Hizuki
2024-07-29 08:18:04
11715文字
Public あんスタ[薫あん]
 

薫あんと桔梗の花言葉の話

【あんスタ】薫あん+α。SWINGNIGHTのミニトークに出てきた薫からのおみやげの話を元に桔梗の花言葉を絡めた話。全部で8話、それぞれ独立した話になっています。全て+αキャラからの視点で、二人共いたりいなかったりする。〇×は花言葉を知っているかどうか。



『遠回りをしなくても』

「そういえば、あんずさんにお香をプレゼントしたんだね」
「ん、どうして乱くんがそれを?」

寮の同室の薫くんが手元の本を閉じたのを見て、そう声をかけた。今日はオフだそうで、最近読めていなかった本を色々読む日にすると言っていた。薫くんは身体を伸ばした姿勢のまま、不思議そうに私に問い返す。

「昨日の仕事は彼女と一緒だったのだけど、いい香りがしてね。聞いてみたら薫くんからもらったものだと言っていたんだ」

あんずさんから聞いた理由をそのまま告げれば、なるほど、と小さく呟いた。彼は上に伸ばしていた腕を下ろして深呼吸をすると、表情を和らげる。

「そういうことか」

私が尋ねたことに答えるのならば、『もらいもの』で済ませることもできたはず。けれど、彼女はわざわざ『薫くんからもらった』と答えてくれたのだ。

「とても嬉しそうにしていたよ。一緒にもらったお香立ても気に入ってるって」

しかもお香とお香立てのセットという、中身まで添えて。余程嬉しかったのか、その話をしていた一時だけ、彼女から『プロデューサー』という顔はすっかり隠れてしまっていた。私の目の前にいたのは、彼からの贈り物に喜んでいるただ一人の少女だった。

そっか。俺からだって言ってたんだ、あんずちゃん

今の薫くんも昨日の彼女と同じような表情をしている。この場にいない彼女を想い、口元を緩めている。

教えてくれてありがとう」
「本当に二人は仲がいいね。見ていると私も温かくなってくるよ」
「改めてそう言われると照れるというか、恥ずかしいというかあはは

日和くんから二人の関係については恋人同士だと聞いたことがある。あんずさんのことだから、プレゼントへの感謝の言葉も感想も真っ先に薫くんに伝えているだろう。それでもこんなに嬉しそうにしているのは、互いに想い合っているからこそ。何度聞いても嬉しい、という感覚は、私にとってのファンからの声と同じような感じなのかもしれない。

「あ、私が言っていたっていうのは、彼女には伏せておいてもらえるかな」

先程の様子を見るに、薫くんがこういったことを不用意に口外するとは思わないけれど、一応口止めはしておく。お互いの関係性を守るためでもある。

「うん、もちろん。誰にも言うつもりはないよ」
「ありがとう」

すると、普段の調子の声できっぱりと言い切ってくれた。その返事を聞いて安堵の息を吐くと、荷物を持って立ち上がる。

「それじゃ、そろそろ行くね」

薫くんと話していると、そろそろ仕事に向かうのにいい時間になっていた。

「行ってらっしゃい。気を付けて」
「うん、行ってきます」

お決まりの言葉を交わし、薫くんに見送られて部屋を出た。今日はEden揃っての撮影で、皆と合流してスタジオに入る。軽く中を見回すと、小道具として使うのだろう花束が用意されていた。そして、ふと花言葉の存在を思い出した。その言葉に思いを乗せて贈ることもあるそうで。あんずさんがもらったお香立てに描かれていたのは、桔梗の花だったという。意味は『永遠の愛』『変わらぬ愛』だったはず。二人の様子を見るに、それを気にしているような素振りはなかった。いや、花言葉を知らない、という方が正しいのかもしれない。

ふふ、わざわざ別のものに思いを託す必要はない、ということかな」

どちらにせよ、二人には変わらずにいてほしいと思いながら、一人呟いた。