっと腕を引っ張る。
「俺から借りるの、嫌だった?」
「そんなんじゃ
……
助かる、サンキュ」
「どういたしまして。これでしばらく前髪切らないでもらえる?」
口元だけは笑って、松川は歩きながら俺を牽制してきた。
俺は唸る。ポリシーと、目の前の追試。かける天秤はわかっているのに、素直に頷けない。
「新人戦終わるまでは、切らせろって言わないどく」
「短期間すぎ。
……
まあいいけど」
髪の裏から見える眼光は、少しだけ細くなる。目もきっと笑ってる。俺は見えない松川の瞳の動きを予想した。
「何で、切りたくねえの?」
俺は昨日の雨で大きな水たまりのできていた道を飛び越えて、空気を窺うように聞く。松川も後に続いて、水たまりを避けた。
「
……
会った時、思い出してもらいたいから、かな」
俺は、松川の声音にわずかに暖かいものを感じた。意味はわからない。何のことかも、聞けない。こいつの独白は空気の中に紛れた。それくらい小さかったのに、俺の心にはっきり残った。
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