Hizuki
2024-07-29 08:18:04
11715文字
Public あんスタ[薫あん]
 

薫あんと桔梗の花言葉の話

【あんスタ】薫あん+α。SWINGNIGHTのミニトークに出てきた薫からのおみやげの話を元に桔梗の花言葉を絡めた話。全部で8話、それぞれ独立した話になっています。全て+αキャラからの視点で、二人共いたりいなかったりする。〇×は花言葉を知っているかどうか。



『糖分過多』

コンコン、と楽屋のドアを叩く音がした。

「は~い」

その音に答えたのは、自分と同じタイミングでここに来た羽風先輩だった。見ていた雑誌を閉じてテーブルの上に置くと、立ち上がってドアを開ける。

「あんずちゃん、お疲れさま」
「お疲れさまです」

ドアの向こうにいたのはあんずだった。そのまま羽風先輩はあんずを中に招き入れる。静かに荷物を置くと、先輩に促されるままソファに座った。

「で、朔間先輩達は何だって?」

今日は久し振りに四人揃っての仕事で、それを持ってきてくれたのはあんずだった。少し早めに集まって簡単にすり合わせをすることになっていたものの、時間になっても朔間先輩とアドニスは姿を見せなかった。二人はたまたま一緒の仕事で、一応ホールハンズにメッセージを送ったものの返事はなく、あんずの方からも一度連絡してほしいと頼んでいた。落ち着いた顔であんずがここに来たということは、何かしら連絡が取れたということだろう。

「前の仕事が押しちゃったんだって。でも、何とか間に合いそうって言ってたよ」
「そ~かよ。つかそれならさっさと連絡くれりゃいいのによう」
「まぁ、あの二人だからねぇ」

あんずからの報告にふうと息を吐く。苦笑いを浮かべる羽風先輩に、あんずも同じような顔をした。そろそろスマートフォンくらい問題なく使えるようになってもらいたいものだ。特に朔間先輩はユニットのリーダーでもあるわけだし。何にせよ仕事に間に合うならそれでいい。全員揃うまではのんびりするかと、自分のスマートフォンに視線を向けた。そのまま聞こえてきた羽風先輩とあんずの声は今日の流れを確認するものだった。同じ部屋にいる自分に聞かせる意図もあってだろう。

ところでさ、もしかして早速使ってくれてる?」

それが一通り済んだところで羽風先輩の声色が変わった。

「あ、はい。でももったいなくて、一個ずつ大切に使ってます」
「気に入ってくれたなら、またプレゼントするよ。だから気にせず使って?」
「ありがとうございます。桔梗のお香立てもすごく素敵で」

同じようにあんずの調子も柔らかいものになった。香立て、という言葉に、さっきからずっと感じていた匂いの理由を察する。羽風先輩からプレゼントされたもので、あんずはそれを使ってきた。自分に馴染みはないが、悪い匂いじゃない。多分、この匂いが嫌いだという奴の方が少ないだろう。本当そういうところのセンスは外さない。

「俺の『気持ち』も受け取ってくれた?」
えっと、花言葉、のですよね。いつもいっぱいもらってます

部屋の空気が急に甘ったるくなった気がする。花言葉、と言っていたから原因はそれに違いない。新しくタブを開いて、検索ウィンドウにそれを打ち込む。

『花言葉 桔梗』

検索結果を見た瞬間、調べなければよかったと思わず顔を手で覆った。

「あ~もう!そういうのはよそでやれ!よそで!!」

そのまま苦情をぶつけると、二人は目を瞬かせていた。そう、まるで俺様がいることを忘れていたかのように。

「あはは、晃牙くんごめんね~?」

羽風先輩が軽く謝罪の言葉を口にする。恥ずかしそうに顔を赤くしたあんずも「ごめんね」と続いた。一応悪いとは思っているらしい。

「ったくよう

そりゃ仲が悪いよりはいいが、限度問題ってやつだ。『永遠の愛』だの『変わらぬ愛』だの、本当によくやる。甘さで胸焼けを起こしそうで、顔を二人から背けると口直しのコーヒーでも買おうと楽屋を出た。