Hizuki
2018-09-16 10:12:19
16818文字
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グラブルふせったーログ[ジクグラ・ジクジタ・ジクパー]

【グラブル】ジクグラ・ジクジタ・ジクパー。ふせったーに上げていた分のSSまとめ。




『1本で十分』(ジクパー)


「ジークフリートさん傘忘れて行ってる
「どうした、団長」
「あ、パーシヴァル」

物資の補給と整備を兼ねて立ち寄ることになった小さな島。
依頼なども別段なく、出港までの数日は休暇という指示が下されたのは昨日のこと。
読みかけで寝かせていた本をようやく読み終え自室を出ると、心配そうに傘を手にする団長の姿があった。
話を聞けば、ジークフリートに買い出しを頼んだが、まだ戻ってきていないらしい。
雨が降りそうだから傘を持って行けと伝えたのに、そのまま倉庫の入口に忘れていったのだとか。

「ならば俺が行こう」
「いいの?」
「ああ」

外の様子を窺えば、粒は大きくないもののもう雨が窓を濡らし始めていた。
ずっと部屋にこもっていたから、その気分転換にもちょうどいい。

「荷物もあるだろうし、お願いできる?」
「承知した」

自分用の傘を差し、団長が持っていた傘を預かって艇を降りる。
港から街の中心部まではそう遠くなかった。
が、空を覆う雲は次第に厚くなっていく。
これは早めに探さないと本降りになるなと、気持ち足を速めた。
商店街に着くと、一緒にもらった買い出しのリストと案内板をざっと眺め、立ち寄りそうな店に見当を付けた。
思っていたよりも雲の流れが速く、傘に当たる雨音が大きくなる。
当たりをつけた店は悉く外れ、いよいよどこまで買い出しに出たのかともう一度リストに目を落とした。
店先の商品に覆いを被せ始めるのを視界の端に見て、更に雨足が強くなることを予感させた。
そういう予感はやはり当たるらしく、程なくして辺りの音さえも遮るような雨が降り始めた。
幸いだったのはすぐ近くに雨をしのげそうな場所があったこと、そしてそこに探していた人物の姿があったことだった。

「ようやく見つけたぞ、ジークフリート」

かつて何か店があったであろう建物の前、少し古びたベンチに座る男に声をかける。

「パーシヴァル?どうしてここに」
「団長に傘を持って行けと言われただろう」

きょとんとした顔で探し人はこちらを見上げた。
俺の言葉に思い当たることがあるのか小さく頷いた。

「傘ああ、そういえば言われたな。だが、帰りに差せる状況になるかといえば、そうとも思えなくてな」
「全くお前は
「そう長く降るものでもないだろうし、弱まるまで待てばいいさ」

他人の心配など露知らず、ジークフリートはのんびりと空を見上げる。
思わず溜め息の一つも漏れるというもの。
隣に腰を下ろし、ベンチに置かれた荷物を見た。

「今日もまた大漁だな」
「まあ、あれやこれやと一緒に入れてくれたぞ」

団長がジークフリートに買い出しを依頼するのには理由があった。
あいつが行くと何かしら店主におまけしてもらえることが多い。
それに気付いてからというもの、団長は買い出しにジークフリートを指名することが多くなった、という話。
事実、今日も両手いっぱいになるほどの荷物になっていて、確かにこれでは傘など差せたものではない。
今の状況を見越した上で持たなかったというのなら、せめて誰かに声をかけていくべきだろうに。

「確かお前の好物もあったはずだ」

袋の中を覗きながら嬉しそうにそう言うものだから、出かかった文句も押し留められてしまう。



そうしてとりとめのない話をしているうちに、地面を打つ音が大人しくなってきた。
雲も先程より薄くなっている。

雨も大分弱くなった。今のうちに帰るぞ」
「そうするとしよう」
「半分渡せ。そのままでは傘を差せんだろう」

すまないな、と言いながら2つのうちやや中身の少ない紙袋を俺に預けた。
代わりに傘を渡そうとすると、ジークフリートがそれを制する。

「ああ、傘は1本でいいぞ」
は?」
「わざわざ両方とも使う必要はないだろう?」
気は確かか?」

俺が差してきた傘を開き、左手に持った。
我ながら間抜けな声が出たものだとは思うが、そんなことを気にしている場合ではない。
それはつまり、1本の傘に一緒に入っていくということ。

「心配するな、傘は俺が持つ」
「そういうことを言っているんじゃない!何のために2本持ってきたと

俺が声を荒げるも気にする様子は全くない。


「相合い傘、というやつだ」


ああもう、この男は!
言葉にならない感情が握り締めた拳に表れる。

「パーシヴァル、世話をかけるな」

そう目を合わせて微笑まれれば、怒る気も失せてしまう。
諦めて大きく息を吐き、ジークフリートの左側、奴が持つ傘の中に入った。

「あまり離れると濡れるぞ」

落ちてきた傘を伝った滴が肩に落ちる。
男二人で入るにはやや小さい傘の中、一歩内側に身を寄せた。
もう1本の預かった傘を俺の腕に引っかけてグランサイファーへの帰路に着いた。